ニュースイッチ

消費者の健康志向を追い風に、最近の炊飯器がスゴい

コメ離れで伸び悩みの市場、付加価値で活路見出す
消費者の健康志向を追い風に、最近の炊飯器がスゴい

タイガー魔法瓶の「とらひめ」と専用調理器

 おいしく食べつつ痩せる―。こんな消費者の願いをかなえる炊飯器の開発に、家電メーカーが力を入れている。通常のコメより熱量が低い加工食品の調理器、糖質を抑えたり食物繊維分を高めたりする炊飯器が登場している。「人生100年時代」と言われ、健康志向は高まる一方だ。健康寿命の延伸に欠かせない食生活に気を配る。国内はコメ離れなどから、炊飯器の販売が伸び悩む。各社は新たな需要の掘り起こしを始めた。

 「お客さまに我慢をさせてはいけない」。タイガー魔法瓶(大阪府門真市、菊池嘉聡(よしさと)社長、06・6906・2121)の和田隆弘常務取締役は、こう力を込める。同社が提案するのは、こんにゃくとタピオカを原料にした米粒状加工食品「とらひめ」と、調理機能を搭載した炊飯器のセット購入。とらひめは通常のコメと比べ、カロリーが約50%、糖質は約47%低い。食物繊維は約8倍高い。

 とらひめの開発は「コメの食感や、甘味、粘り気を再現するのが難しかった」(食生活みらい研究所の小野昌之マネージャー)。炊飯器は温度調整や加熱時間にノウハウがあり、本物の白飯に近い炊き方ができる。

 コメの糖質を33%減らす「糖質カット炊飯器」を開発したのは、家電などのインターネット販売が主力のサンコー(東京都千代田区、山光博康社長、03・3526・4321)。外釜に水を注ぎ、内釜にコメを入れて炊く。炊飯時にコメから、糖分を含んだ煮汁が溶け出す。これを炊飯器下部のタンクに排出。その後、水が内釜に自動的に足され、炊きあげる。1万台を出荷し、想定以上の売り上げだという。

 アイリスオーヤマ(仙台市青葉区、大山健太郎社長、022・221・3400)は、食物繊維に着目。コメに含まれる食物繊維分を、通常の2倍に高める炊飯器を開発した。炊飯器の圧力や温度を制御し、でんぷんの一部を食物繊維に変換する。食物繊維は便秘解消に効果があると言われ、健康意識の高い女性に好評という。

 国内の炊飯器市場はさえない。調査会社のGfKジャパン(東京都中野区)によると、家電量販店の炊飯器販売台数はゆるやかに減少し、17年は前年比1%減。市場が厳しさを増す中、各社は「付加価値を訴求した製品を投入している」(GfKの宮本徹シニアアナリスト)。
日刊工業新聞2018年6月6日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
コメは健康食として欧米人も関心を寄せる。炊飯器を通じコメの新たな価値を訴求することは、市場全体を成長させるカギと言えそうだ。 (日刊工業新聞社・大城蕗子)

編集部のおすすめ