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匠の技光る“ネコ家具”で地場産業に光

福岡県大川市、インターネット用PR動画に大反響
匠の技光る“ネコ家具”で地場産業に光

PR動画用に製作し、反響の大きさから販売に至った「ネコベッド」(大川市提供)

 インテリアの世界にもネコブーム?―。福岡県大川市と地元家具メーカーが組んだ「ネコ家具」が注目を浴びている。インターネット用PR動画への反響が予定外の販売につながった。そこには地場産業を取り巻く状況を新たな切り口で打開しようとする姿がある。

 ネコ家具の製作は、地場産業である家具作りの技術を示すPR動画への使用がきっかけ。最近の「ネコブーム」と合わせた話題性もあり、2017年10月の公開から1カ月で約30万回再生された。反響を受け、PR動画に携わった広松木工(福岡県大川市)と立野木材工芸(同)の2社が販売に乗り出す。

 広松木工の製品は通常の42%サイズの「ネコソファ」。子ども向け製品を開発中だったこともあり耐久性や技術面を応用した。広松嘉明社長は「ターゲットが変わった」と話す。問い合わせや反響を受けてデザイン面も洗練された。

 「ネコベッド」を製造する立野木材工芸は、材木の割れや反りなどを考慮しながら試作を繰り返して製品化した。問い合わせの半数は海外からが占め、立野治美社長は「輸出体制やパッケージの作成など海外を知るきっかけになった」と語る。

 2社に共通するのは一般消費者との接点や海外との直接取引による効果。ネコ家具をきっかけに製品の質や技術力の高さを知り、ネコ家具以外の製品購入につながる効果も出てきた。

 大川市によると、家具生産額は最盛期だった91年の1268億円に対し14年は約4分の1の312億円。ライフスタイルの変化と外国産の安価な製品に押され、事業所、従事者の減少傾向が続く。その状況を打開しようと市は組み立て式茶室「MUJYOAN」を音楽の祭典、グラミー賞の式典会場に展示するなど産地をアピールしてきた。海外バイヤーの呼び込みは実を結び始め、生産額は10年の231億円で底を打っている。
日刊工業新聞2018年6月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 ネコ家具は18年に製作に5社が加わる。大川市インテリア課の担当者は「あくまでプロモーションのスタンスを保つ」と語るが、自治体と事業者が手を組んだことが今後の地場産業にどんな影響を与えるのか。各社の個性とさらなる仕掛けが試される。 (日刊工業新聞社西部支社・高田圭介)

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