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なぜスズキはバイク販売店の再編を進めないの?

スズキ二輪事業本部長・西河雅宏氏に聞く
なぜスズキはバイク販売店の再編を進めないの?

自社のスーパースポーツバイクでイベントに参加した鈴木俊宏社長

 ―2輪車市場の現状をどう見ていますか。
 「国内は販売台数が下がり続け、成熟市場となっている。スクーターは移動の足、スポーツバイクやクルーザーなどは趣味の品というように、2輪車の中でも市場が2極化している。海外市場は地域によって伸びが違う。今後、海外の地域によっては日本と同じように市場が成熟化、2極化する可能性もある。国内と海外どちらの市場も対応できるようなモデルを発売できるよう事業基盤を強化する」

 ―18年度前半、浜松工場(浜松市北区)が稼働します。
 「浜松工場では、従来別だった組み立てとエンジン製造を一体化し、30%生産性を高める。一体化で開発や製造など各専門分野の人材交流を促して開発のスピードを上げ、グローバル展開できるモデルづくりも目指す」

 ―ホンダや川崎重工業は国内販売店網の再編を進めています。スズキの販売戦略は。
「当社にはスズキバイクショップをはじめとする販売店網がある。すぐに再編しようとは考えていない。当社グループおよび各店舗が作りあげてきたものを生かし、現状でいかにお客さまと接していくのかを考える」

 ―2月に東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドを統括する部署を新設しました。
 「統括部署は、これらの地域に根付いた製品を発売し、事業成長を目指すために設けた。成長に特別な方法はなく、地道に進める。販売面はインド・東南アジアとも排気量126cc以上の趣味性の高い2輪車の販売店網を整備したい。ラインアップや従業員が提供するメンテナンスサービスを充実させる」

 ―燃料電池2輪車など次世代バイクの開発にも取り組んでいます。
 「燃料電池2輪車は公道走行を展開しているが水素のインフラ整備に課題がある。課題解決は国などと手を取り合って進める。ロボットや人工知能(AI)関連技術の搭載は、米シリコンバレーの拠点で収集した情報をもとに、開発の方向性を定めたい」
日刊工業新聞2018年5月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
18年3月期、4期ぶりに2輪車事業が黒字化したスズキ。西河事業本部長は「どこに資源を配分するかが課題」と選択と集中の姿勢を示す。好転の兆しを見せはじめた事業を、新製品の開発・投入や、新工場の稼働でどこまで伸ばすことができるのか。基盤強化には、慎重かつ大胆なかじ取りが欠かせない。 (日刊工業新聞・山田諒)

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