台湾で新工場稼働も、国内生産磨くオークマの狙い
「メーンの日本で大投資を続ける」(花木義麿社長)
オークマが国内外で生産能力の増強に動いている。国内では本社工場(愛知県大口町)の部品加工棟が2017年に稼働し、19―20年には本社・可児(岐阜県可児市)2工場の新棟稼働を控える。海外では長年の懸案だった台湾の新工場が7月に稼働した。生産面への積極投資で、世界的に旺盛な工作機械需要を取り込む。
台北市中心部から車で南西に45分間ほど移動すると、山間部に新工場(新北市)が姿を現した。3日に開いた開所式で、花木義麿社長は「多くの時間を要したが、ようやく実現できた」と喜んだ。
オークマは97年に現地の重電大手との合弁会社「大同大隈」を設立し、台湾工場を運営してきた。機能を絞り、カスタマイズが不要なため低価格な旋盤と立型マシニングセンター(MC)を生産する。17年12月期の売上高は120億円で、米国や欧州、アジアにまんべんなく輸出する。
旧工場は建屋が狭く、月産200台が限界だった。別の土地に約23億円を投じて建設した新工場は2階建てで、延べ床面積は1万4300平方メートルと旧工場の8割増。月産能力は300台に高まる。
新工場の構想は07年末には立ち上がった。だが、山間部の立地のため、下水処理など環境面の法規制対応に手間取り、稼働まで時間を要した。
新工場は世界的な工作機械需要の取り込みに貢献しそうだ。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた1―6月の工作機械受注高は、前年同期比26・1%増の9640億円となった。欧米、アジア、日本とどの地域も好調が続く。18年の受注予想1兆7000億円の突破が見えており、2年連続の過去最高更新となる。
オークマは花木社長が定めたスローガン「日本で作って世界で勝つ!」の言葉通り、本社・可児の国内2工場を生産の中心に据えてきた。可児工場で19年5月に部品加工新棟、本社工場で20年に組み立て新棟を稼働させるが、現在の需要取り込みには間に合わない。
オークマは台湾のほか、中国・北京にも工場を持つ。ただ、合弁相手の現地企業との契約上、中国国内でしか販売できない。世界各国に輸出できる台湾の新工場稼働は大きい。
台湾工場の生産機種について、花木社長は「世界中で人気があり、もっと生産台数を増やしたい」と期待を込める。社長自ら“海外の優等生”と表現する台湾工場の活躍は広がりそうだ。
台湾の新工場が7月に稼働し、数年後には第2工場を建設するなど、海外生産を拡大するオークマ。だが、花木義麿社長は台湾新工場の開所式で「メーンの日本で大投資を続ける」と国内中心の姿勢を強調した。
本社工場(愛知県大口町)では、近年進めてきた再編が佳境に入っている。2013年に第1弾として、中・大型旋盤と複合加工機の生産棟「DS1」が稼働。17年には中・小型旋盤と研削盤の部品加工棟「DS2」が稼働した。
DS2では、全ての部品と工具にIDを装着して所在管理するなどIoT(モノのインターネット)を駆使しており、他工場にも展開する。
DS2は部品加工棟を先行稼働させた形で、組立工場棟を20年に稼働させる計画を7月に公表した。現状、DS2で加工した部品は、少し離れた建屋で組み立てている。部品加工から組み立てまで一貫することで、生産性向上を図る。
さらに、その建屋をリニューアルする新工場棟「DS3」の建設構想もあるが、はっきりした計画はない状態だ。
立型・横型マシニングセンター(MC)と門型MCを生産する可児工場(岐阜県可児市)でも、再編が続く。立型・横型MCの部品加工棟「K6」を19年5月に稼働させると7月に公表。可児・本社両工場に分散する同製品の部品加工を集約することで、MCの生産能力を3割高める。
板金加工棟の新設構想もある。工作機械の安全性向上のため、門型MCなどでカバーの設置面積が増える傾向にある。専用棟でカバー用板金の生産能力を高める。
両工場の再編が完了すれば、バックアップの役割の江南工場(愛知県江南市)の改革が視野に入る。江南工場では、両工場で生産しきれない製品を受け入れている。その必要がなくなれば、特定の生産機種を持つことが可能になる。
