ニュースイッチ

ドライバー派遣事業でタイに進出、成長に欠かせないのは薬物検査!?

神姫バスが日系企業向けに展開
ドライバー派遣事業でタイに進出、成長に欠かせないのは薬物検査!?

ドライバーには、安全運転の重要性、守秘義務やマナーなどを教える(SBTIでの新人研修)

 神姫バスは2017年2月、タイで日系企業向けにドライバーを派遣する事業を始めた。人口減少により日本で事業拡大が期待できない中、タイは経済成長で多くの日系企業が進出。タイの駐在員やその家族が、現地タクシーの運転の荒さにストレスを感じていると知り、日本と同じ質のドライバー派遣サービスを展開すればビジネスになると判断した。契約は右肩上がりで増えている。

 タイではドライバーのみの派遣、車両とのセット派遣、1日から利用できる空港送迎などのスポット利用のメニューを用意した。日系企業を中心とした顧客は、ドライバー派遣だけだと月額9万―15万円程度で利用できる。派遣事業の運営に当たるのは、神姫バスの現地法人である神姫バストランスポートインテグレーション(SBTI)だ。現在、採用している派遣ドライバーは60人を超え、32社と契約している。

 ドライバー派遣は17年7月以降、契約会社数、車両の契約台数ともに毎月増加している。タイには競合も存在し、SBTIは最後発参入でもあったため、事業スタート当初は仕事がない状態が続いた。だが「ドライバーの質の高さにこだわり、安全運転、丁寧なサービス提供が評価され、数字につながり始めた」(三木公仁SBTI代表)。

 事業のカギとなるのはドライバーの質。面接時から身だしなみや人柄をチェックし、薬物検査や入れ墨の確認、運転適性検査を実施する。「基準をクリアする人は少なく、10人を面接して1人残るかどうか」(同)という。

 入社後のドライバーには、創業以来90年以上にわたり日本で培ったノウハウを生かして、安全運転の重要性、守秘義務やマナー、ドアサービスといったおもてなし、車の点検、清掃などを教える。安全運転面ではブレーキの踏み方やスムーズな車線変更方法なども指導しプロドライバーを育てる。

 これらをとりまとめるタイ人マネージャーは日本で研修を受け、日本のサービスを熟知している。SBTIのオフィスでは日本語能力試験に合格したタイ人スタッフが顧客対応する。

 ドライバー派遣後も定期的にドライバー教育などを実施するため、競合他社に比べてどうしても料金は割高になる。高いという理由で契約に至らなかったケースもあったが、顧客の安全に対する意識の変化で、問い合わせは増えているという。

 事業が軌道に乗り始めた中で、分かったことがある。面接時に薬物反応が出る人の多さだ。「採用時だけでなく、全ドライバーに年に2回の薬物検査をしている」(同)。

 SBTIは、タイでの事業拡大を最優先に進める計画だ。同国では1人当たりの所得も上昇しており、サービス業を主軸にする同社にとって、タイは魅力のある市場とみる。
 
日刊工業新聞2018年5月30日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
一方で、ミャンマーやベトナム、ラオスなど周辺国でも同様のサービスを展開してほしいという顧客要望も強く、各国で調査に入っている。 (日刊工業新聞社姫路支局長・丸山美和)

編集部のおすすめ