日立社長に「レオナルド国際賞」、イタリアのビジネスに貢献
鉄道事業への投資を大きく評価
日立製作所は26日、イタリアで経済や芸術分野などで同国との関係強化に貢献したビジネスリーダーを表彰する「レオナルド国際賞」を東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)が受賞したと発表した。東原氏は2014年の社長兼CEO就任以来、同国で鉄道事業を中心に投資や事業展開を積極化しており、その功績が認められた。
レオナルド国際賞はイタリア政府や財界関係者で構成する委員会が受賞者を選定し授与する。同国で開かれた受賞式に出席した東原社長は「日立はイタリアをグローバル事業を拡大する上で重要な市場と考えている。これまでの取り組みを評価いただき大変光栄に思う」とコメントした。
日立は81年に電子部品や家電事業で同国に参入し、現在は鉄道を主力に電力・エネルギー、ヘルスケアなど幅広く事業展開する。現在、約1500億円の売上高を20年度に2000億円に引き上げる目標を掲げる。 レオナルド国際賞は電機業界では09年にシャープ元会長・社長の町田勝彦氏、15年に米ゼネラル・エレクトリック(GE)の前CEOのジェフ・イメルト氏が受賞している。
16日に営業走行を開始した英国の都市間高速鉄道計画(IEP)の新車両。初日から車内の空調から水が漏れるなど複数のトラブルが発生、運行にも遅延が生じた。一日中、情報収集に追われた鉄道部門の正井健太郎最高執行責任者(COO)。翌17日にはイベントで訪れたイタリア・ピストイア工場で「ご迷惑、ご心配をおかけした」と謝罪。原因について、運行システムの起動時の設定ミスだったことを明らかにした。
空調の部品組み付けは英国の工場で行われたという。“日本品質”は受注の訴求ポイントだっただけに、これ以上のイメージダウンは避けたいところだ。神戸製鋼所の一件で日本の品質があらためて世界から注目されているが、データ改ざんと品質の問題を混同してはいけない。もともと日本メーカーは過剰な品質や機能を追求する傾向があり、適正な品質を持った製品競争力がなければ世界で戦えない。
日立の鉄道部門は日本、英国、そして買収したイタリア企業によって一気にオペレーションがグローバル化した。そして今、日本に偏っていた機能を改め、「世界基準」探しが始まっている。
ピストイア工場は買収した旧アンサルドブレダの主力拠点。イタリア国鉄向けの超高速車両や地下鉄、さらには2018年から運行を始める英国IEPの別路線の車両も輸出する。もともとイタリアは、職人の技能に対する誇りと尊敬を抱く「クラフトマンシップ」が根付いている。正井COOも工場の潜在力を高く評価し「効率的なモノづくりをしており、欧州向け車両のプラットフォームを開発していく。ピストイアは成長戦略の柱だ」と話す。
日立は鉄道での欧州進出にあたり、初期からアルミ車両にこだわった。アルミで威力を発揮したのが独自の摩擦撹拌接合技術「FSW」。軽量化と溶接面の外観が美しくなるのが特徴だ。2年後をめどにピストイアでもFSWをスタートさせる計画。現在、日本の笠戸事業所(山口県下松市)で使っている設備と同じものを導入する準備を進めている。
ただ、これは日本基準を世界に広げていくという意図ではない。日本はJRグループを中心に鉄道事業者の影響力が強く、むしろ“異質な市場”。海外のライバルに比べて収益性が低いのは、日立に長くはびこる工場プロフィットセンター(収益責任を持つ組織)に起因したサプライチェーンの弱さだ。正井COOは「余分なコストを省いていくため、日本、英国、イタリアで共通の生産データシステムの構築を目指している」という。
そして鉄道部門では生産にとどまらず、さらに大胆な改革を模索している。現在、工場や地域別に動いている組織を、調達、生産、品質、企画・営業など「機能別」に再編するプランだ。「その時の基準は日本ではなく、むしろイタリアに寄せていくことになる」(日立レールヨーロッパ幹部)。独シーメンスと仏アルストムが事業統合に動き出したことで、「10年後に日立が生き残るためには避けて通れない道」(同)だろう。
