リチウムイオン電池の安全性が再び焦点に。“中国爆発"で日本に商機!?

スマホ向けで品質追求、コストとの戦い続く

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 リチウムイオン二次電池(LIB)メーカーが、安全性の向上に奮闘している。1月に中国でスマートフォン用の二次電池が爆発するなど、電池をめぐる事故が後を絶たない。スマホメーカーなどの顧客からは充電速度やエネルギー密度ではなく、安全面の要求が日増しに強くなっている。

 小さいながらも膨大なエネルギーを供給できるLIB。これまでパソコンや携帯電話、スマホなど情報端末の普及拡大を支え続けてきた。

 民生向けの最大市場であるスマホの分野では、急速充電など機能面で顧客に重宝される一方、発火する事案も繰り返し発生してきた。

 特に2016年に韓国サムスン電子が起こしたスマホ発火問題が大きく影響し、スマホメーカーなど顧客の電池に対する考え方に変化が生じた。このため足元では「顧客は今まで以上に安全重視の方針を打ち出している」(電池メーカー幹部)と語る。

 一方、こうした要求は新たな商機にもなる。モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤昌司アナリストは「(急速充電など)従来の機能だけでなく、安全性も高めることができれば、あらためて訴求のポイントとなる」と指摘する。

 実際、ソニーから電池事業を取得した村田製作所は、安全性の高さを訴え、商機が拡大している。電池がゲル状のポリマー素材のため、燃えにくい利点があり、顧客からの引き合いが増えたという。

 ただ品質の要求事項は顧客ごとに異なるため、それら全てに対応すると技術者の負担が非常に大きくなる。このため、村田恒夫会長兼社長は「製品ラインアップを絞り込んだ上で対応したい」と戦略を錬る。

 二次電池事業の営業損益は赤字が続いているが「研究開発費用を増やし(安全性などの)品質や技術難易度が高い製品を投入する」(竹村善人取締役常務執行役員)と説明する。中長期を見据え、土台を固める考えだ。

 電池メーカーによる安全性の取り組みが奏功し、収益につながった事例もある。マクセルホールディングス(HD)は正負極のリチウムの濃度をリアルタイムに観察することで電池を安全にする技術などを保有している。

 これにより、発熱や発火の直接的な原因となる金属リチウムの樹枝状結晶「デンドライト」の形成を抑制できる。これらの安全技術を評価され、スマホ向けの受注量を回復できたという。マクセルHDの岩崎明郎最高財務責任者(CFO)は「技術を見込んでもらった」と喜ぶ。

 マクセルは構造改革の一環として、海外メーカー向けなど一部の電池事業から撤退している。「コモディティー(汎用品)化により、低収益化が避けられない」(勝田善春マクセルHD社長)ためだ。

 また差別化するために品質を追求しすぎると、採算が合わないという課題もあった。ただ安全面へのニーズの高まりに伴い、高い品質を再評価され、価格優位性を持つ中国勢からの巻き返しにつながった。

 現在、二次電池などで構成するエネルギーセグメントの収益力は大きく改善している。17年4―12月期の同セグメントの営業利益率は不採算品種を絞り込んだこともあり、前期の4%から14%に改善した。岩崎CFOは「(売り上げ)規模がなくなる恐怖はあったが(価格競争を回避するために一部の事業を)止めたからこそ改善した」と分析する。
(文=渡辺光太)

日刊工業新聞2018年2月15日

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競争環境は激しくなる一方だが、LIBメーカー各社は安全性などを訴求しつつ、原料の安定調達を進め、中国など海外勢と戦うことになる。 (日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

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