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「2050年には火星に人類が住んでいると思う」(宇宙飛行士・山崎直子)

民間宇宙飛行士の増加も期待
「2050年には火星に人類が住んでいると思う」(宇宙飛行士・山崎直子)

山崎直子さん

 これまで多くの日本人宇宙飛行士が誕生し、国際宇宙ステーション(ISS)やスペースシャトルなどで活躍、日本の宇宙開発の可能性を広げてきた。宇宙での経験を地上や今後の宇宙開発でどう役立てるのか。宇宙飛行士の山崎直子さんに聞いた。

 ―宇宙飛行士になったきっかけは
 「『将来、学校の教師になる』と考えていた中学生の時にスペースシャトルの爆発事故が起きた。亡くなった宇宙飛行士の中には、宇宙から授業するため学校の教師が搭乗していた。そこで教師と宇宙のキーワードが結びついた。亡くなった学校教師の遺志を受け継ぎ、宇宙の素晴らしさを子どもたちに伝えたいと思った」

 ―技術者と宇宙飛行士として国際宇宙ステーション(ISS)の構築に貢献しました。
 「1996年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の前身である宇宙開発事業団(NASDA)に入社。当時はISSの日本実験棟『きぼう』の設計が固まり、多くの企業が開発に携わっていたころだ。各要素技術を組み合わせたシステムを試験し、打ち上げに向け調整に入っていた。現場ではモノづくりにかける企業の技術者の魂を見た。まさに血と涙と汗の結晶で、できあがった時には感無量だった。さらに宇宙飛行士として宇宙に上がった時には『きぼう』への実験試料の運搬などを手がけることができ大きな喜びだった」

 ―現在、宇宙に関わる啓発活動に取り組んでいますね。
 「15年に航空宇宙業界の男女共同参画を推進する『宙女(ソラジョ)ボード』を日本ロケット協会内に発足させ委員長を務めている。研究集会や交流会などの活動を通し、女性の視点で航空宇宙の開発利用に反映させることが目的だ。非宇宙分野出身者が6割、男性が3割程度で性別や分野を超えた取り組みを実施し、活動の輪を広げている」

 ―民間の宇宙開発に期待することは何でしょう。
 「宇宙活動に興味を持つ若者は多いが、国の宇宙飛行士の間口は狭い。一方、宇宙産業の裾野が広がれば、必要となる宇宙飛行士の数も増える。そのため民間でも行える有人宇宙活動の基盤技術が必要になるだろう。有人宇宙船を運用できる時代になったら、民間の宇宙飛行士として月より遠い宇宙に行きたい」

 ―人類は数十年後にどこまで進出しているでしょう。
 「50年には火星に人類が住んでいると思う。長期の宇宙探査には火星に住めるほうがいい。同時に宇宙観光といった民間のビジネスも出てくるだろう。多くの人々が宇宙に行ける時代になってほしい」
【略歴】やまざき・なおこ 96年(平8)東大院工学系研究科修士課程修了、同年NASDA入社。99年ISS搭乗日本人宇宙飛行士の候補者に選定、10年スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗。12年宇宙政策委員会委員、14年女子美術大学客員教授。千葉県出身、47歳。
日刊工業新聞2018年5月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
山崎さんは国の宇宙政策委員会委員として日本の宇宙政策に携わる一方で、宇宙での体験を交えた講演会や出前授業などを行い宇宙教育活動に尽力する。多くの民間企業が宇宙開発に参入し、宇宙ビジネスはますます伸びていくだろう。政策立案と教育の両面から宇宙利用の拡大を目指す山崎さんの活躍に注目が集まる。 (日刊工業新聞科学技術部・冨井哲雄)

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