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【検証・福岡市】「共有する自転車×地方交通インフラ」

【検証・福岡市】「共有する自転車×地方交通インフラ」

記者が体験した自転車シェアシステム「HELLOCYCLING」

 NTTドコモやメルカリ(東京都港区)、ヤフーなど参入が相次ぐ自転車シェアサービス。サービスは都市部だけでなく、地方都市にも広がっている。その中でも福岡市は公共交通を補完する機能として期待し、導入を支援する動きを見せている。福岡市を切り口に自転車シェアサービスの交通インフラとしての可能性を追った。

都心部の「回遊性向上」を目的


 福岡市は3月に「福岡スマートシェアサイクル実証実験事業」として自転車シェアサービス「メルチャリ」を展開するメルカリを選定した。「市街地での公共交通手段を補完する効果を図る」(福岡市企画調整部)ためだ。

 福岡市は2015年3月に、都心の回遊性向上などに向けた施策を盛り込んだ「福岡市総合交通戦略」を策定。その戦略の一つに「自転車シェアシステムの導入支援」を掲げている。その一環として実証では民間企業の敷地内での駐輪スペースの確保に向けた課題なども検証する予定だ。

 福岡市では既に複数の自転車シェア事業者がサービスを提供するが、各社とも繁華街の天神地区などでは専用駐輪場の確保できていない。背景には自転車と歩行者の衝突回避を目的に、押し歩きを推進する区間を設けていることなどがある。
メルカリは専用駐輪場を充実する方策について福岡市と連携しながら探る。

人口増加が進む福岡都市圏


 福岡市が「公共交通機関の補完」を期待する背景には、市内の人口増加による地下鉄などの公共交通機関の過密化がある。18年4月1日現在の推計人口は約157万人。10年前と比べ、約14万人増加した。さらに周辺自治体から働き手や学生として流入する人々も加味するとさらに膨らむ。このため、福岡市交通局によると、市内を走る「地下鉄空港線・箱崎線」の1日平均の輸送人員は16年度で約36.8万人。04年度の約28.1万人から大幅に増加した。今後、公共交通機関だけでは、人の輸送を支えきれなくなる可能性がある。

 都心の回遊性向上では、JR博多駅-ウオーターフロント地区(博多港周辺)-天神地区をロープウエーで結ぶ構想もある。ただ、実現にはコストや規制緩和など多様な課題が立ちはだかる。このため、シェアサイクルは回遊性向上という目的では、現実的な選択肢になる。まずはシェアサイクルの普及の最大の壁となっている拠点の整備を行政と連携して進めていくことが肝要だろう。

実際にシェアサイクルに乗ってみた


 自宅アパートの玄関口にできた自転車シェアシステムを利用してみた。OpenStreet(東京都港区)の自転車シェアシステム「HELLOCYCLING」を利用し、APAMANグループが運営する「ecobike」だ。

 観光地などで見かけるレンタルサイクルとの違いを何か分からずにいたが、大きな違いはスマートフォンのアプリを利用して借りられる利便性。位置情報システムによって空きの自転車を検索、予約する。ステーションに空きがあれば、借りた場所以外での返却も可能だ。

 今回、乗車前に検索すると職場の近隣にも空いている場所があり、実際、片道利用で乗車することにした。

 自転車本体にGPSを搭載した通信機器で予約時に示される暗証番号で開錠できる。予約から実際に乗るまでわずか数分。あまりにスムーズに乗れたことに驚きを感じた。

 道中も「自転車に乗る」という点で従来のものと違いはない。5-6年ぶりに自転車に乗ったが、電動アシスト付きだったこともあり、久々の乗車でも快適だった。

 ただ、利用中に頭をよぎったのは返却時のステーションに空きがあるかどうか。借りる時点では「返却可能」と表示されていたが、移動中に空きが埋まる可能性もある。また表示される情報がリアルタイムなのかという多少の不安も覚えた。加えて、電動アシスト付きの場合、バッテリー残量がなくなったときにどう充電するかは分からない。
(文・高田圭介)
ハンドル部分にある操作パネルを使って開錠する

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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
利用したシェアサイクルサービスに関していえば、返却する場所に空きがないと別の場所を探さなければならない不安はありました。また日差しが強いときに操作パネルがみえづらいというのもありましたが、それらの課題を超えると利用者は増すかと思います。学生時代、きちんと施錠しても毎年のように盗まれた苦い過去もあります(そのうち1つは小渕政権時の「地域振興券」で買ったもの。あの自転車たちはいまどこに…)が、今回、そんなイメージは取り除けたかもしれません。 (日刊工業新聞社西部支社・高田圭介)

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