METI
老舗印刷会社、印刷にこだわらないビジネスモデルに挑戦
ニシカワ(東京都東大和市)は1948年創業の商業用印刷の老舗企業。紙媒体の縮小に伴い、印刷業の新たなビジネスモデルの構築に挑戦してきた。チラシやダイレクトメール、パンフレットなど印刷で培ってきたリアルでの情報加工のノウハウを、デジタルやバーチャルといった新たな手段で顧客の求める販売促進を総合的に支援する。時代の変化に応じた”情報加工業”として、自治体をはじめさまざまな企業・団体を巻き込み、地域経済の活性化を目指す。社会に求められる新たな価値創造をミッションと捉える。
交通量の多い東京都東大和市の新青梅街道沿いに、周囲の環境に溶け込んだ落ち着いた雰囲気の建物がある。一歩、足を踏み入れると、緑色を基調に、自然をテーマとしたおしゃれなオフィス空間が現れ、クリエイターたちが意気揚々と仕事に取りかかる。
ニシカワは創業以来、チラシやカタログ、パンフレットなどの商業用印刷物が中心だったが、電子化の波による紙媒体の市場縮小に伴い、印刷業から業態を変化させてきた。2代目社長の西川誠一社長は就任と同時に、情報加工サービス業への業態転換に積極的に取り組んできた。例えば印刷工場内にあった12台のチラシ用輪転印刷機は徐々に台数を減らし、現在は6台に縮小。一方、版が不要でオンデマンド対応ができるデジタル印刷機の導入を進め、小ロット多品種印刷が可能となった。印刷から撤退するのではなく印刷の仕方を変え、さらに「印刷+アルファ」の価値創造に力を入れている。
ニシカワは2015年に3次元(3D)コンピューターグラフィックス(CG)を制作するガオカンパニー(東京都中央区)を買収、完全子会社化した。3DCGやアニメーションなどの制作能力を自社の戦力にする。広告を出す媒体の選定からコンテンツの企画制作まで一貫して手がける。現在の取り組みはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、ホログラムなどガオカンパニーの買収によってもたらされたバーチャルプロモーション事業の強化だ。例えば、腕時計や宝飾品、ヘッドホンなどハイブランド製品の3DCGを投影し、暗闇の中に浮かび上がらせる演出をする。また、駅ナカ商業施設では既存のキャラクターを3DCGアニメーション化し、電車の車両内ビジョン及び各施設のサイネージなどを駆使し駅利用者の導線に即した効果的で印象的なプロモーションも行う。
ニシカワは2014年、印刷業にこだわらない各種ソリューション開発を目指す「株式会社ネクスメディア」を立ち上げた。西川社長は「あえて紙は狙わない。さまざまな連携によって新しいソリューションを提供する」と、印刷以外を目指す戦略をテーマにした。そこで着目したのは無料サービスを意味する「フリーミアム」をテーマに、地域との連携を模索すること。東京・多摩地区にある市町村自治体の広報紙を電子化し、一覧で読むことができる「TAMA ebooks(タマイーブックス)」のサイト運営に乗り出した。行政情報をはじめとし、観光や文化、福祉、教育など多摩地区の各団体の情報誌やパンフレットなどを集約して電子化し、掲載する。掲載団体数は100を超え、自治体でみれば多摩地区市町村の8割以上を網羅する。ユーザーは自治体の広報を斜め読みできるほか、観光協会や商工団体の広報情報も目にすることができる。
特徴的なのはサイトに企業広告がなく、掲載主からも掲載料を取らないことだ。ネットメディアが常識とする広告モデルではなく、自治体など各団体との関係を構築し、そこから派生するさまざまな困りごとを吸い上げる対面のソリューションによって収益化を図るビジネスモデルだ。
ある観光協会では、地域観光の効果的なプロモーションを課題にしていた。西川社長は「困りごとを聞き、缶バッチやキーホルダー、クリアファイル、のぼり旗などのノベルティグッズをプロデュースした。自前で制作するには限界があった」といい、普段から顔をつきあわせた営業活動をしているからこそ得られる仕事をどんどん増やしている。
ニシカワのグループ全体の売上高は80億円規模。ガオカンパニー社の買収とネクスメディア社の牽引により新たな成長が見込める。西川社長は「印刷物は需要と供給のバランスによって成り立つ。しかし情報加工能力によって生み出されるクリエイティブは無限だ」と「印刷+アルファ」の新事業により情報加工業としての可能性を模索する。
