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変わる佐賀県、「ふるさとに誇りを持つ県民増えた」(知事)のはなぜ?

山口祥義知事インタビュー
 佐賀県の山口祥義知事が14日で就任から3年を迎える。県は明治維新から150年の今年、「肥前さが幕末維新博覧会」を開催。反射炉建設などで先端技術を誇った佐賀藩の歴史に光を当てる。県内では人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)など最新技術の活用も進む。残る任期が1年を切る山口知事に取り組みの手応えや抱負を聞いた。

 ―佐賀県が変わりつつありますね。

 「佐賀県に誇りや愛着を持つ県民が増えたことがうれしい。一つの要因が県産品。『佐賀牛』が米トランプ大統領の来日で提供され、日本酒や『嬉野(うれしの)茶』は海外のコンテストで賞を取った。モノづくりを世界基準で考える戦略が少しずつ形になっている。産業施策を実施する上で県民がふるさとに誇りを持っていることは大きい」

 「高校生の県内就職が大幅に増えたことも印象深い。『ものづくり人財創造事業』を始めて約3年。施策の相乗効果が出てきた」

 ―2017年にIoTツールを提供しているオプティムと「AI・IoT包括連携」を結びました。今後の展開についての考えは。

 「主要産業である農林水産業への展開が考えられる。最近の農業は工業化しており、ビッグデータも活用できる。将来はノリ生産が海から陸に上がることもあり得る。AI、IoTは災害や工事現場、在宅医療などあらゆる分野での可能性を秘める。最初は各部署で何ができるのか検討する『推進会議体』のようなものがいいかもしれない」

 ―県内の経営者の高齢化が進んでいます。

 「個人事業主や中小企業は事業承継への意識が希薄な気がする。人口増大で右肩上がりの高度経済成長期と違って現代の市場は厳しく、消費者マインドや物流も異なる。うまく次の世代にバトンタッチできるかが重要だ」

 「県内の日本酒業界では承継する若手が連携して新商品を開発し海外に販売している。これは上の世代が次世代を遠くから見守った結果だ。新しい時代であることを認識し、経営者が年を重ねる前に事業承継の方向性を考えてほしい。相談場所も必要となる。そのためには商工団体や金融機関とも連携したい」

 ―4年目の抱負は。

 「『肥前さが幕末維新博覧会』を一つの大きなターニングポイントにしたい。佐賀の子どもたちが『佐賀で良かった』と記憶に残るような博覧会を目指す」

【記者の目/“逆輸入”奏功、県民に誇り】
 都道府県別の魅力度を比べる調査など国内のランキングで目立つことは少ない佐賀県。だが山口知事は就任以来、世界に目を向け、海外で評価されたものを国内に持ってくる“逆輸入”を展開する。誇りを持つ県民が増えたのは、こうした戦略が奏功していると言える。明治維新150年の契機を佐賀の活力にどうつなげるかに期待したい。
(文=西部・増重直樹)
日刊工業新聞2018年1月11日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
最近も格闘ゲーム「ストⅡ」とのコラボ「佐賀ット」が話題になっている佐賀県。東部の神埼(かんざき)市では4月の市長選に元レスラーの大仁田厚氏が出馬の意向とかで、なんだか目が離せないことになってきました。それはさておき、地元への愛着や誇りであるシビックプライドは地域を盛り上げるのに不可欠かつ最大の要素だと思います。知事の発言通り、県民の愛着が強まっているのだとすれば、それは佐賀の活性化にとって強力な原動力になるでしょう。

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