物流ドライバー不足解消へ、カーエレ各社のクラウドサービスが激しい
カーエレクトロニクスメーカー各社が車載機器やIT技術を使った業務車両向けのクラウドサービスの提供を積極化している。物流業界を中心にドライバー不足が深刻化しており、ドライバーの負担軽減に役立つ同サービスへの需要が高まっているからだ。カーエレ各社は同サービスを新たな収益源と期待する。今後、競争が激しくなりそうだ。
カーエレ各社が提供するクラウドサービスは通信機付きドライブレコーダーと専用サーバーで構成する。車両に設置したドライブレコーダーやカーナビゲーションシステムが車の現在位置や走行軌跡のデータを取得しサーバーに集める。オフィスにいる運行管理者はサーバーにアクセスし、リアルタイムで車両情報を取得でき、車載モニターを通じドライバーに業務の指示を出せる。また急ハンドルや急加速といったドライバーの危険運転を検知することも可能だ。ユーザーは車載機器の導入費用とサービスの月額利用料が必要になる。
ドライバーが業務の進捗(しんちょく)状況や現在位置などを運行管理者へ報告する際、従来は携帯電話を使っていた。クラウドサービスにより運行管理者が直接、車両情報を把握でき、ドライバーが報告する手間が減る。
また複数拠点を回るケースでは、運行管理者が最適ルートを検索してドライバーに示せる。ドライバー自らがルートを探す必要がなくなる。経験の浅いドライバーが運転に集中でき、道に迷うリスクも減らせる。配送・巡回業務の確実性を高めるほか、事故の防止にもつながる。ドライバーは、荷物を運ぶ、人を送迎するといった作業に集中できる。
カーエレ各社によるこうしたサービスは2014年ごろ本格的に始まった。その後、米アマゾン・ドット・コムなどインターネット通信販売の利用者の急増を受けて、ドライバーの担い手不足がより深刻化した。ここにきて、課題解決につながるクラウドサービスへの期待が高まっていることから、各社サービス内容の拡充を活発化している。
クラリオンは5月にトラックやバスなど商用車向けの新サービス「SAFE―DR」を始めた。車載カメラがとらえた走行車両の周辺映像を、サーバーを介してリアルタイムに確認できる。事故防止対策やトラブル発生時の迅速対応につながる。自動駐車など運転支援システムで培った画像処理や情報通信技術を生かしたのが特徴だ。
パイオニアは福祉・医療機関向けの業務管理システムを手がけるブルーオーシャンシステム(静岡市葵区)と協業し、介護事業者向けにサービス「ビークルアシスト」の提供を始めた。介護事業者は専門のドライバーを置かず職員自らが車を運転して利用者を家まで送迎することが多い。そのため運転に不慣れな職員などへの支援の重要性が高まっている。これまでユーザーは物流業者が中心だったが、介護事業者の導入事例が増えてきた。介護事業者が使いやすい専用機能などを順次拡充していく。
業務車両向けのサービスはいすゞ自動車などの大手商用車メーカーやITベンダーなども提供し動きが活発だ。多様なプレーヤーの中で、カーエレ各社は自社で車載機器を手がけることを最大の強みに市場を開拓する考え。車の周辺映像を高画質で撮影・記録するドライブレコーダーや、車の現在位置を高精度に割り出して表示できるカーナビなど車載機器事業で培ったノウハウを生かし差別化する。
各社がクラウドサービスに注力する理由に、カーエレ業界をとりまく事業環境の大きな変化がある。中長期的に見ると、国内車販売は少子高齢化の影響で大きな台数成長が見込めない。従来型の車載機器がこれまで通り安定的に販売できる保証がない。一方で自動運転や電気自動車(EV)、コネクテッドカー(つながる車)など次世代車向けの技術を巡る競争も激しくなる。パイオニアの小谷進社長は「ハードだけなく、ハードを使ったサービスも手がけていくことが持続的な成長に欠かせない」と指摘する。
ただサービスの普及には課題がある。人手不足に悩む企業は、中小企業など経営資源が限られるところが少なくない。中小企業に導入しやすいサービスにすることが大事だ。実際、パイオニアはドライブレコーダーやカーナビだけではなくユーザーが保有するスマートフォンやタブレット端末を使ってサービスを利用できる専用アプリケーションの提供を始めた。