花木社長は「高付加価値の工作機械を変種変量生産するには日本が良い」と国内生産にこだわってきた。国内工場の再編は、自ら定めたスローガン「日本で作って世界で勝つ!」の総仕上げだ。
(文=戸村智幸)
台北市中心部から車で南西に45分間ほど移動すると、山間部に新工場(新北市)が姿を現した。3日に開いた開所式で、花木義麿社長は「多くの時間を要したが、ようやく実現できた」と喜んだ。
オークマは97年に現地の重電大手との合弁会社「大同大隈」を設立し、台湾工場を運営してきた。機能を絞り、カスタマイズが不要なため低価格な旋盤と立型マシニングセンター(MC)を生産する。17年12月期の売上高は120億円で、米国や欧州、アジアにまんべんなく輸出する。
旧工場は建屋が狭く、月産200台が限界だった。別の土地に約23億円を投じて建設した新工場は2階建てで、延べ床面積は1万4300平方メートルと旧工場の8割増。月産能力は300台に高まる。
新工場の構想は07年末には立ち上がった。だが、山間部の立地のため、下水処理など環境面の法規制対応に手間取り、稼働まで時間を要した。
新工場は世界的な工作機械需要の取り込みに貢献しそうだ。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた1―6月の工作機械受注高は、前年同期比26・1%増の9640億円となった。欧米、アジア、日本とどの地域も好調が続く。18年の受注予想1兆7000億円の突破が見えており、2年連続の過去最高更新となる。
オークマは花木社長が定めたスローガン「日本で作って世界で勝つ!」の言葉通り、本社・可児の国内2工場を生産の中心に据えてきた。可児工場で19年5月に部品加工新棟、本社工場で20年に組み立て新棟を稼働させるが、現在の需要取り込みには間に合わない。
オークマは台湾のほか、中国・北京にも工場を持つ。ただ、合弁相手の現地企業との契約上、中国国内でしか販売できない。世界各国に輸出できる台湾の新工場稼働は大きい。
台湾工場の生産機種について、花木社長は「世界中で人気があり、もっと生産台数を増やしたい」と期待を込める。社長自ら“海外の優等生”と表現する台湾工場の活躍は広がりそうだ。
本社・可児工場の再編佳境
台湾の新工場が7月に稼働し、数年後には第2工場を建設するなど、海外生産を拡大するオークマ。だが、花木義麿社長は台湾新工場の開所式で「メーンの日本で大投資を続ける」と国内中心の姿勢を強調した。
本社工場(愛知県大口町)では、近年進めてきた再編が佳境に入っている。2013年に第1弾として、中・大型旋盤と複合加工機の生産棟「DS1」が稼働。17年には中・小型旋盤と研削盤の部品加工棟「DS2」が稼働した。
DS2では、全ての部品と工具にIDを装着して所在管理するなどIoT(モノのインターネット)を駆使しており、他工場にも展開する。
DS2は部品加工棟を先行稼働させた形で、組立工場棟を20年に稼働させる計画を7月に公表した。現状、DS2で加工した部品は、少し離れた建屋で組み立てている。部品加工から組み立てまで一貫することで、生産性向上を図る。
さらに、その建屋をリニューアルする新工場棟「DS3」の建設構想もあるが、はっきりした計画はない状態だ。
立型・横型マシニングセンター(MC)と門型MCを生産する可児工場(岐阜県可児市)でも、再編が続く。立型・横型MCの部品加工棟「K6」を19年5月に稼働させると7月に公表。可児・本社両工場に分散する同製品の部品加工を集約することで、MCの生産能力を3割高める。
板金加工棟の新設構想もある。工作機械の安全性向上のため、門型MCなどでカバーの設置面積が増える傾向にある。専用棟でカバー用板金の生産能力を高める。
両工場の再編が完了すれば、バックアップの役割の江南工場(愛知県江南市)の改革が視野に入る。江南工場では、両工場で生産しきれない製品を受け入れている。その必要がなくなれば、特定の生産機種を持つことが可能になる。
花木社長は「高付加価値の工作機械を変種変量生産するには日本が良い」と国内生産にこだわってきた。国内工場の再編は、自ら定めたスローガン「日本で作って世界で勝つ!」の総仕上げだ。
(文=戸村智幸)
日刊工業新聞2018年8月11日