電動化の潮流も…商用車はディーゼル磨きが必須

小排気量化で積載性向上

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いすゞ自動車が投入した大型トラック「ギガ」
 自動車産業ではとかく電気自動車(EV)などの電動化に目を奪われがち。トラックなどの商用車にも同様の潮流はある。だが、乗用車と異なり商用車は一度に多くの荷物を遠くまで運ぶことから積載量と航続距離が重要になる。年々高まる環境規制に素早く適切に対応する現実的な“処方箋”として、既存のディーゼルエンジンの進化が必須だ。

 日系商用車メーカー各社は2017年に、16年排出ガス規制に適応した大型トラックの新型車両を相次ぎ発売した。多くのメーカーで共通するのが新型ディーゼルエンジンのダウンサイズ(小型化)だ。日野自動車は排気量13リットルから同9リットルに小型化したほか、三菱ふそうトラック・バスも小型化したモデルを追加した。15年に大型トラックの新型車両を真っ先に発売したいすゞ自動車も、16年に小型化したエンジンを投入。UDトラックスも18年中に現在の排気量11リットルに加えて、同8リットルエンジン搭載の大型トラックを発売する。

 各社がエンジンの小型化に注力するのは、小排気量化による燃費効率の向上や、省スペース化で積載量が高められる点にある。いすゞは、大型トラックの新型「ギガ」の一部車種で15年度燃費基準プラス5%を達成した。日野自は大型トラックの新型「プロフィア」の機械式自動変速機(AMT)「プロシフト」搭載車で、15年度燃費基準プラス10%となりエンジン重量を従来比約300キログラムの軽量化を実現した。三菱ふそうも同様に、排気量7・7リットルのモデルで「全体を約500キログラムほど軽くできた」(石井源一郎パワートレーン開発統括部統括部長)と利点が出ている。

 ただ、エンジンの小排気量化は動力性能との両立が難しい。高出力と高トルクを出すために日野自と三菱ふそうが採用したのが、2段過給システムだ。

 日野自は新型エンジンで低速域から高速域まで高い過給圧を得るため、二つの過給システムを縦に配置。排気流量の制御装置として高圧と低圧段のタービンの間に電子制御するバイパスバルブを搭載した。電子制御で押しつけ圧力をコントロールすることで、バルブから漏れを完全封止し高過給圧につなげる。

 同時に高圧と低圧段の間に空冷インタークーラーを採用した。高圧段コンプレッサーの入り口温度を下げて過給効率を高める効果があり「2段過給の途中に空冷インタークーラーを付けたのは世界初」(堀内裕史エンジン設計部部長)という。

 三菱ふそうは排気量7・7リットルエンジンで、直列2段過給システムを採用する。他社に比べ排気量が小さく「大気圧から必要なブースト圧まで高めるためには2段階に分けて高圧にすることが必要だった」(石井統括部長)と利点を説く。

 一方、いすゞとUDトラックスは単段過給システムを採る。いすゞで開発部門を担当する一政(いちまさ)都志夫執行役員は「2ステージ(2段過給)はロスが大きく、やるべきではないと判断した」と説明する。UDトラックスは、燃焼室の形状の改良などで対応する。高木起浩バイス・プレジデントは「通常の円状のピストンだと、空気と燃料の最適な混合と燃焼が難しい。(親会社のボルボが持つ)ウェーブピストンという独自形状の採用で、出力や燃焼効率を高めた」と話す。

 商用車メーカー各社は、電動化・自動運転時代に備え多様な分野に研究開発費を配分する必要がある。そのため、エンジン開発は効率的な開発が一層求められている。課題解決へ各社が注目するのがモデルベース開発(MBD)だ。

 各社はエンジンをモデル化して、過給器や排ガス装置の仕様を変更すると、性能にどのような変化があるかなどをデジタル上で試験する。実機の試作回数を減らして開発を効率化する。いすゞの一政執行役員は「コンピューターの高性能化で、計算だけでおおよその設計を終えられる。試作を作りながら各開発段階にフィードバックして、必要な場合にデータ修正する」と話し、MBDが開発の効率化につながることを強調する。三菱ふそうの石井統括部長もMBDの採用で「いかに最後まで、試作のプロトタイプ部品やコンポーネントを作らずにデジタル開発で終えられるかに取り組んでいる」と現状を説明する。

 MBDの究極の理想は「試作をせずに、バーチャルビークルで試験を終える」(UDトラックスの高木バイス・プレジデント)ことにある。トラックは乗用車より細かく車種が分かれMBDが簡単には進まない。だが、日野自の堀内部長は「開発した結果を順次、モデルに置き換えてモデルの精度を上げて次の開発を効率化できる。シミュレーションも活用し開発工数の半減を目標にする」と意気込む。
 

(文・尾内淳憲)

日刊工業新聞2018年8月14日

COMMENT

商用車は「働く車」という特性上、電動化が進んでも、ディーゼルエンジンの重要性は低下しないとみられるが、エンジンに投じる経営資源は相対的に低くなる。各社は“賢い”エンジン開発手法の構築に迫られている。

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