日本IBM社長「検索エンジンでカバーできない80%の企業データで勝負する」

エリー・キーナン氏インタビュー

 ―2018年の経済情勢をどうみていますか。
 「日本経済の動向は楽観視している。日本駐在は今回で3回目だが、過去2回と比べて経済状況は良いと実感している。東京五輪・パラリンピックを控え、18年は前年同様に好調だと考えている」

 ―社長就任から9カ月間を振り返ると。
 「ビジネスは成長軌道に戻った。すばらしいチームメンバーに囲まれ、お客さんとの関係もさらに深くなったことが喜ばしい。また17年は創業80周年に当たり、経営トップとしても会社全体にとっても特別な年だった」

 ―人工知能(AI)の「A」について、アーティフィシャル(人工的)ではなく、オーグメント(拡張)と表現していますね。その理由は。
 「人工知能と言うと、人間を代替するような意味合いを持つ。そうでなく、人間を手助けし、仕事や健康をより良くするのがAIだ。ゆえに当社では“拡張知能”と呼んでいる」

 ―日本のAIブームは米IBMの「ワトソン」が火付け役となりました。手応えは。
 「日本が抱える課題として、高齢化や人口減少がある。このため企業などでは生産性向上への圧力が高まっている。AIを活用することで、熟練工や経験を持った社員の生産性がさらに上がり、若手社員のスキルアップなどにも役立つ。日本がグローバルでも競争力を保っていく上でAIの活用は不可欠であり、待ったなしだ」

 ―AIは有益なデータを大量に学習することで賢くなりますが、自社データを社外に持ち出したり、自社で作ったものではないプラットフォーム上に分析結果を活用したりすることへの懸念があります。特に製造業はその傾向が強いです。
 「そこは重要だ。世界中で検索できるデータは全体の20%しかない。この20%は米グーグルの検索エンジンなどでカバーできるが、残りの80%は企業などが独自に保有していて、各社が競争優位性を維持する上での源泉となるものだ」

 「ワトソンは、この80%の企業データに特化した形で作られている。他社とも共有できない環境で使い、独自の環境内にとどまるようにして、知見を活用する特化型のツールだ」

 ―量子コンピューターへの取り組みにも積極的ですね。
 「グローバルな取り組みの一環として、量子コンピューターの研究ハブを日本でも立ち上げることになった。参加メンバーとともに量子コンピューターをどう使うか、試行錯誤しながら実証研究を行う。研究ハブでは20量子ビットのシステムにクラウド経由でアクセスできる。これを起爆剤として、イノベーションを加速していく」
(聞き手=斎藤実)

日刊工業新聞2018年1月9日

日刊工業新聞 記者

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01月10日
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キーナン社長はプログラマーから経営幹部に上り詰め、世界を渡り歩いてきた“たたき上げ”の実力者として知られる。直近はIBMのデジタル変革担当であり、その経験を生かして、社内外の変革を先導する。技術面で焦点を当てるのはAI、IoT(モノのインターネット)、ブロックチェーン(分散型台帳)、量子コンピューター。それぞれの時間軸をどう合わせ、打ち出していくのか注目される。
(編集委員・斎藤実)

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