自治体の国際競争力はグローバル人材が握る。神戸市長インタビュー

「神戸市民の伝統として外国人市民と一緒に地域社会を形成してきた」

 都市間での外資系企業の誘致合戦は、ますます激しくなってきている。各国政府が対内直接投資誘致に力を入れる中、企業誘致に積極的に取り組んでいる都市も増えてきている。その中でどのように外資系企業にアプローチしていくのか。昨年2期目の当選を果たした神戸市長の久元喜造さんに神戸市の取り組みについて語ってもらった。

都市が圏域経済を牽引


 ―都市間で外資系企業の誘致合戦が激しくなっています。神戸市にとって、外資系企業を誘致することはどういった意味をもつのでしょうか。
 「現在はグローバル経済であり、都市がそれぞれの圏域経済を牽引する時代だと思います。なぜなら都市には優れた人材が集まってくるからです。特にアジアパシフィックエリアでは、優れた人材を確保するために大都市がしのぎを削っています。人材が都市を成長させ、都市の成長が国民経済、そしてグローバル経済を成長させています。グローバル社会で活躍できる人材をいかに獲得するかという見地に立てば、外資系企業の誘致は避けて通れません。優れた人材や情報をもち、さまざまなマーケットの動きも熟知している外資系企業は、非常に重要なアクターです。外資系企業を誘致することで、優れた人材が集まり、神戸の経済を成長させることができます」

 ―神戸市は昔から外資系企業が多く立地していますね。どういった役割を果たしているのでしょうか。
 「神戸市は外資系企業とは緊密な関係を築いています。そこで感じるのは、多くの外資系企業は好奇心が旺盛ということです。神戸という都市や地域に対し、我々が気づかない視点で見てくれています。神戸企業・地域・市民・行政とともに、新しいことにチャレンジしたいと思っている方が外資系企業にはたくさんいて、非常に大きな刺激になっています。人材育成分野では、神戸市の職員を外資系企業に派遣したり、外資系企業の幹部OBに神戸市の人材育成のアドバイザーになってもらったりしています。また、神戸市が展開している医療分野では、神戸市と連携して認知症研究などに取り組んでいる企業もあります。このように、外資系企業の存在が神戸の人材の厚みを増し、神戸の企業・市民・行政を活性化させてくれているのです」

成長可能性を発掘


 ―ただ、神戸に限らず、海外から日本への直接投資は伸びてはいるものの、まだ高い水準とは言えません。何が課題として考えられるでしょうか。
 「それを考えるには、日本企業が海外に投資をする時に、何に着目するのかを考えることが有力なヒントになります。まず重要になるのが、成長可能性です。例えば、安倍内閣は大きな可能性をもっているアフリカへの投資に非常に力を入れています。これについては、神戸としても国の支援を受けながらぜひ進めていきたいと考えています。それから、投資がビジネスとして成功するかどうかのカギはやはり人材です。AIやロボットなどに代表されるように、専門的知識を持つ人材の存在は不可欠であり、リーダーにはコミュニケーション力が求められます。他にも、政治や経済の安定性があり、取引に関する法整備が、海外企業に対しても分かりやすく透明で公平にされているかということも大事です」

 「これを日本への投資として考えたときに、人口減少社会の我が国の成長可能性はアフリカと同じではありませんが、高齢化が進む中で、シニア世代の健康市場では十分に成長の可能性があります。神戸市が医療産業都市を展開しているのも、まさにそこに着目したからです。こうした成長可能性をいかに発掘していくかが重要だと考えています。また、人材については、日本の初等・中等教育は国際的にトップクラスにあります。ただ、コミュニケーションについては課題がありますので、できるだけ多言語、特に英語に対応できる人材を育成する必要があります。それから、諸制度の透明性については、我が国では極めて公正で民主的に運営されている一方で、長年にわたる慣行で合理性を欠き、国民に、ましてや外国企業に理解されにくいものになっており、内外を問わない規制改革を進める必要があります」

