九州インバウンド需要の掘り起こし、ラグビーW杯でトライ

欧州・大洋州の富裕層を開拓

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地域にレガシーを残せる大会になるか(昨年9月、1万8000人以上の観客を集めたトップリーグの試合=大分県提供)
 ラグビーワールドカップ(RWC)2019日本大会の開催が来年に迫っている。五輪と異なり全国12都市で開催されることから、地方への波及効果に対する期待は大きい。3県が開催地となる九州でも欧州やオセアニアからの観光客を見込む。それらの地域から九州への観光は従来少なく、新たなインバウンド(訪日外国人)需要を掘り起こして地域活性化につなげられるかが注目される。

 大会は19年9月の開幕から1カ月半近くに及ぶ。各チームの試合間隔は3―10日ほど空くため各国からのサポーターの長期滞在が予想され、その直接的な経済効果のほか開催地周辺の観光需要も見込まれる。ラグビー人気が高い欧州やオセアニアからの観光客は現在の訪日客に占める割合が低い。W杯は各自治体にとって地域をPRする絶好のチャンスだ。

 九州では福岡、熊本、大分の3会場で10カードが組まれた。九州観光推進機構(福岡市中央区)は開催地の3県と連携し、欧米などに向けた観光プロモーションを強化。観光情報を紹介する多言語サイトを開設したほか、各国の旅行代理店と連携した旅行商品の造成、海外メディアの招聘(しょうへい)などを進める。

強豪試合の大分


 3会場のうち最も盛り上がるのが大分県だ。スタジアムの収容人員が多いこともあり、世界ランキング1位のニュージーランド代表の試合のほか強豪国の激突が予想される準々決勝2試合を含む5試合が開催される。

 「大分にどういうレガシー(遺産)を残せるか」と言うのはラグビーワールドカップ2019大分県推進委員会の会長を務める広瀬勝貞大分県知事。「インバウンドのお客さんが増えつつあるが、現在はアジアが中心。これを欧州、オセアニアへと広げていくことを念頭に準備を進める」と意気込む。RWCをきっかけに、20年東京五輪などの再来日の際に大分に来る“リピーター”の獲得につなげたい考えだ。

飲食増強の福岡


 若年層を中心にラグビー競技が盛んな福岡県。この地で機運醸成に取り組んでいるのがラグビーワールドカップ2019福岡開催推進委員会だ。同県や福岡市、県商工会議所連合会などで構成する。福岡での試合会場は都心部と近いのが特徴。観戦後の飲食は、海外のファンにとってラグビー文化の一部。サポーターの受け入れは大会の盛り上げの重要な要素となるため、「観光業者や飲食業者への周知にも今後取り組む」(同委員会)。

復興PRの熊本


 2試合が組まれている熊本県では、RWC開催後に「2019女子ハンドボール世界選手権大会」がある。二つの国際的なスポーツ大会開催を控え、英国やフランス、豪州、ニュージーランドなどをターゲットにして誘客に取り組む。「世界各国からのお客さまに対して県民総出での“おもてなし”でお迎えする準備を推進している」(熊本国際スポーツ大会推進事務局)。

 観光資源である熊本城の復旧工事については、RWCから東京五輪にかけて、多数の観光客が訪れることを想定。19年秋までには天守閣の外観や石垣の復旧工事を完了したいとしている。

キャンプの宮崎


 開催地以外でRWCの恩恵を受けそうなのがキャンプ地だ。公認キャンプ地に選定された宮崎県では、元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏が率いる強豪イングランドがキャンプを行う。18年度に「スポーツランド推進室」を新設するなど、同県はスポーツキャンプ誘致による地域の活性化に積極的だ。井手義哉商工観光労働部長は「プロ野球をはじめとして、キャンプ地・宮崎は地域の大きな特色。東京五輪も見据えて伸ばしていきたい」と話す。
宮崎県は強豪イングランドのキャンプ誘致を実現(宮崎県提供)

日刊工業新聞2018年5月2日

COMMENT

 長期滞在する富裕層向けの観光メニューの充実など、残された時間の中で取り組むべき課題は多い。RWCに向けた取り組みの成否は、20年五輪、さらにその後のインバウンド市場を左右することにもなりそうだ。 (日刊工業新聞社大分支局長・宗健一郎)

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