意義が変わった
「出張の意義が変わった」―。三菱電機宣伝部海外コミュニケーショングループの播田浩一さんはタブレットを利用した仕事を振り返る。
播田さんは欧米地域での企業ブランドの構築や宣伝業務を担当。顧客とのやりとりは時差が生じてしまうため、重要な案件や内容はどうしても出張時にまとめて話す機会が多かった。
タブレットが配布されて以降、テレビ電話などでこまめに顧客と話す機会が増えた。そのため出張時の顧客との会話は「前向きな対話が増え、アイデアを生み出す場に変わった」(播田さん)という。
出張期間の短縮や業務の合理化にもつながっている。家電製品を製造する同社静岡製作所(静岡市駿河区)では新製品の設計を行う繁忙期に、他の生産拠点から従業員が出張し、支援する。
可能な限りタブレットによる遠隔操作や遠隔作業に置き換えることで、出張期間を2カ月から2週間に短縮した。さらに年に2回行う部門をまたぐ課長級会議などは対象者の約7割以上の出張を削減。社内会議はできる限りテレビ会議への移行を推奨する。役員などの会議でもペーパーレス化を図り、電子データしか受け付けない体制に移行している。
特に柵山正樹会長はトップダウンでIT化による働き方改革を進めており、自身のタブレットペンが壊れるまでタブレットを愛用しているという。
後藤啓介IT戦略室システム基盤部部長は「(ツールによって)実際の働き方を変えるためには、部門の一部ではなく全社で一気にタブレットなどツールを活用しなければいけない」と強調する。
全従業員を対象に
日本企業でも、アステラス製薬や野村証券などが一部の従業員に向けて数千台のタブレットを配布している。日本生命保険も19年度をめどに全5万人の営業職員向けに、AIやOCR(光学式文字読み取り装置)を搭載したタブレットを導入する。
その中で三菱電機のように全従業員を対象にツールを配布したケースは珍しく、働き方改革に向けたIT化の“本気度”が伝わる。林和史IT戦略室システム基盤部技術グループマネージャーは「ツールは各拠点ではなく本社が集中購買し、管理する体制を整えた」と話す。
RPAにより、業務の統合や削減も
今後はこうしたタブレットの利用以外にITツールなどソフトウエアを拡充する。社内で発生する業務的かつ専門的な質問に対して、AIを用いることで自動で最適に回答されるシステムを整備。どの従業員でも理解できるレベルまで簡素化するのが目標だ。
19年度から一部の部門で導入を始める。また、RPAを経理や営業など一部の部門に試験導入。RPAで業務を効率化しつつ、業務の統合や削減が可能かどうかなども見極める。
渡辺 光太
08月12日
三菱電機は端末などを配布することで、一人あたり月7 時間程度の業務効率化や紙印刷費用の20%削減、出張旅費の10%削減などを目指している。
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