自動運転時代は「シート」も変わる!
各社による次世代品の開発競争が始まった
自動車業界の大きな変化として注目される自動運転。運転時間が“自由時間”に変わるため車内空間にも進化が求められる。特にシートは体に誰もが触れ、目に付く部材であるだけに快適性向上が不可欠だ。シートメーカーからは乗りながらエクササイズするといったユニークな視点の提案も出てきた。メーカー各社の次世代シートの開発を追う。
独立系シートメーカーのタチエスが提案する次世代シート「コンセプトX―3」。白く薄い座面はシャープな印象を与えるとともに、自動運転のレベル3・同4を想定し、ソファに座る感覚で体への負担を抑えてくつろげる形状を設計した。腰周辺のフィット感が抜群だ。タチエスの担当者は「従来の運転する姿勢とは違う。長時間、このままの姿勢を維持し、どこまでも行けるようイメージして設計した」と胸を張る。
自動運転が実現すれば、自動車には新たな価値が求められる。その一つが車内の快適性の向上だ。空間の心地良さを高めるにはインテリアが重要で、中でも「シートは最重要点になる」と自動車シート世界最大手の米アディエントのリチャード・チャング副社長は指摘する。自動運転時代の次世代シートをリードしようと、各メーカーの競争が始まった。
各社が共通して取り組むのが座り心地の向上。運転に集中する必要がなくなれば、運転者の自由度が増し、いかに快適な移動時間を過ごすかに対する価値が高まる。運転者が常に前方を向く必要がなくなることで、シート設計の制約も格段に緩くなった。タチエスのコンセプトX―3も座り心地の向上を狙う。
テイ・エステックは自動運転が一般的になれば、シートなどの内装品は「家具メーカーがライバルになるかもしれない」(担当者)と気を引き締める。自動運転に対応したコンセプト製品として「安らぎ空間シート」を開発した。
座った人間が筋肉と背骨に負担がかからない脱力状態の「中立姿勢」になるのを目指した製品だ。背もたれを倒してシートに座った時の腰の角度を128度にするなど、まるで“無重力状態”にいるような心地よさを導き出した。
自動運転の進化は運転者らの自由度を高め、快適性とともに乗車時間を楽しむことにも価値が置かれるようになる。運転者と同乗者が会話しやすいシートの開発もメーカー各社が重視するテーマだ。
テイ・エステックが打ち出した「アンビエントシート」は、運転席と助手席など隣り合う座席を120度で向き合う形にアレンジできる。この角度は家族や恋人、友人など親密な関係な人同士の話しやすさを研究して導き出した。
助手席が進行方向と反対側に180度回転するシート「AI18」を開発したのは、自動車シート世界最大手の米アディエント。運転席の同乗者と向かい合って会話ができる。
これまでにない価値をシートに付加する試みも出てきた。テイ・エステックの「エクサライドシート」は、運転しながらエクササイズできる。停車時に座面が前後左右に大きく回転する仕組みだ。バランスボールを使った運動のような体感ができるという。
自動運転の実現により、リラックスする、同乗者との会話を楽しむといった需要に加えて、健康チェックなど「生活を支援するシートのニーズがある」とアディエントのリチャード・チャング副社長は分析する。シートの機能拡張を目指す開発が活発化していきそうだ。
乗り心地の向上、会話が弾むシートアレンジなど次世代シートの開発テーマは多様化している。1社では開発費の負担が重いほか、アイデアや技術にも限界がある。そのため他社と連携する動きも出てきた。
トヨタ紡織、豊田合成、東海理化の内装関連3社は、シートベルトやエアバッグなどの機能を融合する次世代シートの共同開発に着手した。トヨタ紡織のシートを中心に、豊田合成と東海理化のシートベルトやエアバッグなどの各システムを一体的に制御し快適性や衝突時の乗員保護などの機能を高める。2020年代初頭にも実用化を目指す。
