国立大教員の年功序列にメス、業績給を拡大

文部科学省が2019年度に人事給与改革

 文部科学省は2019年度から、国立大学教員の業績給を拡大する人事給与改革を実施する。定年までの在職期間が長いほど給与に有利な現行制度を見直し、各大学は独自の教員評価制度を構築する。文科省はこの取り組みを運営費交付金の配分に連動させる。能力主義による研究・教育力の向上は国立大学法人化後に残る最後の課題だった。この解決に向けて、86国立大の教員人件費計約8000億円のあり方にメスを入れる。

 改革のポイントの一つは「業績給の強化」。業績評価自体は全国立大で導入済みだが、実際は教育、研究などエフォート(勤務時間配分)を確認するだけの大学が多い。論文引用度などで業績評価する積極的な大学もあるが少数派だ。

 また評価指標は単科大学と総合大学、文系と理系などで異なる。例えば文学部は10年に1度の大著の書籍が高評価で、工学部は論文を重視する。そのため新たな評価制度の指標や給与への反映の仕組みは各大学がそれぞれに設計する。

 二つ目のポイントは「在職期間の長期化が有利とならない処遇」。「55歳での昇給停止」「独自の早期退職制」などの新設計や、「任期制の拡大」「基本給の大幅圧縮」を各大学が制度に盛り込む。

 文科省はこれらの取り組みを運営費交付金の配分で後押しする。大学個別の目標・評価に対して配分する「機能強化促進分」400億円の中に人事給与改革での評価分を新設。改革が遅い大学は配分減とする。また「学長裁量経費」400億円でも高評価の大学は交付金を上積みする。

 政府は「未来投資戦略2018」などで、業績評価強化と人材流動化を目的に、国立大教員の“年俸制完全導入”を掲げる。文科省はこれまで退職金を前倒しして上乗せする手法で教員の年俸制シフトを進めてきた。すでに若手と定年近いシニアを中心に、国立大教員約6万5000人の約2割が年俸制だ。

 しかし、さらなる拡大には退職金前倒しの財源確保が難しい。そのため文科省は、業績給強化による実質的な年俸制拡大へと手法を転換する。
                   

日刊工業新聞2018年7月30日

山本 佳世子

山本 佳世子
07月31日
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「退職金をゼロにすると国はいっている」「いや”退職金付き年俸制”という新しい仕組みを導入するらしい」。本件については様々な噂が飛び交って、国立大の執行部やその周辺さえ、右往左往する様子を目にしていた。「本当のところは何か」。それを本記事で示した。年俸制は言葉が一人歩きしている感があり、改革の本筋は「業績給与の大幅な引き上げ」だと正しく理解することが、まず必要だ。私が注目するのは、大学の特色や分野の特性に合わせて、評価指標や反映の仕組みを「各大学で設計する」という点だ。大学改革の主体はこれまで大学という組織で、「上(大学執行部や文科省)に、トップダウンで押しつけられた」との印象を持つ現場教員が多かったと思う。しかし本案件は、教員個人にもっとも深く関わるテーマだ。社会(世界の学術を含む)への貢献が見えにくい人文・社会科学系をはじめ、個々の教員がどう反応し、ボトムアップで変えようと動くのか問われてくる。そして教員個々が集団として優れた大学はどこで、そうでない大学がどこか、一般社会にもはっきり見えてくるのではないだろうか。

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