道の駅に買い物客を呼び込んだ“森林再生"というキーワード

大手企業ノウハウを地域活性化に生かす

 企業と連携した地域活性化が始まっている。カルビー子会社は鳥取県日南町と特産品のブランド化で協力し、森林保全にも、地域活性化にも貢献する事業モデルを作った。森林再生支援業のトビムシ(東京都港区)は、山村と消費者を結びつけた林業に取り組む。企業が持つノウハウが地域に不足する知見を補っており、企業にとっては地域貢献がビジネス機会となる。

 日南町で2016年4月に開業した道の駅「にちなん日野川の郷」に、1週間で町の人口の2倍の1万人がやってきた。町は中国山地の中央に位置し、都市部から決して近くはない。「全国初カーボン・オフセットの道の駅」という触れ込みが話題となり、買い物客を呼び込んだ。

 カーボン・オフセットとは、排出した二酸化炭素(CO2)を他の場所での削減で帳消しにする仕組み。中小企業の省エネルギー投資や森林整備によるCO2削減量を取引可能な「クレジット」にする国の制度がある。

 「にちなん日野川の郷」では買い物客が商品1点の購入に対して1円を、地域の森林整備で創出したクレジットの調達費に充て、道の駅の営業で発生したCO2をオフセットする。

 買い物客は特産品購入で地域活性化と森林保全に貢献できる。この仕掛けを考えたのがカルビー子会社のカルネコ(東京都千代田区)だ。

 町は道の駅の集客が不安で、カルネコに広報を依頼した。同社はカーボン・オフセットにとどまらず、ロゴや装飾などデザイン全般も担った。ポテトチップスなどカルビー商品の企画やデザイン、販売促進で培ったノウハウを発揮した。

 もともとカルネコは町の特産品のブランド化に携わっていた。湖の藻を肥料にして町で栽培したコシヒカリは「海と天地のめぐみ米」と名付けた。

 東京都内で無料配布している女性誌『Pococe』の読者に町を訪問してもらうなど、話題づくりによる販促も支援。売り上げの一部で森林支援ができる仕組みを用意し、購入者が環境に貢献できるようにした。

 同じような取り組みを全国で展開している。同社は森林整備のクレジットを取引する「EVI推進協議会」を運営し、各地の特産品にカーボン・オフセットの仕組みを提供。ブランド化も支援し、特産品が売れるほどクレジットが売れ、森林保全に資金が回る仕組みを作った。

 「環境貢献」「特産品」と訴求しても売れるとは限らない。カルネコの加藤孝一社長は「地域だけだと商品企画の道のりを間違い、売れるデザインにできないことがある。我々の本業の機能を活用してもらえる」と話す。
                   


渋谷と飛騨の接点


 東京・渋谷で7月、若者が新しい価値を発想する場となる「100BANCH(バンチ)」が開業した。3階部分はパナソニックと若者の交流拠点だ。ここに長さ4メートル、重さ200キログラムの木製テーブルがある。飛騨市の地域会社「飛騨の森でクマは踊る」(通称ヒダクマ)が製作した。

 ヒダクマは飛騨産木材を使った商品を生み出すことを目的に、飛騨市、トビムシ、人材交流支援のロフトワーク(東京都渋谷区)が15年に設立した。宿泊ができる「モノづくりカフェ」を備え、建築家やデザイナーは飛騨に滞在しながら商品の構想を練れる。

 市に対し、会社設立を提案したのがトビムシだ。同社は森林を生かした地域支援をするコンサルティング会社。竹本吉輝代表は「中間山地域の多くの住民が、森をどうかにしないといけないと思っている。しかし、できるはずがないとメンタルロックがかかっている」と指摘する。
100BANCH(東京・渋谷)

 森林資源が商品になれば、林業が雇用の受け皿となって労働人口の減少に歯止めがかかる。そう理解していても、自分たちは木材を切り出すだけで商品化までできないと諦めている。

 そこに入り込み、商品企画や木材加工などの関係者をまとめ、消費者までのサプライチェーンを構築するのがトビムシの役割だ。100バンチの木製テーブルは、飛騨産木材と若者の街・渋谷を結びつける狙いがある。

 トビムシは岡山県西粟倉村、村民などと地域会社「西粟倉・森の学校」を09年に設立。木材の加工・流通、さらに移住や起業も支援してきた。

 林業機械の購入費を賄うファンドも組成し、都市部から資金を集めた。人口1500人の村は、移住者が地域ベンチャーを興すまでに活力を取り戻した。

 トビムシはこれまで3地域で3社を立ち上げたが、どれも軌道に乗るまで時間がかかった。“よそ者”への抵抗があり、必ず反対者が現れる。

 竹本代表は「覚悟を持った地域リーダーが必要」と断言する。そして「事業の安定化まで5年はかかる。少しでも森に資金が回り始めると地域の空気が変わる」と話す。小さな成功まで導くリーダーが不可欠だ。
滞在しながら新商品の構想を練れるモノづくりカフェ(ヒダクマ、岐阜県飛騨市)

(文=松木喬)

日刊工業新聞2017年9月18日の記事から抜粋

松木 喬

松木 喬
09月19日
この記事のファシリテーター

人口減と税収減少に直面するほどサステナビリティな産業を求めている、その持続可能な産業の一つが環境ビジネス。大企業が持つ環境経営のノウハウ、環境技術が、地方における環境産業創造に役立つのでは。そんな仮説から取材をスタートしました。自然資源が豊富な地方ほど環境ビジネスを興しやすく、企業にとっても環境経営・技術の実践の場が地方だろうと。実際の取材で気づいたは、大きな産業にすることが目的ではなく、継続させることが重要ということ。全国的にニュースになるのは投資額や売上高のしっかりとした計画がある時。そんな経済ニュースに載らなくても、地域に大きな意味があれば良いと分かりました。

この記事にコメントする

古川 英光
古川 英光
09月20日
発想の原点は「サステイナブル」なんですね。メタな概念としても、それで良いと思いました。その全体的な整合性で上手くいくのでしょうね。
  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。