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ダイハツさん、「かわいすぎて乗れない軽」をどう変えたんですか?

「ミラトコット」の開発責任者に聞く、女性の価値観の変化に対応
【車両開発本部製品企画部チーフエンジニア 中島雅之氏】

 女性社員のチームが企画初期の基本概念やデザインづくりに関わったのは今回が初めて。チームが考えた新型車のコンセプトは「エフォートレス」。力の抜けた、肩肘を張らないといった意味だ。“かわいい車”を押しつけずシンプル、ありのままという魅力を感じられる車を目指した。

 当初、軽セダン「ミラココア」(2018年2月に生産終了)の後継車を企画していたが、「かわいすぎて乗れない」というユーザーの声があった。自分の男性視点の企画では女性が求める車は理解できないと思い、西山枝理商品企画室副主任らに声をかけて20―30代の女性7人からなるチームを作った。

 調べると“かわいいモノ好き”とされてきた女性の価値観は変化し、好みの中心はむしろ「自然体」「ありのまま」といったものに移りつつあるとの結論にたどり着いた。

 エフォートレスは見た目以外に、誰でも安心して運転できる、買い求めやすい価格、という意味も含む。運転しやすいようフロントピラーの角度を立てて視界を広げ、ドアミラーをドアに取り付けて死角を減らした。窓の下端の「ベルトライン」を後方まで水平に伸ばし、座席から振り返ったときの視界も広くなった。

 電動パワーステアリング(EPS)は制御を工夫し、ハンドル操作に必要な力を同じ軽セダンの「ミライース」と比べ低速時に30%、停止時に10%軽くした。また、誤発進抑制機能などを持つ「スマートアシストIII」は、当社最先端の衝突回避支援システムだ。

 安全機能を優先し、ほかの装備は使いやすさを重視しつつ過剰機能を省いた。消費税込み価格は107万円台から。エントリーカーとして購入しやすい価格に抑えた。

 かわいらしさを「盛りたい」というニーズにも応え、外装は3種類のアクセサリーパッケージを作った。交換を伴うアクセサリーは工場で装着し、販売店の手間や部品代を抑えて価格を4割程度下げた。フロントバンパーや屋根に貼るデザインフィルムは、キャンパス地の質感を持つ新開発品を用意した。

 販売店への事前説明では良い反応を得ており期待値は高い。ココアの後継車ではない新型として投入する。
<ミラトコット/X“SAIII”(2WD)>
全長×全幅×全高=3395×1475×1530mm
車両重量=720kg
乗車定員=4人
エンジン=水冷直列3気筒12バルブDOHC横置「KF型」
総排気量=658cc
最高出力=52馬力
変速機=無段変速機(CVT)
JC08モード燃費=1l当たり29.8km
価格=122万400円(消費税込み)
日刊工業新聞2018年6月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
平たんなボディーラインを基調とする、少し角張った車だ。女性チームメンバーの西山副主任が「“すっぴん”だけど眉毛は書いている」と表現するように、飾り気は少ないが、かわいらしさは感じられる。女性チームの感性が狙い通りに市場ニーズを捉えられれば、今後の企画・開発に一石を投じ、あり方を変えるかもしれない。 (日刊工業新聞大阪支社・錦織承平)

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