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自動車業界へ転職したITエンジニア、8年で11倍も「文化になじめない」…

新技術に欠かせずメーカー間で争奪戦、入社後に戸惑い
 自動車業界に異業種からの転職者が増え続けている。人材あっせん会社のリクルートキャリアによると、異業種から自動車メーカーおよび自動車部品メーカーへの転職者数は2017年に09年の7倍以上に達した。特にITエンジニアは11倍を超える。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)開発を急ぐ車メーカーと、最先端の技術開発に携わりたい求職者との双方の思惑が一致していることが背景にある。

 自動運転技術の確立には、車の目となる画像認識アルゴリズムや、頭脳となる経路生成アルゴリズム、手足となる制御システムの開発が欠かせない。

 先端運転支援システム(ADAS)や車載カメラ・センサー、サイバーセキュリティー、半導体など、従来の車メーカーが主に携わっていた領域を超えるさまざまなテーマを研究開発する必要がある。コネクテッドカー(つながる車)の技術確立にもインフラや無線通信技術の開発が必要だ。

 業界ではすでに技術者の争奪戦が始まっている。トヨタ自動車はデンソー、アイシン精機と共同で自動運転技術の開発会社を都内に設立し、新規採用も含め1000人体制を目指すと表明。ホンダは社内の研究拠点と連携してコネクテッドカーや自動運転の開発を進める組織を立ち上げ、日産自動車はディー・エヌ・エー(DeNA)と自動運転車を使った配車サービスの実験を始めた。

 それぞれ自動運転やサービス開発の人員増強に動いている。リクルートキャリアの所寿紀シニアコンサルタントは「これらの技術に明るいITエンジニアの獲得競争はより激しくなる」と予測する。

 エンジニアにとっても自動車業界が魅力的に映っているようだ。自動運転車の頭脳部分の開発を志望して転職を決めたITエンジニアは「高速で状況を判断し、解析する」車特有の高難易度なシステム開発に携われる部分にひかれたという。「最先端技術に関われることや、自動車産業の社会に与えるインパクトの大きさなどから求職者が増えている」と所氏は分析する。

 IT系エンジニアの転職先に車を含む電機・機械業界に進む割合も、09年の7%から17年は12%と増えている。

 ただ、異業種に移ったITエンジニアの中には「仕事内容が想定と違っていた」「仕事の進め方が前職と異なっていた」「文化になじめない」など入社後に戸惑いを感じる人も少なくないという。今後も転職者の増加は予想されるため、「入社後に社内文化や仕事の進め方などをフォローアップするプログラムを作るなど、受け入れ態勢を整える必要がある」(所氏)と指摘する。
            

(文=山田諒)
日刊工業新聞2018年3月21日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 自分が自動車業界を担当していたのは06~08年。当時もECUの搭載数が増えソフトウエア量の爆発が注目されていた。ただトヨタの幹部でも半導体などに理解がある人はごく一握りだった。何より生産部門や機械系のエンジニアの地位がとても高い。デンソーがルネサスに追加出資するなど徐々に環境は変わってきていると思うが、究極的には内燃機関が無くなるくらいまでにならないと、本当のカルチャー変革は起こらないと感じる。

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