NAFTA関税見直し、日産とホンダに明暗?

トランプ大統領誕生へ

 最大の経済大国である米国の大統領選挙で、乱暴な発言で知られる共和党候補のドナルド・トランプ氏が、政治経験豊富な民主党候補のヒラリー・クリントン氏に勝利した。直前の予想ではクリントン氏優位と伝えられ、安心感から為替はドル高・円安に振れたが、予想は大きく裏切られた。環太平洋連携協定(TPP)発効に暗雲が立ちこめ、日米関係の先行きが不透明感を増すなか、日本企業も暗中模索が続くことになる。

 「うちのメキシコ新工場は、どうなるのか…」。トヨタ自動車首脳は、もしトランプ氏が大統領に就任したらと、こんな不安を漏らしていた。トヨタが19年の稼働に向けメキシコ・グアナフアト州に建設を進めている新工場のことだ。

 新工場は北米自由貿易協定(NAFTA)の存在が大前提。年間20万台という生産能力は当然のことながらメキシコ国内の需要を賄うためだけではない。トヨタは新工場を機に米国とカナダを含めた北米全体の生産体制を再編する計画。新工場はトヨタの北米戦略全体に関わる重要拠点となる。

 メキシコではトヨタだけでなく日産自動車やホンダ、マツダも近年、新工場を相次ぎ稼働している。選挙期間中、NAFTA離脱を主張してきたトランプ氏。TPPも含めたトランプ氏の貿易政策が実際どうなるのか、日系自動車メーカー各社が注視している。

 トランプ氏は、連邦法人税を現行の35%から15%に引き下げる方針を示している。海外企業の現地法人に対する減税措置は、現段階では不透明だが一定の好影響も期待できる。

 三菱重工業にとって米国は、グループ最大の海外市場。年間の北米売上高は約7800億円に上り、30州・7300人体制で展開する。川崎重工業も米国売上高は3966億円(16年3月期)と、総売上高の25・7%を占める有望市場だ。米国内に、鉄道車両や航空機部品などの生産拠点を複数持つだけに、トランプ氏の動きから目が離せない。

 

日刊工業新聞2016年11月10日「深層断面」から抜粋

中西 孝樹

中西 孝樹
11月10日
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TPP発効の可能性は極めて厳しい。これは、メキシコを生産拠点として重点投資を続けてきた国内自動車、自動車部品産業にとって戦略的に大きな痛手となる。TPPの累積原産地を活用したグローバル・サプライチェーンの構築とも合わせ、再び、戦略の練り直しが必要となる。同時に、NAFTA(北米自由貿易協定)へトランプ次期米国大統領が公約通り関税見直しを実施する事態にでもなれば、メキシコ生産シフトを続け続けてきた完成車メーカーには大打撃となる。その様な事態となれば、メキシコシフトを一気に進めた日産と、第一期工場だけで増産を見送ったホンダの判断の分かれ目は、両社経営にどの様な影響を及ぼすだろうか。コスト重視で偏りすぎることは、やはりリスク。何事も、バランスが大切である。

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