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村田製作所とTDK、スマホ用電池で激突

村田製作所とTDK、スマホ用電池で激突

TDKの石黒成直社長(左)と村田の村田恒夫会長兼社長

村田製作所とTDKが、スマートフォン向けリチウムイオン二次電池市場でしのぎを削っている。村田製作所は2―3年以内に500億円規模の設備投資に踏み切る。一方、先行するTDKは生産能力を年15%ずつ増強するほか、次世代のL字型電池を開発する。これまで電子部品事業で競い合ってきた両社だが、スマホの中核部品である電池という戦場でも激突する。

 村田製作所がソニーのリチウムイオン二次電池事業を買収して3カ月。30日に開いた投資家向け説明会では「今後は(北米の顧客などが)要求する数量に応えられるかどうかだ」(中島規巨取締役専務執行役員)と、品質面の課題をクリアしたことを明かした。

 現在の世界シェアは5位で、2017年度の営業損益は50億円の赤字を見込む。楽観視できない業況だが、村田恒夫会長兼社長は「売り上げは年10%ずつ成長する見通しだ」と話し、スマホ向けを中心に拡大して2―3年後をめどに黒字化する。

 ただ懸念材料もある。電池事業はソニー時代に「米アップル向けのビジネスを一度失っている」(佐藤昌司モルガン・スタンレーMUFG証券アナリスト)。他を圧倒するような強みがなければ、アップルなど高級機種(ハイエンド)市場に再び食い込むのは難しい。このため中華系スマホメーカーへの採用の方が早く進むとの見方もある。

 対するTDKは、05年に電池事業を営む香港アンプレックステクノロジー(ATL)を買収。16年度の売上高は買収当時の約40億円から約2500億円に拡大し、世界シェア4位まで上り詰めた。

 今のTDKにとって電池は“頼みの綱”だ。16年以降、一部の電子部品事業を売却し収益力が停滞しているほか、次の柱と位置付けて買収したセンサー事業も収益への貢献に時間を要している。このため電池の営業利益が全体の8割以上を占める。

 センサー事業の収益化は20年度を見込んでおり、この3年間は電池でしのぐしかない。電池の売上高の7割はスマホ向けが占めるだけに、スマホ市場を攻略する村田製作所が煙たい存在になるのは間違いない。

 すでに村田製作所の現場では忙しい状況が続く。電池自体はソニー時代から変化はないが「ソニーと競合関係にあり、取引できなかった顧客からの引き合いが増えている」(関係者)という。

 また業界では、信頼性の高さから受注が増えると予想する声もある。村田会長は「製品ラインアップを絞り込んだ上で(生産量を)ボリュームアップしたい」と力を込める。

 TDKも負けてはいない。石黒成直社長は「17年度の前期は弱気だったが、根強い需要に応えていく」と積極的な投資を表明する。16年に韓国サムスン電子製スマホの発火問題が起きて以降、慎重だったが、18年度以降は香港子会社のATLを中心に生産能力を年15%ずつ増強する。

 北米や中国、韓国など主要なスマホメーカーに供給するTDKは、顧客基盤の点で一歩リードする。現在の取引を維持・拡大することが戦略の柱であり、次世代型電池とされるL字型の生産体制を早期に確立し突き放す構えだ。

 スマホ市場で争う両社だが、開発のロードマップは異なる。TDKは強みである大容量・小型化の技術を訴求し、引き続き民生分野を攻める。18年4月には基板実装タイプのセラミック全固体電池を量産し、ウエアラブル端末やIoT機器などの市場も狙う。

 ただ、需要が膨らむ電気自動車(EV)分野については「4輪車はやらない」(石黒社長)と断言する。一方、村田製作所は将来、車載向け電池事業に参入することも視野に入れる。パナソニックやサムスン電子など猛者がそろう戦場に挑む考えだ。
                   

(文=渡辺光太、京都・園尾雅之)
日刊工業新聞2017年12月1日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
互いに目指すゴールに向けて、スマホ市場で弾みを付けられるか。両社の戦いの行方が注目される。 (日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

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