中国に肉薄も…伸長著しいインド・フィンテック市場の潜在力

2017年のフィンテック投資は前年比約5倍の24億ドルに

 伸長著しいインドのフィンテック(金融とITの融合)市場―。米アクセンチュアの調査によると、2017年のインドのフィンテック投資は前年比約5倍の24億ドル(約2670億円)に達した。市場規模は米国が断トツだが、単年ベースでは踊り場にある中国にインドが肉薄する。昨今、新興国では銀行口座を持たない人が手軽で安価なフィンテックサービスを使うケースが多く、インドもその潜在力が大きい。

 「インドのIT市場は1500億ドルで、その半分は金融向けだ。市場のけん引役がフィンテックであり、新技術導入が相次ぐ。ローンなどマイクロファイナンス(小口金融)も活況だ」。インドのネリトー・システムズ(ナビムンバイ市)のプニット・ジェイン最高経営責任者(CEO)は市場動向についてこう語る。ネリトーはインド3大財閥の一つであるタタグループ傘下の中堅IT企業。主力製品は中小の銀行向けコアバンキングソリューション「フィンクラフト」。インド国内ではレンディング(融資)向けソリューションも売れ筋という。

 フィンテックサービスは銀行口座を持てない人にとって格好の決済手段となっている。全世界では銀行口座を持てない人が17億人に上り、安価で安全な決済手段を求めている。世界銀行によるとインドで銀行口座を持たない人は1億9100万人で、これがフィンテック市場の伸びしろとなっている。

 もとより、インドの大手銀行は不良債権処置問題で個人向けは貸し渋りの状態。「金融システムが行き届いていない過疎地域などでもフィンテックによるマイクロバンキングが広がっている」(ジェインCEO)という。日本でいえば消費者ローンのような形態だ。

 社会的な背景も大きい。インドは汚職対策で16年に中央銀行が高額紙幣(500ルピーと1000ルピー)を廃棄し、さらにインド版マイナンバー「Adhaar」の普及が相まって、国民の多くがモバイル決済やキャッシュレスサービスに移行。これが引き金となってインド全体のフィンテック需要を押し上げ、「インドのモバイル決済大手のPaytmはユーザー数が一気に2億人を突破した」(アクセンチュア)。Paytmは17年にベンチャーキャピタルから14億ドルという巨額な資金調達を果たした。

 インドではフィンテックのスタートアップ企業が「ユニコーン企業」へと躍進する土壌が醸成されつつあり、インドネシアやベトナムなど南アジア諸国へ打って出ようとするIT企業も出てきた。

 ネリトーも3月にDTSと資本提携し、新たな展開に乗り出している。ジェインCEOは「DTSの力を借りて、米国や東南アジアへソリューションを広げたい」と期待を込める。同社の売上高の海外比率は10%。2―3年で30%程度に引き上げる計画。
(文=斉藤実)

日刊工業新聞2018年8月9日

日刊工業新聞 記者

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08月09日
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提携先のDTSは海外事業の新機軸としてネリトーを位置付け、同社の発行済み株式の44・5%を取得した。ビジネスでの相乗効果を高めるため、ネリトーへの出資比率をさらに引き上げる考えだ。
(日刊工業新聞社・斉藤実)

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