成功を収めるには、よりシンプルな組織が求められる。ローカルチームへ権限委譲し、いかに最高の人材を雇い入れることができるかは、日立共通の課題。東原敏昭社長は16年、ピストイア工場を訪問し、従業員と膝詰めの対話集会を開いた。グローバルビジネスの現実は、日々の現場で繰り広げられている。
レオナルド国際賞はイタリア政府や財界関係者で構成する委員会が受賞者を選定し授与する。同国で開かれた受賞式に出席した東原社長は「日立はイタリアをグローバル事業を拡大する上で重要な市場と考えている。これまでの取り組みを評価いただき大変光栄に思う」とコメントした。
日立は81年に電子部品や家電事業で同国に参入し、現在は鉄道を主力に電力・エネルギー、ヘルスケアなど幅広く事業展開する。現在、約1500億円の売上高を20年度に2000億円に引き上げる目標を掲げる。 レオナルド国際賞は電機業界では09年にシャープ元会長・社長の町田勝彦氏、15年に米ゼネラル・エレクトリック(GE)の前CEOのジェフ・イメルト氏が受賞している。
「日立鉄道」、日本からイタリアへ重心
16日に営業走行を開始した英国の都市間高速鉄道計画(IEP)の新車両。初日から車内の空調から水が漏れるなど複数のトラブルが発生、運行にも遅延が生じた。一日中、情報収集に追われた鉄道部門の正井健太郎最高執行責任者(COO)。翌17日にはイベントで訪れたイタリア・ピストイア工場で「ご迷惑、ご心配をおかけした」と謝罪。原因について、運行システムの起動時の設定ミスだったことを明らかにした。
空調の部品組み付けは英国の工場で行われたという。“日本品質”は受注の訴求ポイントだっただけに、これ以上のイメージダウンは避けたいところだ。神戸製鋼所の一件で日本の品質があらためて世界から注目されているが、データ改ざんと品質の問題を混同してはいけない。もともと日本メーカーは過剰な品質や機能を追求する傾向があり、適正な品質を持った製品競争力がなければ世界で戦えない。
日立の鉄道部門は日本、英国、そして買収したイタリア企業によって一気にオペレーションがグローバル化した。そして今、日本に偏っていた機能を改め、「世界基準」探しが始まっている。
ピストイア工場は買収した旧アンサルドブレダの主力拠点。イタリア国鉄向けの超高速車両や地下鉄、さらには2018年から運行を始める英国IEPの別路線の車両も輸出する。もともとイタリアは、職人の技能に対する誇りと尊敬を抱く「クラフトマンシップ」が根付いている。正井COOも工場の潜在力を高く評価し「効率的なモノづくりをしており、欧州向け車両のプラットフォームを開発していく。ピストイアは成長戦略の柱だ」と話す。
日立は鉄道での欧州進出にあたり、初期からアルミ車両にこだわった。アルミで威力を発揮したのが独自の摩擦撹拌接合技術「FSW」。軽量化と溶接面の外観が美しくなるのが特徴だ。2年後をめどにピストイアでもFSWをスタートさせる計画。現在、日本の笠戸事業所(山口県下松市)で使っている設備と同じものを導入する準備を進めている。
ただ、これは日本基準を世界に広げていくという意図ではない。日本はJRグループを中心に鉄道事業者の影響力が強く、むしろ“異質な市場”。海外のライバルに比べて収益性が低いのは、日立に長くはびこる工場プロフィットセンター(収益責任を持つ組織)に起因したサプライチェーンの弱さだ。正井COOは「余分なコストを省いていくため、日本、英国、イタリアで共通の生産データシステムの構築を目指している」という。
そして鉄道部門では生産にとどまらず、さらに大胆な改革を模索している。現在、工場や地域別に動いている組織を、調達、生産、品質、企画・営業など「機能別」に再編するプランだ。「その時の基準は日本ではなく、むしろイタリアに寄せていくことになる」(日立レールヨーロッパ幹部)。独シーメンスと仏アルストムが事業統合に動き出したことで、「10年後に日立が生き残るためには避けて通れない道」(同)だろう。
成功を収めるには、よりシンプルな組織が求められる。ローカルチームへ権限委譲し、いかに最高の人材を雇い入れることができるかは、日立共通の課題。東原敏昭社長は16年、ピストイア工場を訪問し、従業員と膝詰めの対話集会を開いた。グローバルビジネスの現実は、日々の現場で繰り広げられている。
日刊工業新聞2017年10月19日