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寒冷地を暖めろ!エアコンは石油・ガスヒーターの牙城を切り崩せるか

普及率が30%程度、“伸びしろ”に家電メーカーがヒートアップ
寒冷地を暖めろ!エアコンは石油・ガスヒーターの牙城を切り崩せるか

三菱電機の体感イベント(同社提供)

 1月下旬は一年で最も寒い時期とされる。実際、ここ数日は日本海側を中心に寒波が襲い、市民生活に大きな影響が出ている。そうした寒冷地の家屋に求められるのが、寒冷地向けに最適化したエアコンだ。白物家電メーカー各社は厳しい寒さの中でも快適に過ごせる暖気を届けようと、しのぎを削っている。“過熱”する寒冷地向けエアコン商戦を追った。

 比較的温暖な地域では、あまり耳慣れない「寒冷地向けエアコン」。その名の通り、外気温がマイナス30度C程度の環境を想定した製品や、室外機の凍結を防止する製品など、寒い地域での使用に特化している。

 「ズバ暖霧ヶ峰」を展開する三菱電機は業界内でも早い段階で開発し、2007年に寒冷地向けエアコンを市場投入した。温度を測るセンサー「ムーブアイ」を搭載しており、床の温度や体の表面温度を測定して最適な暖気を供給できる。天井付近の暖気を拡散する機能もある。

 一般的なエアコンの販売台数が前年並みで推移する中、寒冷地向けエアコンは右肩上がりで推移する。ルームエアコン販売企画グループの黒飛早絵氏は「(17年9月からの)冬商戦では前年比20―30%増で推移しており、当社のエアコン事業を牽引(けんいん)している」と力を込める。

 好調な販売を支えるのが、地域別に放映しているテレビCMだ。17年からは13道県を対象に、各道県の住民が出演する13種類のCMを放映。さらに製品の体験会なども各地で開催し、地域に密着したマーケティングを展開している。

 一方、日立ジョンソンコントロールズ空調(東京都港区)が製造する「メガ暖 白くまくん」も、ここ数年は販売台数が前年比で20―30%成長している。外気温がマイナス25―マイナス30度Cでも運転可能で、室外機の凍結を防ぐ凍結防止ヒーターなどを搭載している点が評価された。

 さらに「寒冷地向けのテレビCMを秋に放映してPRしており、アイドルグループ『嵐』を起用した」(担当者)ことも販売増につながったという。

 パナソニックの「エオリア UXシリーズ」も17年4―12月期の販売台数が前年同期比30%増と好調に推移している。蓄熱器を室外機に組み込んでおり、低温時でも連続運転ができ、最高吹き出し温度60度C、足元を43度Cに温められるのが特徴だ。

 寒冷地向けエアコンは冬の商品というイメージが強いが、最需要期は本格的な寒さを迎える前の夏場という。パナソニックは、家電量販店のエアコン売り場担当者や営業マンを対象に、自社製品と他社製品を比較する営業活動を2月に行う。製品を量販店スタッフに体感してもらい、夏場の販売増につなげるのが狙いだ。
(文=福沢尚季)
日刊工業新聞2018年1月24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
家庭用エアコンの市場規模は約7000億円で、そのうち1割、約700億円を寒冷地向けエアコンが占めるとされている。ただ寒冷地では石油やガスを使ったヒーターなどの人気も根強く、エアコンの普及率が30%程度の地域もあるという。裏を返せば“伸びしろ”とも言えるだけに、寒冷地向けエアコン商戦は一段と熱を帯びそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・福沢尚季)

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