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さまざまな“お金”が競い合う、キャッシュレス日本の夜明け
現金優勢の日本、風穴を開けるのは仮想通貨?電子マネー?
フィンテックがお金の姿を変えつつある。すでにクレジットカードや電子マネーが普及し、現金のやり取りを伴わない決済はすでに日常的になった。さらにブロックチェーン技術をベースにした仮想通貨も登場し、決済手段は多様化する一方だ。政府はキャッシュレス決済の拡大を打ち出し、6月に発表した「未来投資戦略2017」では、10年後に4割の達成を目標に据える。財布を持ち歩かないでも何の不便もない世界は目前に迫っている。未来のお金はどのような姿になっていくのだろうか。
まだまだ店舗数は少ないものの、仮想通貨であるビットコインはレストランなどを中心に決済に利用できるようになった。増え続ける訪日外国人観光客を狙って、最近ではビックカメラのような量販店でも対応が進む。ネット上でデータをやり取りするだけのビットコインが、あたかも普通のお金のように使われる。
仮想通貨はビットコインだけではなく、アルトコインと呼ばれるビットコイン以外の仮想通貨も続々と誕生しており、すでに何百種類にも達する。
WiL共同創業者兼CEOの伊佐山元さんが「まだアーリーアダプターが手を出している段階。IT経営者が投資して儲かった話をしているぐらいで、ものすごく少ない人間が小さな祭りで盛り上がっている」と指摘するように、日本ではまだ仮想通貨は投機の対象にすぎない。
海外でも、特に自国通貨に不安があるところでは普及しつつある。たとえばフィリピンの出稼ぎ労働者が自国に送金する場合はビットコインが多く使われているとされる。
ベネズエラのようなハイパーインフレの国では、自宅でマイニングしながら稼いだビットコインを使ってアマゾンで買い物し自国通貨に頼らずに生活する例もあるようだ。
もちろんキャッシュレス決済に使われるのは仮想通貨だけではない。すでに日本では数多くの電子マネーが実用化され、世界の中でも電子マネー大国である。
JR東日本の「Suica」や、首都圏の私鉄などによる「PASMO」を始めとした交通系のプリペイドカードのほか、楽天の「楽天Edy」、流通系の「nanaco」や「WAON」などがなじみ深い。これらはすべて、ソニーが開発した近距離無線による非接触ICカード「FeliCa」を利用したものだ。
楽天Edy(旧Edy)がサービスを開始したのは2001年。交通系カードも切符代わりだけでなく、多くの店舗での買い物に使えるようになっており、財布に複数枚の電子マネーカードを持つ人も少なくないだろう。
さらに2004年にはおサイフケータイのサービスが始まり、ICカード型の電子マネーのほか、ポストペイ方式の決済サービスであるNTTドコモの「iD」やジェーシービー「QUICPay」も登場。Felicaのような近距離無線通信機能を内蔵した携帯電話やスマートフォンで自動改札を通過したり、買い物をしたりする姿も当たり前のように目にするようになった。
最近では米アップルの「Apple Pay」やVISAの「Visa payWave」といった海外の電子マネーも登場している。
とはいえ日本でのキャッシュレス決済比率はいまだ18%にすぎず、41%の米国、55%の中国、54%の韓国(すべて2015年)をはるかに下回る。クレジットカードも保有枚数こそ多いが利用頻度は国際的に見て低水準。それがキャッシュレス決済の低さにつながっている。
日本銀行のレポートによると、スマホを使った店頭での決済(モバイル決済)を利用している割合も、日本ではわずか6%にすぎないという。
それでもスマホの普及はキャッシュレス社会を促進していくだろう。最近ではコードを読み取ることで決済ができる電子マネーも登場している。
中国で普及するモバイル決済「アリペイ」が有名だが、国内でもLINEがスタートした「LINE Pay」が2016年にLINE Payカードを発行するとともに、実店舗での決済を本格化。コンビニエンスストアや銀行口座などからチャージする仕組みで、提携先のJCBの取扱店舗で使えるため、国内外で3000万店舗以上が対応する。
LINE Pay加盟店ではスマホに表示したQRコードやバーコードをレジで読み取ることで支払いが可能だ。実際にコードで決済できるのはローソンやツルハグループなど一部にとどまるが、「今年、来年にかけて開拓に力を入れていく。当面は国内100万店が目標」とLINE Pay事業戦略マネージャーの佐藤良男さんは話す。
キャッシュレス化が進めば、データ化されたお金の流れを使った新たなサービスが次々と登場するだろう。すでにクラウドベースの家計簿ソフトではクレジットカードや電子マネーと連携し収入や支出の管理が自動化でき、決済の端数を自動的に投資に回すサービスもスタートしている。
LINE Payのように送金サービスに対応した電子マネーも登場している。買い物から投資、家計管理、ローンの与信、個人間でのお金のやり取りまで、お金にまつわることがすべてスマホ上で完結する日も遠くはない。
依然として現金決済が多い日本では、どのキャッシュレス決済もまだ圧倒的な優位には立っていない。そもそもクレジットカードも、日本では保有枚数こそ多いが利用頻度は国際的に見て低水準。それがキャッシュレス決済の低さにつながっている。
