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「最終的に車体製造の受託を目指す」(船井電機社長)

船越秀明社長インタビュー。テレビ事業は厳しい環境続く
「最終的に車体製造の受託を目指す」(船井電機社長)

船越秀明社長

 船井電機は主力事業の米国向け液晶テレビの価格下落に加え、中核部材である液晶パネルの調達価格が高止まりし厳しい事業環境が続く。2017年6月にヤマダ電機と組み液晶テレビの販売をはじめ、同11月には電気自動車(EV)ベンチャーのFOMM(フォム、川崎市幸区)に出資。船越秀明社長は「最終的に車体製造の受託を目指す」など、経営多角化の基盤づくりを進める。起死回生の一手になるか。船越社長に聞いた。

 ―いつまでも液晶テレビに頼るつもりはないと公言しています。
 「この秋にもタイで内装用の樹脂部品を生産し、FOMMに供給する。当社の量産技術が、FOMMの事業拡大に貢献できる部分が大いにあると考えている。まとまった売り上げになるには2年程度かかる。最終的に車体製造の受託を目指す」

 ―米国の液晶テレビは販売台数が伸びているものの、営業損益は赤字が続きます。
 「中国だけで1億台超の液晶テレビを生産する能力がある一方、米国と中国を合わせた17年の販売総数は約9500万台。供給過剰がたたり、信じられない安さでテレビが売られている。18年に入り(コスト高だった)パネル価格は下落した。米国は損益均衡になればいい。日本などで利益を出す」

 ―ヤマダ電機と組み、液晶テレビの独占販売を始めて1年近くたちます。手応えは。
 「高精細のフルハイビジョン(HD)テレビは想定以上に売れているが、(フルHDの4倍の解像度がある)4Kテレビは目標に届いていない。そこで18年夏モデルは、手頃な価格の4Kを増やす。この領域は国内企業が手薄。事業自体は初年度から黒字を見込む」

 ―18年夏モデルは有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)テレビも投じます。
 「額縁を薄くし、映像が浮き出て見えるテレビとなる予定だ。レコーダーを内蔵しているにもかかわらず、テレビの薄さも他社と遜色ない。技術力の高さを示す」
日刊工業新聞2018年5月10日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
18年3月期連結決算は、営業損益が7期連続の赤字を予想。EV事業の利益貢献は早くて21年3月期。それまで液晶テレビが利益の柱だ。カギは日本市場。船越社長は「日本のテレビは世界的にみると高い。いずれ価格下落の波が来る」と指摘。値崩れする前に4Kテレビといった付加価値の高い製品で稼ぐ体質にしたいところだ。 (日刊工業新聞社大阪支社・平岡乾)

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