“脱部品屋”へ、センサーメーカーに変身したTDKの強気

強みは画像センサー以外ほぼ網羅

 TDKが将来の柱として成長させようとしているのがセンサー事業だ。既存技術を応用したトンネル磁気抵抗効果(TMR)センサーの開発を皮切りに、2017年度までに総額2000億円を投じて、米インベンセンスなどセンサー関連企業5社を買収。TDKはセンサー業界でも有力メーカーへと変身を遂げた。センサーの需要が高まる中、さらなる事業拡大に向けて電子部品とは異なる新たなビジネススタイルを模索していく。

ラインアップが豊富


 IoT(モノのインターネット)の普及で、社会にセンサーが点在する世界が迫る中、センサー市場は多くの企業が参入するレッドオーシャン(競争の激しい市場)。

 業界では、撮像素子を使った画像センサーでトップシェアを誇るソニーのように特定分野に特化した企業が多い。だが厳しい市場で生き残るために、TDKが選んだのはセンシングの豊富さだった。

 磁気や加速度、超音波、指紋認証などセンサーを幅広く保有。その種類は世界トップクラスで、「画像センサー以外のほぼ全てを網羅した」(石黒成直TDK社長)という。

 豊富な製品ラインアップを生かす方法が複数のセンサーを融合させる「センサーフュージョン」だ。例えば、モノの回転を検知するジャイロセンサーと、スピードを検知する加速度センサー、気圧センサーを融合した「7軸運動圧力センサー」を開発。飛行ロボット(ドローン)の精密なホバリングを可能にし、階段1段分の操作を実現する。

新材料用いる


 さらにTDKが持つ材料技術で差別化を図ることも可能だ。センサー市場は独ボッシュや中国メーカーなど競合他社も攻勢を強めているが、「センサーの素材・材料技術を刷新することで、性能やコストを覆す」(松岡大執行役員技術・知財本部長)ことができる。すでにマイクロフォンなどは新材料を用いた高性能センサーの開発に着手する。

 ただセンサー事業の業績貢献はまだまだ低い。17年度の事業売上高は776億円、インベンセンスなどの買収関連費用を引きずり、営業損益は194億円の赤字だ。

 だが、石黒社長は「20年度に同事業で売上高2000億円、営業利益率1ケタ%後半に持っていく」と強気の成長を計画。他のセグメントの年平均成長率が1ケタ%の中、センサーは35%の成長を目指す。それまで好調だった高周波部品事業の売却資金を使ってセンサーを獲得したため、後戻りができない状況だ。

 課題はシステムとしての開発。これまで電子部品事業などは顧客の要求や仕様に合わせて製品を提供することが多かった。だが、センサーはシステムとして提案するため、生活やプロダクト、サービスなどがどのように変わるかを考えなければいけない。“脱部品屋”の発想で開発に取り組まなければならない。
センサーソリューション

日刊工業新聞2018年7月27日

渡辺 光太

渡辺 光太
07月29日
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買収した企業はTDKに無い技術を持つ企業が多い。具体的にはインベンセンスの微小電気機械システム(MEMS)や、ICセンスのASIC(特定用途向けIC)の開発など。役者やパーツはそろった今、求められるのは結果だけだ。

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