その中で何が主導権を握るのか。MUFGコインやJコインといったメガバンクが主導する仮想通貨も登場し、さまざまな“お金”が競い合う。
「どれが使いやすいかはマーケットが決める。フィンテックで大切なのはUX(ユーザー体験)で、どれだけ顧客に満足度を与えられるか。単なる囲い込みでは成功しない」と公認会計士の柿澤仁さんは指摘する。
ビットコインで買い物も
まだまだ店舗数は少ないものの、仮想通貨であるビットコインはレストランなどを中心に決済に利用できるようになった。増え続ける訪日外国人観光客を狙って、最近ではビックカメラのような量販店でも対応が進む。ネット上でデータをやり取りするだけのビットコインが、あたかも普通のお金のように使われる。
仮想通貨はビットコインだけではなく、アルトコインと呼ばれるビットコイン以外の仮想通貨も続々と誕生しており、すでに何百種類にも達する。
WiL共同創業者兼CEOの伊佐山元さんが「まだアーリーアダプターが手を出している段階。IT経営者が投資して儲かった話をしているぐらいで、ものすごく少ない人間が小さな祭りで盛り上がっている」と指摘するように、日本ではまだ仮想通貨は投機の対象にすぎない。
海外でも、特に自国通貨に不安があるところでは普及しつつある。たとえばフィリピンの出稼ぎ労働者が自国に送金する場合はビットコインが多く使われているとされる。
ベネズエラのようなハイパーインフレの国では、自宅でマイニングしながら稼いだビットコインを使ってアマゾンで買い物し自国通貨に頼らずに生活する例もあるようだ。
日本は電子マネー大国
もちろんキャッシュレス決済に使われるのは仮想通貨だけではない。すでに日本では数多くの電子マネーが実用化され、世界の中でも電子マネー大国である。
JR東日本の「Suica」や、首都圏の私鉄などによる「PASMO」を始めとした交通系のプリペイドカードのほか、楽天の「楽天Edy」、流通系の「nanaco」や「WAON」などがなじみ深い。これらはすべて、ソニーが開発した近距離無線による非接触ICカード「FeliCa」を利用したものだ。
楽天Edy(旧Edy)がサービスを開始したのは2001年。交通系カードも切符代わりだけでなく、多くの店舗での買い物に使えるようになっており、財布に複数枚の電子マネーカードを持つ人も少なくないだろう。
さらに2004年にはおサイフケータイのサービスが始まり、ICカード型の電子マネーのほか、ポストペイ方式の決済サービスであるNTTドコモの「iD」やジェーシービー「QUICPay」も登場。Felicaのような近距離無線通信機能を内蔵した携帯電話やスマートフォンで自動改札を通過したり、買い物をしたりする姿も当たり前のように目にするようになった。
最近では米アップルの「Apple Pay」やVISAの「Visa payWave」といった海外の電子マネーも登場している。
とはいえ日本でのキャッシュレス決済比率はいまだ18%にすぎず、41%の米国、55%の中国、54%の韓国(すべて2015年)をはるかに下回る。クレジットカードも保有枚数こそ多いが利用頻度は国際的に見て低水準。それがキャッシュレス決済の低さにつながっている。
日本銀行のレポートによると、スマホを使った店頭での決済(モバイル決済)を利用している割合も、日本ではわずか6%にすぎないという。
スマホがキャッシュレス社会を促進
それでもスマホの普及はキャッシュレス社会を促進していくだろう。最近ではコードを読み取ることで決済ができる電子マネーも登場している。
中国で普及するモバイル決済「アリペイ」が有名だが、国内でもLINEがスタートした「LINE Pay」が2016年にLINE Payカードを発行するとともに、実店舗での決済を本格化。コンビニエンスストアや銀行口座などからチャージする仕組みで、提携先のJCBの取扱店舗で使えるため、国内外で3000万店舗以上が対応する。
LINE Pay加盟店ではスマホに表示したQRコードやバーコードをレジで読み取ることで支払いが可能だ。実際にコードで決済できるのはローソンやツルハグループなど一部にとどまるが、「今年、来年にかけて開拓に力を入れていく。当面は国内100万店が目標」とLINE Pay事業戦略マネージャーの佐藤良男さんは話す。
キャッシュレス化が進めば、データ化されたお金の流れを使った新たなサービスが次々と登場するだろう。すでにクラウドベースの家計簿ソフトではクレジットカードや電子マネーと連携し収入や支出の管理が自動化でき、決済の端数を自動的に投資に回すサービスもスタートしている。
LINE Payのように送金サービスに対応した電子マネーも登場している。買い物から投資、家計管理、ローンの与信、個人間でのお金のやり取りまで、お金にまつわることがすべてスマホ上で完結する日も遠くはない。
UX(ユーザー体験)がカギ
依然として現金決済が多い日本では、どのキャッシュレス決済もまだ圧倒的な優位には立っていない。そもそもクレジットカードも、日本では保有枚数こそ多いが利用頻度は国際的に見て低水準。それがキャッシュレス決済の低さにつながっている。
その中で何が主導権を握るのか。MUFGコインやJコインといったメガバンクが主導する仮想通貨も登場し、さまざまな“お金”が競い合う。
「どれが使いやすいかはマーケットが決める。フィンテックで大切なのはUX(ユーザー体験)で、どれだけ顧客に満足度を与えられるか。単なる囲い込みでは成功しない」と公認会計士の柿澤仁さんは指摘する。