福島県南相馬市から創造、世界屈指のロボット実証拠点が動き出す

 世界屈指のロボット実証拠点が動きだす。7月、経済産業省と福島県が南相馬市に整備する「福島ロボットテストフィールド」が、一部開所した。面積約50万平方メートルの広大な敷地内に、トンネルや橋梁、滑走路など多種多様な試験施設を集約。「ロボット新戦略」を推進する国のロボット政策にとって、最重要プロジェクトの一つだ。また、東日本大震災で傷を負った現地の産業界にとっては、復興の象徴として大きな意味を持つ。

 「世界に先駆けた未来社会の姿が、福島から生まれようとしている」―。安倍晋三首相は4月に開いた「福島イノベーション・コースト構想関係閣僚会議」で、南相馬市に設けるロボット新拠点への期待を述べた。同拠点の整備は、政府が2015年に策定したロボット新戦略で掲げる主要な取り組みの一つだ。7月に飛行ロボット(ドローン)用の通信塔がオープンし、企業などによる利用がいよいよ始まる。

 実証の第1弾が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」だ。NECやNTTデータ、日立製作所、NTTドコモ、楽天などが参加。完成した通信塔の機能などを用い、複数のドローンの運行を管理できるシステムを検証する。

 ドローンは運行管理の標準的な手法が確立されておらず、利用が増えた場合の衝突リスクが懸念されている。このため同プロジェクトは、複数のドローンが安全な飛行経路を設定しリスク回避する仕組みの開発を目指す。通信塔は気象観測装置などを備え、飛行経路変更や離着陸のタイミングを最適化できるという。

 ドローンなど物流、インフラ点検、災害対応で活躍するロボットは、人の生活圏や過酷な環境での利用が想定されるため、安全性や信頼性を確かめる実証が不可欠だ。ただ、実際の利用現場に近い環境で連続運転できる実証スペースは、そう多くない。「特にベンチャー企業などは実証の場の確保に苦労している」(経産省の担当者)という。福島ロボットテストフィールドは、こうしたニーズに応えるべく整備が進む。通信塔に続き試験用プラントが18年内に完成予定。

 以後、トンネルや橋梁、滑走路、屋内水槽試験棟なども利用可能になり、19年度末までに整備が完了する計画だ。

地域再生の象徴


 東日本大震災で打撃を受けた南相馬市にとっては、新拠点は地域再生の足がかりになる。福島県の関係者によると、同拠点の訪問を目的に17年度だけで延べ数千人規模のロボット研究者が現地に訪れたという。また開所に先立つ18年6月には、内閣府が災害対応ロボット研究事業「タフ・ロボティクス・チャレンジ」の評価会を同拠点内で開催。延べ1400人近くが参加した。同様のイベントを11月にも控え、「18年度は昨年度以上の来訪者数になる」と、この関係者は期待する。

 難点はアクセス面だろうか。自動車を使った場合、東京からの所要時間は約3時間半。鉄道は常磐線が完全復旧していないこともあり、制約がある。経産省の担当者も「アクセス面は仕方ない部分がある」と認める。

 一方で「米国国立標準技術研究所(NIST)やドイツのハノーバー国際見本市会場のように、アクセスが悪くても優れた人材や技術が集まる拠点はある」と、この担当者は続ける。

7月にドローン用通信塔がオープン。企業などによる利用が始まる

日刊工業新聞2018年8月17日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
08月19日
この記事のファシリテーター

広大な敷地と最先端の施設を売りに、次世代産業の集積地としてどこまで魅力を高められるか―。地元の自治体や産業界などからも大きな期待を集める中、新たなロボット拠点の挑戦が始まる。
(日刊工業新聞社・藤崎竜介)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。