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クレジットカード納税、なぜ低調?

手数料引き下げを
 きょうは今年の確定申告の期限。ギリギリまで資料とにらめっこの方もいるかもしれない。とはいえ、この文章をお読み頂いているのはすでに作業を終え、ひと安心という方に違いない。還付があればいいが、納税が発生する方は、どんな納付方法を選んだろうか。

 昨年、国税の納付環境整備の一環としてクレジットカード納税が実現した。それから1年になるが、一般に認知されたとは言い難い。

 政府税制調査会の資料によると、2016年度のカード納税の利用実績は5万件で、納付件数全体の4407万件に占めるシェアはわずか0.1%だった。コンビニエンスストア納付の170万件、3.9%と比べても、利用率の低さが際立っている。

 ただカード納税が実現したのは昨年1月だから、年度末の3月まで3カ月足らずでしかない。17年度、すなわち今回の確定申告などで決まる税金の納付では「もっと利用されることを期待している」(国税庁)という。

 カード納税は、感覚的には通販サイト利用の延長線上にある。パソコンなどで指定されたウェブサイトにアクセスし、例えばショップ名「国税庁」と商品名「所得税」、金額(納税額)を指定して、クレジットカードで決済する。実際には納付番号などがベースとなるから、通販よりややハードルは高い。

 この方式には、他の納税方法にはないメリットがある。第一に、決済時に納付は完了するもの納税者が現金を用意するのはカード代金の引き落とし時でいい。つまり1カ月ほど資金確保の余裕が出来る。第二に、納税によってカード利用時のポイントやマイルが還元される。これは高額納税者にとって馬鹿にならない額になる。

 ただ国税庁の側も甘くはない。カード納税は、他の納税方法とは違って手数料がかかる。その額は納税額の0.7%。1万円に対して70円だ。クレジットカードのポイント還元が0.5-1%程度であることを考えると、それを相殺する水準に設定されたように思える。

 国税庁は、この手数料を一切、受け取らない。国からカード納税の決済代行を受託した企業がシステム開発や事務処理、カード利用者の焦げ付き(未払い)対策などの費用に充てる仕組み。国税庁の立場では、カード納税はあくまで納税者の利便性向上というサービスであり、その代価は利用者自身が支払うべきだという考えだ。

 それは理解できるが、現在の手数料水準は最低水準なのかという疑問は残る。システム開発の初期投資は重いが、長く使えば安くなる。

 その他の経費も、納税額が増えれば抑えられるはず。決済代行の受託企業は5年に一度、競争入札で決まるというから、いずれ手数料が安くなることを期待したい。
(文=加藤正史)
日刊工業新聞2018年3月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
地方税で先行的にカード納税を導入した自治体の中には、手数料をとらないケースもある。徴税業務の負担が軽減できるからだ。国税庁も同様に、カード納税を普及させることで徴収部門の必要人員を減らしてもらいたい。それが納税分野のイノベーションになるだろう。

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