日立ハイテクがトヨタに起こした”ジャイアント・キリング”

技能五輪全国大会で常勝軍団に勝利

 ジャイアント・キリング(番狂わせ)と言っても過言ではない。波乱が起きたのは、2017年の技能五輪全国大会。実力のある選手が競り合い群雄割拠とされる「メカトロニクス」の職種で、日立ハイテクノロジーズの選手が、わずか3年目の挑戦で金メダルを獲得した。同社が躍進を遂げた理由を取材した。

 17年11月に栃木県で行われた「第55回技能五輪全国大会」。メカトロニクスで栄冠をつかんだのは、日立ハイテクノロジーズの生産拠点、那珂地区(茨城県ひたちなか市)に所属する村山駿太と中澤洸介の両選手だ。

 日立ハイテクノロジーズがメカトロニクスへ参戦したのは15年。それまで同社は、電子回路を設計・試作する技能を競う「電子機器組立て」の選手を育成していた。だが血液分析装置などの生産の自動化を進める上で、より有用な技能者を育てるため、機械システムを電子制御する技能を競う「メカトロニクス」へのくら替えを決めた。

 しかしメカトロニクスは、日産自動車やトヨタ自動車、豊田自動織機といった“常勝軍団”が名を連ねる。実際、08―16年の10大会のうち、9大会で自動車関連企業が金メダルを獲得している。参戦を決めた当初は、指導者も選手も何をすべきか分からない状態だったという。

 金メダルを獲得できた理由を、中澤選手は「電子機器組立ての選手だったOBが、練習に必要な配線などを製作してくれた」と話す。だが、わずか3年で金メダルを獲得できた理由はそれだけではない。

 那珂地区の生産本部技能訓練グループの脇嘉人主任は「新参者の私たちに対して、自動車メーカーなどが職場や練習の見学をはじめ、必要な設備などのアドバイスをくれた。地域ごとに開催している各社合同の訓練会にも参加させてもらった」と感謝の思いを語る。

 さらに「日本のモノづくりのレベルを上げることに、各社が協力してくれたのだと思う。他社の好意がなければ、もっと時間がかかっていた」(脇主任)と続ける。

 メカトロニクスの成果に注目が集まる一方で、日立ハイテクは「旋盤」と「フライス盤」の職種でも金メダルを獲得した。結果を残した背景には、充実した練習環境がある。

 旋盤の丹野惠介選手は「工具などがそろっている。OBも毎月のように指導をしに来てくれた」と話す。フライス盤に出場した菊池優斗選手も「選手(の出場枠)が2人の企業が多い中、3人出場させてもらえたのが大きかった」と選手層の厚さを挙げる。

 同社は技能五輪の選手期間を2―3年に設定している。メカトロニクスの村山・中澤ペアは、参戦からわずか3年で金メダル獲得という偉業を成し遂げ、自身の花道をかざった形だ。

 村山選手は「(中澤選手とは)よくケンカもしたが、モノづくりに大切な『安全第一』を考えてきた。今後は機械のトラブルなどに対して、今までの知識で対応したい」という。培った技能をモノづくりの現場で生かす決意を胸に抱いている。
(文=福沢尚季)

日刊工業新聞2018年2月9日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
02月11日
この記事のファシリテーター

 技能向上の場として位置づけられている技能五輪だが、国際大会の場では中国などが技術力をつけきている一方で日本の存在感は薄れつつある。大会として優勝に重きを置くのか、あくまでも技能向上の機会ととらえるのかなど、課題は複数ある。とはいえ何度か技能五輪の大会を取材したが、若い選手が真剣に競技にとりくむ姿は本当に爽やかで心を打たれる。
 現地を訪れてその空気感に触れてみるのもオススメだ。2018年の大会は沖縄で開かれる。メーカーのデータ改ざん問題が頻発している昨今、観光がてら大会を見学し「モノづくり・日本」とは何かを考えてみる機会にしてはいかがでしょう。

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古川 英光
古川 英光
02月11日
いい話ですね。

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「日本のモノづくりのレベルを上げることに、各社が協力してくれたのだと思う。他社の好意がなければ、もっと時間がかかっていた」(脇主任)
  

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