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CASE時代だからこそ〝カイゼン力"

自動車業界の変革期を勝ち抜くのはどこだ?
CASE時代だからこそ〝カイゼン力"

トヨタの豊田社長

 乗用車メーカー7社の2019年3月期は、三菱自動車を除く6社が前期と比べ営業減益を見込む。為替の円高のマイナス影響に加え、電動化など先進技術への対応で研究開発費が増える。自動車業界が100年に1度という大変革期を迎える中、環境変化やコスト増に耐えられる経営体質を築けるか。各社の実力が問われる。

 7社合計の19年3月期の研究開発費は前期比5・9%増の2兆9550億円となる見込み。トヨタ自動車が前期比1・5%増で過去最高となる1兆800億円を計画するなど、SUBARU(スバル)を除く6社が前期比プラスを見込んでいる。

 背景にはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ぶ自動車業界の新潮流があり、ハードウエアとソフトウエアの両技術で他社に先行することが競争力に直結する。トヨタは研究開発費のうち約35%を自動運転などの先行開発に充てる計画。

 CASEの中でも各社が取り組みを急ぐのが電動化。スズキは「まずハイブリッド車(HV)を含め電動化に取り組む」(鈴木俊宏社長)と言明。スバルも「(19年3月期の研究開発費計画は)車種開発の“山谷”の関係もあり微減だが、来年度以降は電動化への対応に向け増えていく」(日月丈志専務執行役員)と説明する。モーター、電池、インバーターなどの主要部材をめぐり各社の研究開発の取り組みが加速する。

 一方、為替の円高が各社の営業利益に与えるマイナス影響も大きい。18年3月期の実績レートは1ドル=111円だったが、マツダは想定レートを107円に、トヨタや日産自動車、ホンダなど残り6社はすべて105円に設定した。ドル以外の通貨に対しても円高傾向にあり、7社合計で7054億円の営業減益要因になる見込み。

 各社が為替変動に耐えながら、CASE対応への十分な研究開発投資を継続するには収益力強化が欠かせない。豊田章男トヨタ社長は9日の決算会見で「トヨタの真骨頂はトヨタ生産方式(TPS)と原価低減」と繰り返し強調。固定費を抜本的に見直す考えを示し、19年3月期は1300億円の原価低減を計画する。

 変革期を勝ち抜くため、日系自動車メーカーが得意としてきた“カイゼン力”が再び問われる。
 
日刊工業新聞2018年5月22日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
対売上高研究開発費比率はCASE時代を迎える自動車産業の収益構造を占う最も需要な指標の一つだ。放置すれば、その比率がウナギ上りとなり収益性を強く圧迫することは自明だ。既存領域の量産開発効率を30%は高め、浮いた予算をCASE対応を含めた先行開発領域に投下しなければならない。 既存領域はアライアンスを強め、重複を回避するだけでなく、先読みの全体最適化がカギを持つ。先端領域は、オープン化は言うまでもないが、バラマキでは追いつかない。異業種連携が欠かせない。Hondaはこれらの流れに出遅れていることは否めない。

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