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麻酔科医が困る患者とは?

高血圧・糖尿病・喫煙はリスクが高くなる
 突然の事故やケガ、もしくは体調不良で調べてみたら、病気が見つかり手術が必要と言われたら。きっと気が動転して手術の説明も上の空、ましてや麻酔の説明なんてしてもらったかしら?

 もちろん手術・麻酔を受けないに越したことはありません。しかし、万が一そうなった時のために普段から心掛けて頂きたいことを麻酔科医の立場でお話しいたします。

 どのような患者さんを担当したときに我々麻酔科医が困ると思いますか。それは、持病をきちんと治療せず、糖尿病・高血圧などを放置している方、また喫煙している方の時です。今回は麻酔と、[高血圧・糖尿病・喫煙]との関係についてお話しします。

 多くの麻酔薬は、その作用で血圧を下げます。いつも血圧が高い状態でいる人は正常な人と比べ、その下がり幅が大きく、全身への血流が悪くなります。そのため、脳梗塞や心筋梗塞などの危険性が高くなります。

 また、手術が終了し、麻酔薬が切れてくると血圧が上昇します。高血圧の方は、動脈硬化を伴うことが多く、急激に血圧が上昇する可能性があります。そのため頭蓋内出血、心不全などのリスクが高くなります。

 糖尿病でも全身の動脈硬化が進んでいると考えられます。つまり、全身への血流が高血圧と同様に悪いと想像することができます。

 麻酔をかけて、血流が悪くなると心臓では心筋梗塞、脳では脳梗塞、腎臓では腎機能の低下の危険性が高くなります。手術などの侵襲を受けると血糖が高くなるため、血糖値がもともと高いと神経障害や目の障害、免疫力低下による感染の危険性も増し、手術の傷への感染の可能性も高くなります。

 たばこを吸っていると、痰(たん)が多く、術後肺炎になりやすいだけではありません。手術の傷への感染や死亡する率が非喫煙者より極めて高いことが知られています。4―6週間以上の禁煙期間をもうけると、肺機能、免疫機能と代謝の改善があり、術後の合併症、死亡率の低下につながることが分かっています。

 手術前は少なくとも1カ月前から禁煙を!。そんな前から手術と分かっている人は多くはいません。しかし、1日禁煙するだけでも変わるのです。「今すぐ禁煙」を始めましょう。

 持病を放置していることや喫煙していることで、合併症が起こり、追加の治療や手術が必要となり、入院が長引くかもしれません。持病を治し、たばこをやめ、毎日規則正しい生活をおくることが、いざという時の準備になります。手術・術後回復するため、まずできることから、始めていきましょう。
(文=角谷仁司・医療法人社団直和会 平成立石病院副院長)
日刊工業新聞2016年4月29日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自分はこれまで歯の治療以外、麻酔をかけられたことがない。いずれ全身麻酔をかける日も来るかもしれない。患者からみれば、医師の言動で「この先生大丈夫?」と思うこともある。何ごとも相互信頼。

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