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「TPP11」来月署名、専門家も称賛する日本のリーダーシップ

次は米復帰が焦点に
 米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)が3月にも署名される予定だ。米国の離脱から波乱の道のりを歩んできたTPPだが、現状では最低でも発効に必要な6カ国を確保できる見通しだ。ここにきてトランプ米大統領が復帰をにおわせているほか、英国の参加意欲が伝えられる。ここまでこれた背景には、専門家も称賛する日本のリーダーシップがあった。

【みずほ総合研究所調査本部政策調査部主席研究員 菅原淳一氏】
 米国の離脱で漂流しかけたTPPを、その離脱後丸1年で最終合意にこぎ着けたことは高く評価できる。日本がリーダーシップを取ってオリジナルの水準を保ち、11カ国のいずれも脱落せずにこの短期間でまとめたことは快挙と言っていい。

 ルールとして意義が大きいのは電子商取引と国有企業に関するものだろう。中国が進めるようなデジタル保護主義、国家資本主義などと呼ばれるものに対する抑止力となるルールが、アジア太平洋地域に生まれたことは意義深い。

 TPP11の成立が東アジア包括的経済連携(RCEP)を加速させるかはまだわからない。一帯一路で衛星国とFTA(自由貿易協定)を結んでいく中国の方針と、RCEPがどう並行するかはまだ不透明だ。

【三井物産戦略研究所アジア・中国・大洋州室主任研究員 股野信哉氏】
 ひとまず評価できる。凍結は22項目で、そのほかはオリジナルのまま。多くはそのまま生かせ、ハイレベルで包括的だ。ルールをマレーシアなど途上国に広げていけるという意義がある。日本がリーダーシップを取って署名の一歩手前まで来たというのもスピード感がある。

 ただ、米国に帰ってくるよう働きかけ続けていくことが重要だ。帰ってくる場を維持しているというのがTPP11。2国間FTAの交渉になった場合でも、TPP11が進展していれば、TPPに戻ってくればいいという立場を取ることができる。

 参加国はどこも米国にはいずれ帰ってきてほしいと考えているはず。米国市場はやはり大きい。特に新興国にとって重要だ。

【日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部長 川田敦相氏】
 米国の離脱後、日本がリーダシップを取り想定できなかった速度で、ここまでこぎ着けたことは素晴らしいこと。電子商取引や国有企業に関する踏み込んだ21世紀型のルールで、ほかの通商協定のハイスタンダードなモデルとなることができた。それが一番の意義。

 まだ1人当たり国内総生産(GDP)の低いベトナムのような国が参加して高水準のルール作りができたことは、今後の通商協定の枠組みにとって象徴的だ。

 自由貿易で手を組んでいない国は焦り、TPPなどの枠組みに入るか、あるいはほかと組むかの選択になる。どちらにせよ自由貿易は進む。TPPの成立で、RCEPなどメガFTAの世界的な流れにも弾みがつくだろう。
日刊工業新聞2018年2月14日の記事から抜粋
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 みずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は「メキシコの大統領選など、政治日程によって遅れが出る国はあるだろう」とした上で「18年中に6カ国が手続き完了、19年の早々に発効というのがベストシナリオ」と見る。仮に順調に発効した後、オリジナルのTPP交渉時にも声が上がっていたタイ、フィリピン、インドネシアの東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の参加への期待がある。ただ、「米国の抜けたTPP11にASEAN各国がすぐ参加するかは、慎重に見ている。彼らはまずは東アジア包括的経済連携(RCEP)を優先するのではないか」(菅原氏)との見方もある。  TPP11は米国の復帰も視野に入れており、トランプ大統領もここにきて条件付きながらTPPへの復帰を「検討する」との姿勢を見せている。だが、菅原氏は「トランプ政権に2期目があるかは別として、1期目ではおそらく無理だろう」と話す。離脱を公約に当選したトランプ大統領にとって、目に見える米国の利益なしに復帰すれば国内向けの説明ができない。だが、現状の枠組みの大きな変更を、11カ国が認めることも難しい状況だ。 (日刊工業新聞経済部・吉田周示)  

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