破格の初任給、信頼関係…人手不足の中小企業、新卒獲得の秘策とは

“中途採用でさえ難しいのに新卒なんて”で終わらない

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学生に事業内容を熱心に説明するオリムピア製菓の荒西総務部長
 人手が足りず、受注増に対応できない―。中小製造業の人手不足が深刻化している。“中途採用でさえ難しいのに新卒なんて”と諦めている企業も多い。そんな中、職種や学校を絞って企業説明会を開いたり、社長自ら学校を訪れたりして新卒を獲得している企業がある。特別枠を設け、幹部候補社員の獲得を目指す動きも出てきた。

学校と信頼関係


 オリムピア製菓(大阪府摂津市)の荒西増美総務部長は、「以前はハローワークに求人を載せると30人は面接に来たが、ここ数年で激減した」と変化に顔を曇らせる。チョコレート製品を大手食品メーカーにOEM(相手先ブランド)供給する同社は、社員16人の高齢化が進んでおり、新卒獲得が課題だ。

 そこで2013年から学校訪問を始めた。職種を高校生は製造に絞って6校に訪れ、短期大学生は品質管理に絞って2校で求人活動した。荒西総務部長は「先生や学生を招き、会社説明の機会を必ず設けて、信頼関係を築くのが重要。ここ3年間で高校生2人、短大生2人と予定通り採用できた」と胸を張る。

初任給も破格に


 “特別”な採用に挑むのはファミリーイナダ(大阪市淀川区)。入社して3年で課長、5年で部長、10年で役員を目指す「特別コース」を16年に設けた。部下10人を擁する20歳代の主任誕生がきっかけ。入社時から社長の下で営業、広告、製品企画、開発、生産管理など経営全般を学び、幹部を目指す。初任給は一般枠20万2100円(大卒16年度実績)に対し、特別枠は選考時の査定によるが30万―40万円になる。現時点で応募はないが、「数に限らず、いい人に来てほしい」(山崎東奈総務人事課課長)と、継続する方針だ。

 社長自ら学校訪問して成果を上げるのは電子部品のエッチング加工を手がける平井精密工業(大阪市北区)。

OB頼りに訪問


 生産拠点がある中部地方は大手自動車メーカーに就職希望する学生が増え、採用が厳しい。そこで大垣工場(岐阜県大垣市)に地理的に近く、一部社員の出身地で馴染みもある北陸地方に狙いをシフトした。16年度からは「誠意を持ってアピールする」と、平井孔明社長が自ら先頭に立ち、OB社員を伴って大学の就職部や出身研究室を訪問した。「おかげで17年4月は従来通り4人採用でき、本年度は既に2人へ内定を出した」(平井社長)と安堵(あんど)の様子。この経験を他の地域でも生かし、大学との信頼関係構築を進める。

 新卒採用の手法はさまざまだが、結局は学校からの信頼を勝ち取ることが近道のようだ。人材教育、生産計画などを示し、目先の景気に左右されない会社の長期ビジョンも不可欠。自社の将来方針を定め、足元を固めることが新卒獲得の第一歩とも言えそうだ。
(文=大阪編集委員・青木俊次、中野恵美子)

日刊工業新聞2018年1月17日

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

売り手市場で大手思考の就活生が増えていますが、全員が全員そうではないはず。自社の良さをしっかり伝えて、マッチングがうまくいく例も。

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