AI技術を取り巻く国内外の状況。米、中の動きに対し日本は?

近年、中国の存在感が増す

 インターネット、スマートフォン等の普及により、社会における大量・大規模なデータの集積化が進み、それらを活用することで人工知能(AI)が実世界に急速に浸透した。世界中の研究現場でAI研究が進められ、新技術が次々に誕生している。ニューラルネット翻訳、動画説明文の自動生成、画像の演算、並列学習、見まね学習等、興味深い技術も日々進化している。

AI論文の動向


 AI代表格のディープラーニングの関連論文の件数は、5年間で3・3倍と近年急増している。国別では、中国が5年間で16倍超と飛び抜けた伸びである。また、5年累計の国別シェアでは、米国と中国の上位2国で半分を占める。主要な国際会議である国際人工知能会議(IJCAI)、米国人工知能学会(AAAI)においても、近年、中国の存在感が増している。

特許の動向


 AI技術の特許文献の件数も、5年間で2・5倍と論文同様に右肩上がりである。国別に見ると、5年間で中国3・5倍、米国2・9倍、日本1・6倍となっている。2017年上半期の前年同期比で2倍弱と、今年に入っても増加の勢いは続いている。5年累計の出願先国別シェアの上位は、順に米国50%、中国27%、日本3%となっている。日本ではAIの適用分野で出願する傾向も見えていることから、今後の社会実装フェーズの動向に期待している。出願人別件数では、IBMがトップを維持し近年は他を引き離しているが、Google、中国国家電網公司が一気に上位に入ったことと中国の大学勢の躍進等が、ここ数年の特徴である。

  

社会実装に向けて


 AI技術単独の論文、特許文献の数だけ見ると、米国、中国の動きが目立っている。しかしながら、AIを実世界へ適用する社会実装フェーズでは、適用分野の技術力や保有データ等の基盤が鍵となる。AIを使った複雑な問題へのチャレンジが世界中で始まっているなかで、日本のポテンシャルは高い。日本には高度なものづくり技術、良質なデータ、それらを収集する優れたセンサー技術等の鍵となる「強み」がたくさんある。AIの社会実装はそれらを活かし、さまざまな相乗効果を生み出す大きなチャンスと考えている。

 今年3月、人工知能技術戦略会議が人工知能の研究開発目標と産業化のロードマップを策定した。これらは、世界をリードしていくために、そして、直面する社会課題に対して、現場の強みをも踏まえ、AI技術とその他関連技術による産業化に向け、研究開発から社会実装まで一貫した取り組みを加速していくものである。

 NEDOとしても、産業競争力の強化に向け、強い技術戦略を通じた革新的技術の開発・実証を推進し、公的研究開発マネジメント機関としての役割をしっかり果たしていきたい。

(文=新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術戦略研究センター統括研究員 松田成正氏)

日刊工業新聞2017年10月20日

昆 梓紗

昆 梓紗
10月21日
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論文数、特許件数ともに米中が席巻している状況です。日本は今後の社会実装でどこまで存在感を示せるのでしょうか。

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