【企業情報】
▽住所=東京都東大和市高木3-351-1▽社長=西川誠一氏▽創業=1948年9月▽売上高=45億4000万円(2017年9月期)>
電子化の波受け、積極的に業態転換
交通量の多い東京都東大和市の新青梅街道沿いに、周囲の環境に溶け込んだ落ち着いた雰囲気の建物がある。一歩、足を踏み入れると、緑色を基調に、自然をテーマとしたおしゃれなオフィス空間が現れ、クリエイターたちが意気揚々と仕事に取りかかる。
ニシカワは創業以来、チラシやカタログ、パンフレットなどの商業用印刷物が中心だったが、電子化の波による紙媒体の市場縮小に伴い、印刷業から業態を変化させてきた。2代目社長の西川誠一社長は就任と同時に、情報加工サービス業への業態転換に積極的に取り組んできた。例えば印刷工場内にあった12台のチラシ用輪転印刷機は徐々に台数を減らし、現在は6台に縮小。一方、版が不要でオンデマンド対応ができるデジタル印刷機の導入を進め、小ロット多品種印刷が可能となった。印刷から撤退するのではなく印刷の仕方を変え、さらに「印刷+アルファ」の価値創造に力を入れている。
ニシカワは2015年に3次元(3D)コンピューターグラフィックス(CG)を制作するガオカンパニー(東京都中央区)を買収、完全子会社化した。3DCGやアニメーションなどの制作能力を自社の戦力にする。広告を出す媒体の選定からコンテンツの企画制作まで一貫して手がける。現在の取り組みはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、ホログラムなどガオカンパニーの買収によってもたらされたバーチャルプロモーション事業の強化だ。例えば、腕時計や宝飾品、ヘッドホンなどハイブランド製品の3DCGを投影し、暗闇の中に浮かび上がらせる演出をする。また、駅ナカ商業施設では既存のキャラクターを3DCGアニメーション化し、電車の車両内ビジョン及び各施設のサイネージなどを駆使し駅利用者の導線に即した効果的で印象的なプロモーションも行う。
あえて印刷以外を目指す
ニシカワは2014年、印刷業にこだわらない各種ソリューション開発を目指す「株式会社ネクスメディア」を立ち上げた。西川社長は「あえて紙は狙わない。さまざまな連携によって新しいソリューションを提供する」と、印刷以外を目指す戦略をテーマにした。そこで着目したのは無料サービスを意味する「フリーミアム」をテーマに、地域との連携を模索すること。東京・多摩地区にある市町村自治体の広報紙を電子化し、一覧で読むことができる「TAMA ebooks(タマイーブックス)」のサイト運営に乗り出した。行政情報をはじめとし、観光や文化、福祉、教育など多摩地区の各団体の情報誌やパンフレットなどを集約して電子化し、掲載する。掲載団体数は100を超え、自治体でみれば多摩地区市町村の8割以上を網羅する。ユーザーは自治体の広報を斜め読みできるほか、観光協会や商工団体の広報情報も目にすることができる。
特徴的なのはサイトに企業広告がなく、掲載主からも掲載料を取らないことだ。ネットメディアが常識とする広告モデルではなく、自治体など各団体との関係を構築し、そこから派生するさまざまな困りごとを吸い上げる対面のソリューションによって収益化を図るビジネスモデルだ。
クリエイティブは無限
ある観光協会では、地域観光の効果的なプロモーションを課題にしていた。西川社長は「困りごとを聞き、缶バッチやキーホルダー、クリアファイル、のぼり旗などのノベルティグッズをプロデュースした。自前で制作するには限界があった」といい、普段から顔をつきあわせた営業活動をしているからこそ得られる仕事をどんどん増やしている。
ニシカワのグループ全体の売上高は80億円規模。ガオカンパニー社の買収とネクスメディア社の牽引により新たな成長が見込める。西川社長は「印刷物は需要と供給のバランスによって成り立つ。しかし情報加工能力によって生み出されるクリエイティブは無限だ」と「印刷+アルファ」の新事業により情報加工業としての可能性を模索する。
▽住所=東京都東大和市高木3-351-1▽社長=西川誠一氏▽創業=1948年9月▽売上高=45億4000万円(2017年9月期)>