市民性も強みの一つ


 ―外国企業などに向けた神戸の強みは何でしょう?
 「我が国でもっとも早い時期に、海外に門戸を開いて国際交流・貿易の経験や実績を積んできたことです。伝統的なものづくり産業も発達し、海外との交流や提携も進んでいます。また、神戸は震災で港湾が大きな被害を受けましたが、それを機にまったくのゼロからスタートした医療産業都市も着実に成長を遂げています。また、市民性も強みの一つです。神戸市内には24の大学があり、多くの海外研究者が学んでいるなど、国際的な人材が豊富で、歴史的にもさまざまな国籍・文化的背景を持った人たちが一緒に暮らしてきました。開港後に外国人居留地だけでなく、日本人と外国人が一緒に暮らす雑居地がかなり広くとられ、神戸市民の伝統として外国人市民と一緒に地域社会を形成してきました」

 ―それでも、都市力を考えると首都圏への人口流出は課題ですよね。
 「人口流出をいかに食い止めるかは、都市としての魅力をどう高めていくのかにつきます。神戸が着目すべきは、やはり国際港湾都市としてのアプローチです。海外と直接つながり、さまざまな人材を受け入れて、神戸の発展につなげていく視点が必要です。米国のシード投資ファンド「500 Startups」との提携もその一つです。ここでは、必ずしも神戸で起業して働いていただくことが主目的ではなく、海外からグローバルな人材を呼び込み、神戸をスプリングボードにして世界で活躍してもらうことで、都市の存在価値を高めていきたいです。人材を呼び込み、育て、輩出し、その人材が後に続く人材をまた育成する。そういうシステムができていくことが理想的ですね」

医療系ベンチャーにも期待


 ―現在も神戸の医療産業都市は着実に成長していますが、これは神戸の海外展開のひな形となるのでしょうか?
 「医療産業都市は震災後にゼロからスタートしました。(立地するポートアイランド第2期は)当時はほとんど更地でしたが、現在では理化学研究所などの研究機関、先端病院群、大学、医療関連企業などが340社を超えて立地しています。そしてこれからは、こうした企業・団体が一緒にいることによるシナジー効果をもっと発揮するために、それらをコーディネートする組織として、4月に『神戸医療産業都市推進機構』を設置します。この組織では、神戸医療産業都市を海外に発信することも大きなミッションであり、海外の医療クラスターとの交流を進め、共同研究やさまざまなビジネスチャンスの拡大につなげていくことができればと思っています。さらに、医療産業都市に着目した医療系ベンチャーが、500 Startupsの仕組みを使って、ビジネスを立ち上げるという動きも広がってほしいですね。神戸という地で、大いにチャレンジしてもらいたいです」
神戸市長の久元喜造さん

【略歴】
久元喜造(ひさもと・きぞう)1976年東京大学法学部卒、自治省(現・総務省)に入省。2005年総務省大臣官房審議官、2006年同自治行政局選挙部長、2008年同自治行政局長、2011年同自治大学長兼務、2012年神戸市副市長、2013年神戸市長、2017年10月に再選を果たす。



行政組織でも海外人材が活躍


 神戸市では、エチオピアの元国家公務員であるハサン・ケデュール・エドリスさんが2017年4月からアフリカ神戸リエゾンオフィサーに就任し、アフリカとの経済交流で活躍する。「神戸の企業とともにビジネスミッションとしてルワンダを訪問するなど、同国のICT産業と連携を進めています」と話す。

 また、2015年に広報専門官に就任したのは、英国人のルイーズ・デンディさん。国内外に神戸市の市政情報や魅力を発信している。市内在住、在勤、在学の外国人を「KOBE PRアンバサダー」に任命し、それぞれのネットワークで神戸の魅力を発信する事業も立ち上げた。

 1年目の2016年度は19名、2017年度は25名を任命。「アンバサダーがSNSを通じて、英語だけでなく母国語でも神戸の魅力を発信することで、彼らの知人・友人が神戸に興味を持って実際に訪れてくれるなど効果が出始めています」とルイーズ・デンディさん。

 神戸の魅力については「都市のイメージが強いが、都心から近い距離でスイートコーンやイチゴ狩りなどの農業体験もできる。京都や大阪にはない上質感や歴史的なものと近代的なものを併せ持った、神戸ならではの魅力を発信していきたい」と意気込む。

 地方行政組織の国際化の取り組みも、地域の、ひいては日本の「内なる国際化」を進める一助となるだろう。

尾本 憲由

尾本 憲由
03月01日
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もはや東京のコピーでは魅力ある都市とはなりえない。グローバルでの都市間競争が激しくなる中、一頭地を抜くには並々ならない実力が必要だろう。そこで行政が果たせる役割は何なのか。案外、小さくはないように思える。

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