ニュースイッチ

「道の駅」で自動運転実証、中山間地域の路線バス廃止に対応

技術的な検証5カ所、ビジネスモデルの具体化8カ所
「道の駅」で自動運転実証、中山間地域の路線バス廃止に対応

DeNAの自動運転車両

 国土交通省は中山間地域における道の駅を拠点として、全国で自動運転の実証を展開している。地域の状況を踏まえ、主に技術的な検証を5カ所、ビジネスモデルの具体化を8カ所で実施。実証で把握した課題を分析し、夏に中間とりまとめを行う。自動運転と道の駅を組み合わせることで、新たな移動手段の創出と地域活性化を目指す。

 全国の市町村の約7割が該当する中山間地域。地域の足となるバスの路線廃止が止まらない。高齢化率が高いことに加え、高齢者の自動車運転免許の返納が増加。日常生活に必要な移動手段を十分に確保できない状態が生じている。

 国交省はこうした状況を踏まえ、自動運転の活用拠点として道の駅に着目した。全国1100駅以上ある道の駅の「約8割が中山間地域にある」(国交省ITS推進室)。

 病院や役場などに比較的近い場所にあり、バス停が設置されている駅も多く「日常的に使う施設の拠点になっている」(同)。生活の足に加え、物流や地域活性化の拠点としての活用を期待する。

 自動運転は運転者が同乗する「レベル2」と、専用空間を自動運転車が走行する「レベル4」で実施。実証では、自動運転に望ましい道路のコース形状や構造などを検討する。すでに実施した実証では、道路内にはみ出した木の枝を障害物として検知し、車両が停止するケースが見られた。

 歩行者や一般車両と混在した場所での走行のあり方も考慮する。気象や通信状況などに関する地域環境、車両などの導入・維持コスト、快適性や利便性などの社会受容性も確認する。

 一方、ビジネスモデルの実証では、地域の特色を生かしたビジネス構築を探る。例えば、道の駅「ひたちおおた」(茨城県常陸太田市)では、現在、農家が出荷した農産物を道の駅で集約して高速バスに積み込み、東京都内で販売する事業が行われている。

 実証では、農家から道の駅までに自動運転を取り入れ、農産物を集荷・配送した。常陸太田市は事業の採算性と経済活性化、既存の公共交通利用などのバランスを考慮して検討する方針だ。
(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2018年1月9日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
自動運転の実証はこれまでに8カ所で行われた。すべての実証結果を分析し、夏に自動運転に適する道路空間や車両技術、道の駅を拠点としたビジネスモデルの方向性を示す。2020年までの自動運転サービスの実用化を見据え、「実証でいろいろな環境の課題を把握、共有して解決していきたい」(国交省ITS推進室)とする。 (日刊工業新聞第ニ産業部・村山茂樹)

編集部のおすすめ