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自動車メーカー、「カーシェア」でとにかく仲間が欲しい!

次は大市場「中国」
自動車メーカー、「カーシェア」でとにかく仲間が欲しい!

日産とDeNAが実施した配車サービス実験で使った自動運転車とスマホアプリ画面

 「新しい事業領域では、専門性を持つパートナーとの協力が将来の競争力確保への大きなポイントになる」。日産自動車の西川広人社長は、新たな事業の柱つくりのための、パートナー戦略の重要性を強調する。

 自動運転やコネクテッドなど次世代技術の開発が進む。完成車メーカーは本業の車作りに加え、車両を使ったモビリティー(移動性)サービス領域に踏み出そうとしている。必要な技術やサービス基盤を持つ企業であれば、業界や企業規模を問わず積極的に連携する動きが広がる。

 日産はディー・エヌ・エー(DeNA)と共同で、無人の自動運転車を使った配車サービスを開発する。3月には実証実験を横浜市のみなとみらい地区で実施した。同サービスは専用アプリケーションで乗降地を指定できるほか、人工知能(AI)が推奨した場所や店舗からも行き先を選べる。車内では周辺の観光情報や店舗のクーポンの表示など、移動にとどまらないサービスを目指す。

 日産は2022年までに、無人運転車を使った配車サービスへの参入を計画する。西川社長は今回の実証実験を「技術革新の先にある『新しいモビリティサービス』となる新事業領域への大きなステップ」と位置づける。

 「中国ではすごい勢いでカーシェアが伸びている。我々もその流れに乗り遅れないようにせねば」。ホンダの倉石誠司副社長は、中国のカーシェア市場の成長に目を見張る。ホンダは2月に中国のリーチスター(北京市)に10%出資し、現地でカーシェア事業に参入した。リーチスターは現地メーカーの電気自動車(EV)約200台を使い、中国8都市でサービスを展開している。

 中国本部長を務めるホンダの水野泰秀執行役員は「カーシェアの事業ノウハウを学びつつ、当社の車両も供給する」と出資の狙いを説く。18年内に中国に投入する小型スポーツ多目的車(SUV)仕様のEVもサービス車両にし、車の実販売にもつなげる。

 日産、仏ルノー、三菱自動車の3社連合も、中国配車アプリ大手の滴滴出行(ディーディーチューシン)と中国のカーシェア分野で提携する見通し。カーシェアの需要拡大が見込まれる中国市場を深耕する。

 シェアリング分野は海外勢が積極攻勢を掛ける。独ダイムラーは17年に米国カーシェアリング大手のトゥロに出資。米ゼネラル・モーターズ(GM)もライドシェア大手の米リフトに出資した。また独フォルクスワーゲン(VW)は年内に、専用EVを使ったライドシェアサービス「MOIA(モイア)」を始める計画だ。

 シェアリングサービスの普及に伴い、車の世界販売は将来、減少傾向に入ると予想される。完成車メーカーとして車作りのノウハウを生かしたサービスを展開できるかが、将来の収益力を左右することになりそうだ。
日刊工業新聞社2018年4月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
原価(コスト)の考え方がまったく異なる製造業とIT。事業収益をどう「シェア」していくのか。

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