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最先端の青果市場「ベジフルスタジアム」、“低温物流”の秘密

効率を追求した施設設計で整備率84%、取引先も拡大!
最先端の青果市場「ベジフルスタジアム」、“低温物流”の秘密

効率を求めた入荷用道路。10トントラック22台分の荷降ろしができる

 福岡大同青果(福岡市東区、丸小野光正社長)は、福岡都市圏向けを中心に野菜や果物の卸売業を展開している。同社の拠点であり、全国から青果物が集まるのが、福岡市東区の福岡市中央卸売市場「ベジフルスタジアム」。2016年2月にオープンし、最先端の市場として注目されている。

 野菜や果物に求められる消費者ニーズの一つが、鮮度。同社は施設のうち約1万平方メートル部分で、5―15度Cの一定温度に保つコールドチェーン(低温物流)を実施。この定温卸売場実現により、取引のなかった産地から、同市場に出荷したいという話も出てきた。丸小野社長は「生産量や生産地が減る中で、取扱品目が増えている」とこうした取り組みに手応えを感じている。

 青果市場では通常、大量に商品を動かす機能が優先され、コールドチェーンへの対応は進んでいないという。ベジフルスタジアムの低温物流設備の整備率は84%と高い割合を実現している。

 この高い整備率を実現できた理由の一つは、効率を追求した施設設計にある。10トントラック22台分の動線を確保した入荷用道路を設置。荷降ろし後の青果物は、低温庫や仲卸業者の所に真っすぐ移動する。

 スムーズな出荷は、トラック運転手の待ち時間短縮につながる。同社経営企画室の野見山稔部長は「長時間労働の是正につながっている」と話す。物流業界が抱える課題への対応にも活用されている。

 19年1月には、市場の隣接地に約34億円を投じて建設する物流センターが稼働する。丸小野社長は「将来を見据えてつくる夢のあるセンター」と意気込む。整備計画は「地域経済牽引(けんいん)事業計画」として、福岡県から承認された。

 同センターでは、青果物の袋詰めやパック詰めの実施を予定。従来、これらの作業は生産農家が行うが、人手不足で大きな負担になっている。代行することで、農家に生産に集中できる環境を提供する狙いだ。今後は、輸出先として人気のあるシンガポールや台湾以外への輸出にも注力する構えだ。
(文=西部・増重直樹)
日刊工業新聞2017年2月28日
土田智憲
土田智憲 Tsuchida Tomonori かねひろ
 包装資材の分野でも、コールドチェーンを見据えた、最適温度帯包装という考え方が出てき始めている。冷凍、冷蔵、常温、ホットの4温度帯に対応した、より適した包装資材を用いて、商品品質を保持しようという取り組みである。青果物では、この物流での品質保持が製品の価値を左右する。この記事でも取り上げられているように、地方青果物の取引先の拡大を実現できる可能性が大いにある。

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