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スズキ・マツダ・ヤマハ発の不適切検査、それぞれの言い分

スズキ・マツダ・ヤマハ発の不適切検査、それぞれの言い分

謝罪するマツダの菖蒲田清孝取締役専務執行役員(右)と向井武司常務執行役員

 国内自動車産業への信頼が揺らいでいる。スズキとマツダ、2輪車大手のヤマハ発動機が排ガスや燃費を測定する完成検査で不正があったとそれぞれ公表した。抜き取り検査時に測定に失敗した結果を有効とした事案が複数判明。排ガスや燃費検査は日産自動車とSUBARU(スバル)でも問題が起きた。2018年上期の新車販売は2年ぶりに減少しており、各社が誠実な対応を見せなければ国内市場へのダメージ拡大は避けられない。

 3社の不正は日産とスバルによる排ガスと燃費検査でのデータ書き換えが発覚したことを受けて、国土交通省が自動車メーカーなどに同様の不正がないか確認するよう指示したことで分かった。3社とも排ガスや燃費検査時に車速が規定の範囲から逸脱し、その逸脱時間が許容範囲を超えたため、本来無効とすべき結果を有効なものとして処理していた。

 スズキは12年6月―18年7月間の抜き取り検査で1万2819台中6401台(49・9%)、マツダは14年11月―18年7月間で1875台中72台(3・8%)、ヤマハ発は16年1月―18年7月間で335台中7台(2・1%)で不正が見つかった。

 石井啓一国交相は今回の不正について「自動車ユーザーなどに車両の性能や自動車メーカーの品質管理体制に対する不安を与えかねない事態でもあり、極めて遺憾」と指摘。「対応が必要となる場合には、厳正に対処する」と話す。

 スズキが不適切な処理をした車種は生産終了車を含めて30車種に及ぶ。9日に記者会見したスズキの鈴木俊宏社長は「多大なご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げる」と頭を下げた。同時に「これだけの台数を誤って処理していた事実は大きな問題。厳粛に重く受け止めている」と苦しげな表情を浮かべた。

 また鈴木修会長は浜松市内で記者団に「2年前(の燃費不正)に引き続き、2度ご迷惑をかけてしまい申し訳なく思っている」と謝罪した。マツダの菖蒲田(しょうぶだ)清孝取締役専務執行役員とヤマハ発の渡部克明副社長も会見を開き陳謝した。

 今回の不正の背景には、完成検査体制の不備と法令順守意識の希薄さがある。スズキの鈴木社長は「(検査の測定時間が)短時間のオーバーならいいなどと、検査員の教育が不十分だった。検査担当の管理職が配置されずチェック体制の不備があったことが原因」との認識を示した。

 マツダの菖蒲田取締役専務執行役員は「エラーが生じた場合に、自動的にシステムで無効にしていなかった。検査員に判定を委ねる体制にしていた」と管理体制が甘かったと吐露する。ヤマハ発も測定結果の有効性を検証する仕組みが不十分だったことを挙げる。

 ただ各社とも残されたデータで再判定したところ、諸元値(カタログ値)を満たしていることを確認した。排ガスや燃費への影響はないとして、リコール(無料の回収・修理)は実施しない。

 スズキは今回の不正を受けて7日付で各工場に担当管理職を配置したほか、月内に測定値に書き換えができない装置に改修する。マツダは19年6月をめどに測定結果を自動的に無効にする機能を検査機器に追加する。それまでは検査データを複数の検査員でチェックする体制を整える。ヤマハ発も同様の措置を講じる方針だ。
会見するスズキの鈴木俊宏社長

日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
スズキの鈴木社長は「経営者として深く反省し、再発防止を先頭に立って進める」とする。品質への不信はブランド力の毀損(きそん)に直結する重大な問題だ。信頼回復を果たすためにも、各社には不正防止策の完遂と検査員の法令順守に対する徹底的な教育が求められる。 (日刊工業新聞・尾内淳憲)

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