クルマへの愛着心が日本に新しい「洗車文化」を広める

<情報工場 「読学」のススメ#55>『クルマを「きれい」にする美学 【KeePer】』(鶴蒔 靖夫 著)

カーユーザーの半数弱が自分のクルマを「家族」だと思っている


 唐突だが、自家用車を持っている人は、自分のクルマに「名前」をつけているだろうか。

 「モノに名前をつけるなんて、信じられない」と引く人もいるだろうが、実際に名前をつけている人や、名前で呼ぶことに抵抗のない人は、案外多いのかもしれない。筆者はクルマを所有したことがないのだが、緑色の車体の自家用車に「みどりちゃん」と名づけ、かわいがって(?)いる友人がいる。

 トヨタは、2017年10月の「第45回東京モーターショー」に合わせて「#クルマを名前で呼ぼう キャンペーン」を実施した。ツイッターのハッシュタグ機能を使って愛車に名前をつけたツイートを募集するものだ。全国から続々と珍名を含むバラエティに富んだ愛称が集まったそうなので、興味がある人は「#クルマを名前で呼ぼう」でツイートを検索してみてほしい。

 ちなみにトヨタは、2015年にも米国で“More than cars”というキャンペーンを行っている。こちらは、ネットでトヨタに自分のクルマの名前を送ると、それをロゴにしたネームプレートを製作してもらえる、というものだ。このキャンペーンでは開始から6カ月の間に10万個のネームプレートの注文があったという。

 さて、トヨタは「#クルマを名前で呼ぼう キャンペーン」に先立ち、約300人のユーザーを対象とする意識調査も実施している。その結果、約1割(10.4%)の人が自分の車に名前をつけていたそうだ。この数字を多いと見るか少ないと見るかは意見が分かれるところだが、注目すべきは、18歳~29歳の若年層で全体より多い割合の20.7%が名前をつけていたことだ。「若者のクルマ離れ」が嘆かれることが多いが、少なくともクルマへの愛着心は若者の方が上なのかもしれない。

 『クルマを「きれい」にする美学 【KeePer】』(IN通信社)には、オークネット総合研究所が2014年に発表した「クルマへの愛着に関する意識調査」の結果が紹介されている。

 それによると、所有したクルマに愛着が「ある」「少しある」と答えたユーザーは全体の90.3%にも達している。そしてそう答えたユーザーを対象とした「自分のクルマを身近な存在にたとえた場合、どのような存在になるか」という質問の回答は、「家族」が48.0%、「友人」が23.9%、「ペット」が8.7%、「恋人」が4.7%、「部下」が2.0%だった。

 名前をつけたり、自分の身近な人にたとえたりするのは、自分のクルマを単なる道具ではなく、なくてはならない大切な存在やパートナーとして認識していることを意味する。さらにオークネット総合研究所の同調査では、「愛着を感じるタイミング」として「運転しているとき」が34.4%ともっとも高く、その次に「洗車しているとき」18.8%となっている。

 家族にたとえられるほどクルマに愛着を感じているのであれば、できるだけ買い換えをせずに長く乗り続け、洗車を怠らず常に「きれい」にしておくのは当然だろう。実際、近年は同じクルマを長く乗り続ける傾向が強くなっているそうだ。

 かつてのバブル時代には、クルマをステータスシンボルとしてひけらかすために所有し、ひんぱんに買い換える人も少なくなかった。しかし現代では、自分が本当に気に入ったクルマをメンテナンスをしながら大事に乗り続ける人が多くなっているようなのだ。

 さすれば、バブル時代ほどクルマが売れなくなった原因は「若者のクルマ離れ」というより、単純に一人当たりの買い換えの回数が減ったことにあるのかもしれない。
 

「洗車文化」の広がりが「共感」あふれる豊かな社会をつくる


 『クルマを「きれい」にする美学 【KeePer】』では、KeePer技研株式会社の活動を、同社の創業社長・谷好通(たに よしみち)氏の経営哲学を紹介しながらリポートしている。

 KeePer技研は「日本に新しい洗車文化を。」を企業ビジョンに掲げ、ミネラルを含まない純水で汚れを落とし、塗装を研磨しないでも美しい艶(つや)を実現できる独自開発の「キーパーコーティング」をメインに事業を展開。直営およびフランチャイズの専門店「キーパーLABO」と技術認定店「キーパープロショップ」を全国展開し、研修や技術検定、ケミカル製品の開発と販売などを手がける会社だ。

 前述のように、クルマに愛着を持つ人は洗車を怠らないはずだ。また、日本人は「きれい好き」であり、市街地の道路を眺めても、泥だらけだったり、車体がデコボコだったりする自動車はめったに見かけない。ほとんどの国ではボロボロの車が平然と走っていたりするので、来日して驚く外国人観光客は少なくないらしい。

 ところがそんな日本人でも、洗車を専門業者に依頼する人はカーマニア以外少なかった。自宅で自分で洗うか、ガソリンスタンドで給油のついでに洗車をする人がほとんどだった。KeePer技研の谷社長に言わせれば「洗車文化」がなかったのである。

 KeePer技研のキーパーコーティングは「お化粧のようなもの」と谷社長は言う。同社のような専門業者に自分のクルマを預けるのは、これまで自宅で洗髪したり、10分で仕上がる理容店で散髪するだけだった人が、ちょっとおしゃれな美容室で髪をセットをしてもらうようなものなのだろう。

 さらに谷社長は「弊社が提供するカーコーティングは、『いま』だけではなく、施工した時点から1年、種類によってはそれ以上先の『未来』まで、美しさが保たれます」とも説明している。つまり、近年増える傾向にある「愛車に長く、大切に乗り続けたい」人たちにとって、同社の技術はうってつけなのだ。同社や、同社の技術を採用するガソリンスタンド、あるいは同業の専門業者が、そういう人たちのニーズを拾っていくことができれば、日本により良い「洗車文化」が浸透するのは、時間の問題かもしれない。

 谷社長はKeePer技研の人材採用の際に、応募者が「自分がしたことで人が喜んでくれると、自分自身もうれしいかどうか」を必ず確認しているそうだ。共感力があるかどうかを採用の基準にしているのだ。
 お客様の「きれいにしたい」に寄り添える共感力がなければ、細かい塗りむらや拭き漏れなどにも気づけず、施工の品質に影響するからだという。

 「モノ」を大切するという気持ちは、人への共感力にもつながるのではないだろうか。それゆえ新しい「洗車文化」は、共感あふれる豊かな社会を実現するのに貢献するかもしれないのだ。

(文=情報工場「SERENDIP」編集部)

『クルマを「きれい」にする美学 【KeePer】』
-日本人特有の国民性が生んだ高性能カーコーティング
鶴蒔 靖夫 著
IN通信社
230p 1,800円(税別)

ニュースイッチオリジナル

冨岡 桂子

冨岡 桂子
05月19日
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パリでは、路上に縦列駐車をする際にサイドブレーキはひいておかないのが暗黙のルールだそうだ。後から来て駐車しようとする車が、自分の車のバンパーを前の車に軽く当て、じわじわと押してスペースを広げるからだ。バンパーの使い方としてはきっと正しいのだろう。しかし、日本人の感覚ではあり得ないことだ。そういったクルマについて真逆の価値観ができあがってしまった国では難しいかもしれないが、少なくとも新興国には自動車と一緒に洗車文化が輸出できるかもしれない。

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