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「MRJ」延期の中で三菱重工は次世代機の開発に動き出した!

注目すべきは名古屋に設置した「将来差別化技術開発チーム」
「MRJ」延期の中で三菱重工は次世代機の開発に動き出した!

2020年に納入を延期した「MRJ」

 三菱重工業は国産小型ジェット旅客機「MRJ」の5度目の納入延期を契機に、全社横断的にMRJの開発・営業に取り組む。子会社三菱航空機(愛知県豊山町)に任せていた状態から、本社主導の体制を強める。

 「(MRJの開発は)最終段階まで来ている」。23日に会見した三菱重工の宮永俊一社長はこう強調した。三菱重工は2016年11月に、MRJの開発を宮永社長直轄の体制とした。

 宮永社長が陣頭指揮を執ることで、迅速な意思決定と開発実行力を拡大。足元では小型ジェット機の開発を経験した外国人技術者の比率を約3割まで高め、設計変更や型式証明の取得に向けた取り組みを円滑に進める考え。
三菱重工の宮永社長


「世界水準の民間航空機を完成させる」(宮永社長)


 これまでの自前主義から脱却し、外部資源を有効活用することで開発を加速。宮永社長は「外国人エキスパートと日本人が一体となった世界水準の民間航空機を完成させる」と強調した。

 生みの苦しみが続くMRJだが、民間航空機市場は今後20年で機数で約2倍、年率4%の成長が見込める。「MRJの成功には長期的な事業性の確保が不可欠」と説明。長期開発育成型のビジネスで「三菱重工グループに適した事業領域」とMRJを位置づける。

 開発費の大幅な増加など、財務基盤への影響も大きな懸念となっている。当初約1800億円規模とされていた開発費はかなりの額まで膨らみ、「現在の額は言えない」とした上で、「足元からさらに3―4割は増える」(宮永社長)とした。

 ただ、開発完了に向けて開発費は今後2―3年でピークアウトする見通し。投資回収期間の長期化が見込まれるものの、開発費の増加が三菱重工グループの単年度損益に与える影響は限定的となりそう。開発の効率的推進やグループ全体の収益改善でカバーする。

 三菱重工は17年度から事業ドメインを現在の四つから三つへと再編する計画。現在、MRJ事業は、民間航空機の機体部品や造船などを手がける交通・輸送ドメインに属している。MRJ事業の損失分を好調だった機体部品事業で補う格好だった。ただ、新興国市場の減速などを受け、機体部品事業は足元で踊り場を迎えている。

 そこでドメイン再編後はMRJを安定収益が見込める防衛・宇宙事業に移管。増加する開発費の一部を防衛事業でカバーする戦略が透けて見える。
               


これ以上の延期はない


 「MRJの開発は7―8合目まで進んでいる」。三菱重工の宮永社長がそう強調するように、開発は佳境に入っている。今回の納期延期は、「最も安全な航空機を作る」(宮永社長)という目標に向けて慎重を期したと言える。三菱航空機の岸信夫副社長は「必要と考えられる項目は全て洗い出した」とこれ以上の延期はないとの考えを強調した。

 延期の原因は大きく二つ。一つ目は電子機器の配置の変更だ。落雷や床からの水漏れというリスクがあるため、電子機器の配置場所を見直す。二つ目はそれに伴い、機体全体で2万3000本以上あるという電線の配置も変えることだ。それらにより、型式証明の取得作業が遅れる。
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日刊工業新聞2017年1月24日「深層断面」から抜粋
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 MRJの延期理由や型式証明取得の難しさなどについては記事の通りでしょう。ただ今回の発表で注目したいのは、名古屋に設置した「将来差別化技術開発チーム」なる組織です。これはMRJ開発の途中段階ながら、すでに三菱重工が次世代(2030年代と思われます)の民間航空機開発に向けて動きだしたことを示しています。  民間航空機のビジネスは息の長い事業で、初期投資の回収には20年くらい時間がかかります。「作ればいい」というわけではないのです。機体の開発段階から、既に次世代機をどうするかを考えなければなりません。その意味で三菱重工はMRJだけではなく長期的な視野で民間航空機事業を捉えていると言えます。目先の納期遅れはもちろん残念ですが、むしろ「ゆっくりではあるが確実に前進している」という印象です。国産旅客機の夢はこれからも続きます!

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