トヨタの“未来へのショーケース”は「MIRAI」か「C―HR」かそれとも…

課題を乗り越える体制じわり

 トヨタ自動車にとって2020年は将来に道筋をつける大きな節目が重なる。五輪とパラリンピックそれぞれの最高位スポンサーとなったトヨタの豊田章男社長は「未来へのショーケースとして、世界中の人々にモビリティーの可能性を伝えたい」と東京大会を見据える。20年は電気自動車(EV)や自動運転車など、育成を急ぐ先進技術の存在感を飛躍させる絶好の機会となる。

 「量産時期が1年くらい遅くなっている」。愛知県内の自動車関連会社幹部は、トヨタの燃料電池車(FCV)について声を潜める。トヨタは20年頃以降に年間3万台以上のFCVの販売を目指しているが、想定していたよりもピッチは遅れているようだ。

 14年12月に世界で初めて市販したFCV「MIRAI(ミライ)」は18年3月までに累計約6000台を販売した。20年頃に基幹部品のFCスタックと高圧水素タンクの本格的な量産設備を稼働すると5月に公表しており、現状比10倍となるFCVの年産能力3万台体制に向け、準備を整えている。

 「究極のエコカー」と位置付けるFCVが普及するには、水素ステーションの整備などインフラの課題もある。ただ、水素社会実現を目指す政府も20年の東京五輪・パラリンピックを大きな契機と捉えているため、追い風が吹く。

 20年には100台以上のトヨタの燃料電池(FC)バス「SORA(ソラ)」が、東京都を中心に走行する。FCV以外では、高速道路での自動運転技術を搭載したクルマを商品化する計画だ。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)のすべてを盛り込んだ次世代のEV「e―パレット」の一部機能搭載車も披露する。

 一方、海外に目を転じれば、中国で20年にトヨタブランドのEVを投入する。19年に現地で導入される新エネルギー車(NEV)規制に対応する形で、小型スポーツ多目的車(SUV)「C―HR/イゾア」をEV仕様に改良する。

 トヨタは中国を皮切りに、インドや日米欧で20年代前半に10車種以上のEVをグローバル販売する見込み。先鞭(せんべん)をつける中国のEVは急ごしらえではあるが、先行きを占う上でも重要度が高い。

 トヨタはマツダ、デンソーと17年に設立した新会社で軽自動車から小型トラックまでを対象にEVの基盤技術を開発するほか、20年代前半の実用化を目指して次世代技術の全固体電池を開発中。

 パナソニックとは車載用角形電池で協業の検討をはじめるなど、将来の品質向上やコスト削減をにらんだ戦略にも確実に手を打つ。EVについてトヨタ幹部は「専用プラットフォームでないと25年以降は戦えない」と言い切る。

日刊工業新聞2018年6月15日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
06月17日
この記事のファシリテーター

EVにしろ、FCVや自動運転にしろ課題は多いが、課題解消に向けた機運が醸成されつつある。
(日刊工業新聞名古屋支社・今村博之)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。