競合激化のスポーツ用品、世界と勝負するアシックスの戦い方

広田康人社長インタビュー

 アシックスはスポーツシューズで成長し、年商4000億円を超えるスポーツ用品の国内最大手だ。2019年9月に創業70周年を迎えるが、今年3月、元三菱商事常務執行役員の広田康人氏が新社長に就任した。海外の有力メーカーなどとの競争が激化する中、付加価値ある商品提案で世界と勝負する同社の事業方針を聞いた。

 ―海外の売上高が全体の75%を占めます。
 
 「ランニングのメッカである米国をはじめ、欧州、日本を主要市場と位置付けている。近年は健康意識が高まる中国市場での売り上げが伸び、ランニングやスポーツジム向けシューズが好調だ。今後は電子商取引(EC)事業者と提携し、中国全域に販売網を拡充したい。各地域で競技用やスポーツファッション向けシューズなどを展開し収益を上げる」

 ―個別ニーズの対応も求められています。

 「一人ひとりの履き心地に合わせ、靴のインソールを変えるといったテーラーメードの提案は、今後需要が高まるだろう。直営店舗での3次元足形計測に加え、個人の運動量などを記録するアプリケーション(応用ソフト)も活用する。運動から得られるデータを統合し、より精度の高いアドバイスや、店舗での購買へつなげる」

 ―デジタル分野の強化も掲げます。

 「1月、米ボストンで子会社『アシックスデジタル』を設立した。運動アプリを使って、走行距離など得られたデータも解析する。現地は学術機関と連携したオープンイノベーションにも最適な土地だ。全世界にデジタル市場を広げ、個別提案を進めていきたい」

 ―重視している技術開発の方向性は。

 「当社の工学研究所では、人間工学や材料に関する研究などを行っている。スポーツを安全に楽しむことを大前提に運動データを蓄積し、気候や地形など各条件に適合した商品を生み出したい」

 ―ベンチャー投資にも意欲的です。

 「スポーツ分野でシナジーを創出できる事業者との商品開発を進めたい。1月に第1号案件で投資したスタートアップ企業は素材開発に強みを持つ。製品の軽量化や高耐久性など機能性向上につなげる。M&A(買収・合併)も検討し、新たな分野へ挑戦していく」

日刊工業新聞2018年6月14日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
06月14日
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海外の売上高比率が高まる中、ナイキやアディダスなど海外大手との差別化が重要だ。ECの普及で価格競争が激化する中、広田社長は「究極の職人だった創業者、鬼塚喜八郎の技術力を引き継ぐ」と強調する。個人に適合した魅力ある商品開発を進めるため、国内外で培った開発ノウハウを生かせるか、同社の底力が試される。
(日刊工業新聞社神戸支局・中野恵美子)

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