発着制限も緩和、「ホンダジェット」は日本の空を変えるか

国内90機市場、インフラ整備道半ば

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日本に投入されるホンダジェットエリート
 日本で小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の受注を始めたホンダ。日本のビジネスジェット市場規模はわずか90機程度。約2万機と言われる米国とは雲泥の差で、空港間を自由に行き来できるようなインフラ整備も道半ばだ。ホンダジェットの売れ行き次第で、日本の空が大きく変わるかもしれない。

 ホンダの航空機事業子会社、米ホンダエアクラフトカンパニー(HACI、ノースカロライナ州、藤野道格社長)が日本市場に投入するのは5月末に発表した新型機「ホンダジェットエリート」だ。価格は約5億8000万円。

 日本では発売しないのか―。欧米での高評価を聞き、日本人からの試乗依頼も増える中、満を持して参入を決めたHACIの藤野社長は、「我々が参入してパイを広げ、周辺事業を含めた新しいビジネスジェット市場を作る」と力を込める。これで受注を始めた国・地域は6地域67カ国に膨らんだ。

 国内ディーラー「ホンダジェット・ジャパン」を運営する丸紅子会社の丸紅エアロスペース(東京都千代田区)は、航空機業界の専門商社として、国内ビジネスジェット事業で販売や運航管理、チャーターを手がけている。「デモフライトを重ねながら利便性と快適性を理解してもらい、販売を促進する」(遠矢源太郎社長)。

 空力改善や重量軽減、燃料タンクの増設で従来機に比べて航続距離を約17%増の約2661キロメートルまで延長した。米国連邦航空局(FAA)と欧州航空安全局(EASA)の型式証明は取得済みで、国土交通省航空局にも5月に型式証明を申請しており、19年前半の納入開始を目指す。

 国内84カ所の空港全てにアクセスでき、首都圏から上海、ソウル、北京、台北など東アジアの主要都市にノンストップで飛べる。「(日本市場の)購買能力などは欧米諸国と良い勝負。4―5年で市場規模を2倍にしたい」とHACIの藤野社長は意気込むが、日本のビジネスジェット機市場は米国や中国に比べて未成熟。世界を駆けるトップ経営者など利用は限定的だ。

 国土の広い米国ではビジネスジェット機が身近な存在で、1時間2500ドル程度でホンダジェットを使えるサービスもある。こうしたビジネスジェット機のグローバルスタンダードを持ち込み、日本に「新たな市場を創造する」(藤野社長)ことが最大の狙いだ。

 国土交通省は、来日者数の増加やビジネスジェット市場拡大につながるとして、国内空港のビジネスジェット利用環境の改善に取り組んでいる。乗り入れ希望の多い首都圏空港では、発着制限の緩和や駐機スポットの増設など受け入れ態勢の拡充を推進。乗降時の専用動線や専用待合室を設定するなど利便性の向上を急ぐ。

 日本における17年のビジネスジェット発着回数は前年比18・8%増の1万5351回。「観光目的の訪日外国人客の利用が増えているようだ」(航空局航空戦略課)。国際間移動に限定すれば、同14%増の5190回。羽田や中部、関西といった24時間空港の利用が堅調に増えている。

 羽田では16年春にビジネスジェット用の発着枠を従来比2倍の1日16回に拡大し、「以前のように、乗り入れを断るケースが少なくなった」(同)。17年の国際間移動発着回数も同14・2%増の2329回と伸びた。海外から東京にビジネスジェットで飛来する需要が観光、ビジネスともに好調なことが分かる。

 国交省は、2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向け、需要予測などを踏まえながら、ビジネスジェットの受け入れ態勢のさらなる拡充を検討している。
藤野HACI社長(左)ら

日刊工業新聞2018年6月7日の記事から抜粋

COMMENT

現在、ホンダジェットは月産4機ペースで量産が進む。19年以降には年80―100機体制に膨らむ見通し。ホンダジェット・エリートは最大7人乗り(乗客5人)だが、派生機が開発される公算も大きい。現行機種は「世界でビジネスジェットが使われているトップ10ルートの半分をカバーできることが設計要件」(同)になっており、残り50%への対応をどうするかが焦点になる。 (日刊工業新聞・鈴木真央)

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