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AIで流体解析シミュレーションの時間はどこまで短縮できる?

ヴァイナスが高精度メッシュ設計に挑む
AIで流体解析シミュレーションの時間はどこまで短縮できる?

ポイントワイズのメッシュ生成ソフトによるシミュレーション画像

 ヴァイナス(大阪市北区、藤川泰彦社長)は、人工知能(AI)を使って自動車や航空機の流体解析シミュレーション時間を短縮する技術開発を進めている。シミュレーション工程で時間のかかる対象物の網目状(メッシュ)分割・設計をAIが担う技術で、2018年度中の完成が目標だ。

 現在、ヴァイナスが開発を進めるのは、米ポイントワイズの流体解析用メッシュ生成ソフトウエア向けの技術。AIによるメッシュ分割・設計をもとに同ソフトがメッシュを生成する。

 AI技術の一つであるディープラーニング(深層学習)を使った画像解析をベースに開発する。「正しいメッシュ配置」と「誤ったメッシュ配置」を学習させ、設計精度を高める。解析対象物により異なるが、通常1カ月かかるとされるメッシュの分割・設計、生成、解析作業を10日程度に短縮できるという。

 自動メッシュ設計・生成機能を搭載した流体解析シミュレーションソフトはあるが、高精度な解析には、対象物の形状や大きさに合わせた人によるメッシュ分割・設計が不可欠。「自動メッシュ設計は安価だが、精度が低いため高度な分析はできない。今後は安売り合戦ではない、高精度なメッシュ設計が必要となる」(藤川社長)と説明する。

 例えば自動車では、車体に近い部分は空気や液体の流れなど「現象の変化」を大きく受けるので、メッシュを高密度に配置することが必要だ。しかし経験の浅い設計者には解析対象物に合わせたメッシュ設計・分割は困難で、多大な時間を要した。

 さらにここ数年は電気自動車(EV)の開発で高度な解析が求められており、それに伴い開発者の負担も増えている。こういった背景から、同社は高度な知識を持つ開発者のノウハウを学習したAIを用いた技術開発をスタートした。

 16年12月には、AIを使って医薬品の研究開発を進めるコンソーシアム「LINC」に、藤川社長らヴァイナスから4人が参画。LINCは大手製薬・IT企業や大学など89機関が加入している。

 その中で同社はAIの最新技術の収集や、研究開発におけるインフラ環境の整備を担当。「創薬に使われるAI技術を自社の技術開発にフィードバックする」(藤川社長)ことが目的だ。「高度な知識や技術を持つ人材が担当していたシミュレーション作業の一部を、AIが代替して効率化を図る」と力を込める。
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
米ポイントワイズのソフトは米航空宇宙局(NASA)が採用するほか、国内外の大手車メーカーなどもエンジン部分、外装・内装の解析などに活用している。ヴァイナスは米ポイントワイズ製ソフトなどの販売代理店としての売り上げが大半を占めるが、今後はAIを使った自社開発技術やサービス開発を強化する方針だ。 (日刊工業新聞大阪支社・大城蕗子)

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