シートメーカー各社は完成車メーカーへの提案を積極化している。島崎満雄タチエス取締役常務執行役員は「1、2年の間に次世代シートで新たな提案ができるようにしたい」と意気込む。
(文・山岸渉、杉本要)
車内快適性がカギ
独立系シートメーカーのタチエスが提案する次世代シート「コンセプトX―3」。白く薄い座面はシャープな印象を与えるとともに、自動運転のレベル3・同4を想定し、ソファに座る感覚で体への負担を抑えてくつろげる形状を設計した。腰周辺のフィット感が抜群だ。タチエスの担当者は「従来の運転する姿勢とは違う。長時間、このままの姿勢を維持し、どこまでも行けるようイメージして設計した」と胸を張る。
自動運転が実現すれば、自動車には新たな価値が求められる。その一つが車内の快適性の向上だ。空間の心地良さを高めるにはインテリアが重要で、中でも「シートは最重要点になる」と自動車シート世界最大手の米アディエントのリチャード・チャング副社長は指摘する。自動運転時代の次世代シートをリードしようと、各メーカーの競争が始まった。
各社が共通して取り組むのが座り心地の向上。運転に集中する必要がなくなれば、運転者の自由度が増し、いかに快適な移動時間を過ごすかに対する価値が高まる。運転者が常に前方を向く必要がなくなることで、シート設計の制約も格段に緩くなった。タチエスのコンセプトX―3も座り心地の向上を狙う。
テイ・エステックは自動運転が一般的になれば、シートなどの内装品は「家具メーカーがライバルになるかもしれない」(担当者)と気を引き締める。自動運転に対応したコンセプト製品として「安らぎ空間シート」を開発した。
座った人間が筋肉と背骨に負担がかからない脱力状態の「中立姿勢」になるのを目指した製品だ。背もたれを倒してシートに座った時の腰の角度を128度にするなど、まるで“無重力状態”にいるような心地よさを導き出した。
座席向き合い、会話弾む
自動運転の進化は運転者らの自由度を高め、快適性とともに乗車時間を楽しむことにも価値が置かれるようになる。運転者と同乗者が会話しやすいシートの開発もメーカー各社が重視するテーマだ。
テイ・エステックが打ち出した「アンビエントシート」は、運転席と助手席など隣り合う座席を120度で向き合う形にアレンジできる。この角度は家族や恋人、友人など親密な関係な人同士の話しやすさを研究して導き出した。
助手席が進行方向と反対側に180度回転するシート「AI18」を開発したのは、自動車シート世界最大手の米アディエント。運転席の同乗者と向かい合って会話ができる。
これまでにない価値をシートに付加する試みも出てきた。テイ・エステックの「エクサライドシート」は、運転しながらエクササイズできる。停車時に座面が前後左右に大きく回転する仕組みだ。バランスボールを使った運動のような体感ができるという。
自動運転の実現により、リラックスする、同乗者との会話を楽しむといった需要に加えて、健康チェックなど「生活を支援するシートのニーズがある」とアディエントのリチャード・チャング副社長は分析する。シートの機能拡張を目指す開発が活発化していきそうだ。
乗り心地の向上、会話が弾むシートアレンジなど次世代シートの開発テーマは多様化している。1社では開発費の負担が重いほか、アイデアや技術にも限界がある。そのため他社と連携する動きも出てきた。
トヨタ紡織、豊田合成、東海理化の内装関連3社は、シートベルトやエアバッグなどの機能を融合する次世代シートの共同開発に着手した。トヨタ紡織のシートを中心に、豊田合成と東海理化のシートベルトやエアバッグなどの各システムを一体的に制御し快適性や衝突時の乗員保護などの機能を高める。2020年代初頭にも実用化を目指す。
シートメーカー各社は完成車メーカーへの提案を積極化している。島崎満雄タチエス取締役常務執行役員は「1、2年の間に次世代シートで新たな提案ができるようにしたい」と意気込む。
(文・山岸渉、杉本要)
日刊工業新聞2018年5月16、17日