デンソーテンは中小企業向けのサービス「G500ライト」を設定した。運行管理の基本機能を搭載しながらもリーズナブルにサービスを利用できるようにしている。
危険運転を検知
カーエレ各社が提供するクラウドサービスは通信機付きドライブレコーダーと専用サーバーで構成する。車両に設置したドライブレコーダーやカーナビゲーションシステムが車の現在位置や走行軌跡のデータを取得しサーバーに集める。オフィスにいる運行管理者はサーバーにアクセスし、リアルタイムで車両情報を取得でき、車載モニターを通じドライバーに業務の指示を出せる。また急ハンドルや急加速といったドライバーの危険運転を検知することも可能だ。ユーザーは車載機器の導入費用とサービスの月額利用料が必要になる。
ドライバーが業務の進捗(しんちょく)状況や現在位置などを運行管理者へ報告する際、従来は携帯電話を使っていた。クラウドサービスにより運行管理者が直接、車両情報を把握でき、ドライバーが報告する手間が減る。
また複数拠点を回るケースでは、運行管理者が最適ルートを検索してドライバーに示せる。ドライバー自らがルートを探す必要がなくなる。経験の浅いドライバーが運転に集中でき、道に迷うリスクも減らせる。配送・巡回業務の確実性を高めるほか、事故の防止にもつながる。ドライバーは、荷物を運ぶ、人を送迎するといった作業に集中できる。
画像技術生きる
カーエレ各社によるこうしたサービスは2014年ごろ本格的に始まった。その後、米アマゾン・ドット・コムなどインターネット通信販売の利用者の急増を受けて、ドライバーの担い手不足がより深刻化した。ここにきて、課題解決につながるクラウドサービスへの期待が高まっていることから、各社サービス内容の拡充を活発化している。
クラリオンは5月にトラックやバスなど商用車向けの新サービス「SAFE―DR」を始めた。車載カメラがとらえた走行車両の周辺映像を、サーバーを介してリアルタイムに確認できる。事故防止対策やトラブル発生時の迅速対応につながる。自動駐車など運転支援システムで培った画像処理や情報通信技術を生かしたのが特徴だ。
パイオニアは福祉・医療機関向けの業務管理システムを手がけるブルーオーシャンシステム(静岡市葵区)と協業し、介護事業者向けにサービス「ビークルアシスト」の提供を始めた。介護事業者は専門のドライバーを置かず職員自らが車を運転して利用者を家まで送迎することが多い。そのため運転に不慣れな職員などへの支援の重要性が高まっている。これまでユーザーは物流業者が中心だったが、介護事業者の導入事例が増えてきた。介護事業者が使いやすい専用機能などを順次拡充していく。
業務車両向けのサービスはいすゞ自動車などの大手商用車メーカーやITベンダーなども提供し動きが活発だ。多様なプレーヤーの中で、カーエレ各社は自社で車載機器を手がけることを最大の強みに市場を開拓する考え。車の周辺映像を高画質で撮影・記録するドライブレコーダーや、車の現在位置を高精度に割り出して表示できるカーナビなど車載機器事業で培ったノウハウを生かし差別化する。
中小にやさしく
各社がクラウドサービスに注力する理由に、カーエレ業界をとりまく事業環境の大きな変化がある。中長期的に見ると、国内車販売は少子高齢化の影響で大きな台数成長が見込めない。従来型の車載機器がこれまで通り安定的に販売できる保証がない。一方で自動運転や電気自動車(EV)、コネクテッドカー(つながる車)など次世代車向けの技術を巡る競争も激しくなる。パイオニアの小谷進社長は「ハードだけなく、ハードを使ったサービスも手がけていくことが持続的な成長に欠かせない」と指摘する。
ただサービスの普及には課題がある。人手不足に悩む企業は、中小企業など経営資源が限られるところが少なくない。中小企業に導入しやすいサービスにすることが大事だ。実際、パイオニアはドライブレコーダーやカーナビだけではなくユーザーが保有するスマートフォンやタブレット端末を使ってサービスを利用できる専用アプリケーションの提供を始めた。
デンソーテンは中小企業向けのサービス「G500ライト」を設定した。運行管理の基本機能を搭載しながらもリーズナブルにサービスを利用できるようにしている。
日刊工業新聞2018年5月1日