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東京五輪・パラリンピック開催へ、影で活躍するアスベスト処理業者

関連施設などの解体現場から回収
東京五輪・パラリンピック開催へ、影で活躍するアスベスト処理業者

17年6月に取り扱いの厳しい飛散性アスベストを都内で初めて受け入れた(アスベストの中間処理施設)

 都内を中心に中小の建設解体現場から回収した非飛散性・飛散性アスベストを24時間体制で引き受けるメジャーヴィーナス・ジャパン(MVJ、東京都千代田区、金子文雄社長、03・3526・3381)が、受け入れ能力を強化する。東京五輪・パラリンピック関連施設などの解体現場から大量に回収したアスベストの処理が急務となっている。加えて同社が顧客獲得のため引き取り料金を引き下げたこともあり、許容量を上回る量が一度に持ち込まれるケースがあるため、設備増強する。当面、アスベスト全体で年間引き取り量2000立方メートルを目指す。

 MVJは、東京都江東区の産業廃棄物処理の専用工場「東京エコファクトリー」に、非飛散性と飛散性の保管コンテナを各1個(保管量は1個30立方メートル)設置している。東京都に届け出た上で、持ち込みが急増する非飛散性アスベストの保管コンテナの設置個数を1個追加し、2個にする。今回の追加設置で、アスベスト全体の保管能力は50%増の90立方メートルになる。

 東京エコファクトリーは、工場から発生するスクラップ類や廃棄物をワンストップで受け入れ、再資源化・処理する施設。首都高速湾岸線の新木場出口に近く利便性の高い立地を生かし、アスベストの中間処理施設も操業する。2017年6月には取り扱いの厳しい飛散性アスベストを都内で初めて受け入れた。

 MVJは17年度(17年6月―18年5月)に中規模ビル約50棟分に相当する1500立方メートルの受け入れを目指していたが、営業体制の遅れなどから目標が未達となった。このため、海上輸送から専用トラックによる陸送に変更。契約書類を簡素化するなどコストを低減し、5月から引き取り料金を平均20%引き下げたのを機に、目標を上回るペースで引き合いが急増した。

 現在、中小規模工場や集合住宅に加え、東京五輪・パラリンピック関連施設、大型再開発事業などの解体工事から回収したアスベストが持ち込まれている。老朽化した多数の公営団地でもアスベストが使用されており、建て替え工事により大量のアスベストが回収される見通しだ。

 一般的な大規模な解体現場では、大量に回収したアスベストは都外の業者に一括で委託処理するが、少量や突発的に発生したアスベストの処理は効率が悪くコスト高で、一部は不法投棄されるケースもあるという。

 東京エコファクトリーに持ち込まれたアスベストは専用コンテナで近畿地区に運び、埋め立て処分や溶融による無害化処理で実績のある大栄環境ホールディングス(HD、神戸市東灘区)の関連施設で最終処分する。
(文・山下哲二)
日刊工業新聞2018年8月9日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
MVJは15年12月に設立。鉄スクラップ大手のリバーホールディングス(旧スズトクホールディングス、東京都千代田区)と廃棄物処理大手の大栄環境HDの折半による共同出資会社。東京エコファクトリーは16年11月に営業を開始した。 (日刊工業新聞社・山下哲二)

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