便利なだけではない“未来のコンビニ”

ロボットが店内自動化の技競う 国際競技会を仙台で開催

 見えたか、未来のコンビニ―。ロボットがコンビニエンスストアの作業を行い有用性などを評価する初めての競技会「フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ トライアル大会」(ワールドロボットサミット〈WRS〉サービス競技委員会主催)が2017年末、仙台国際センター(仙台市青葉区)で開かれた。第1回でロボットも“緊張”したのか再試行を繰り返すチームが多かったが、将来的なロボットによるコンビニ作業の自動化の姿は見せた。

 競技会は単にロボットの性能や安定性を競う大会ではなく、各チームのロボットシステムが次世代コンビニとなり得るかという点を考慮する。競技はセブン―イレブン・ジャパンの店舗を模した会場で行われるが、店舗をロボットが動きやすいようにアレンジしても良い点がユニークだ。例えば、競技中に陳列・廃棄タスクはリフォーム(準備)タイムがあり、商品棚を改造、交換したり商品へのタグ付けをしたりできる。

 WRSサービス競技委員会FCSC部門部門長を務める首都大学東京システムデザイン学科の和田一義准教授は「ロボットシステムの研究開発で日本が世界より先に取り組み、得意にできる分野という意味でコンビニはうってつけ」と説く。

 コンビニの仕組みは日本で培われたと言える。また、どの店舗も同じ仕組みを導入しており、ロボットシステムができれば一気に1万店以上に同じシステムの導入が可能で、市場性も見込める。さらに、培った技術は家庭で活躍するロボットにも応用できる。「コンビニで買った商品を持ち帰るということは、家でも同じように活躍できる余地がある」(和田准教授)という。

陳列・廃棄タスク/多軸ロボ・無人搬送車など駆使


 出場9チームで圧巻だったのはオムロン、中京大学、中部大学の「ROC2(ロックツー)」。デンマークのユニバーサルロボット製多軸ロボットと無人搬送車(AGV)、多くのカメラセンサーを組み合わせたシステムで、プログラム起動がうまくいかず一度再試行したものの、要求されたタスクを全て円滑にこなした。

 ロボットアームの手にあたるエンド部は吸着の仕組みを採用。吸う力を生むコンプレッサーの起動音を小さくしたことや、持つ際に商品の姿勢を動かさないよう、仮の置き場に置いてカメラで姿勢を確認するなどサービス業向けの配慮も見られた。作業はかなり円滑だった。停止トラブル対応の練習を繰り返し準備するなど競技への本気度の高さが結果につながった。

 カメラによる商品の認識には人工知能(AI)技術の深層学習を使った。チームの中京大、中部大は米アマゾン・ドット・コムグループのピッキングロボット競技会にも参加しており、そこで培った認識技術を応用したという。チームメンバーによると、AIに「タマゴサンド」の画像を学ばせて準備していたが、大会直前で「ツナタマゴサンド」に変更になりそうになり「かなり困った」とのこと。深層学習の認識は高性能ながら柔軟性に課題が残るようだ。

 ユニークだったのは棚をロボットにしてしまった筑波大学ヒューマンロボットインタラクション研究室。チームの飯塚正樹さんは「棚の後ろ側で作業すれば来店客の邪魔にならない」と利点を説く。

 商品に磁石のタグを貼って磁力で持ち上げる、自律移動する台車がバックヤードから棚に荷物を運ぶ、といった面白さがあったが、競技ではタスクを実施することができなかった。
陳列・廃棄競技での「ROC2」(オムロン、中京大学、中部大学)のトライアル

トイレ清掃タスク/床清掃と画像認識にAI


 床の清掃を重視したロボットの2チームがチャレンジした。ヒューマン・ロボット・アナリシス(東京都中央区)が用意したのは、ロボットが近づくとゴミ吸引を始めるアクティブゴミ箱と、おむつで拭き掃除をするロボット、ロボットを認識するカメラのセット。会場ではゴミ箱がゴミを吸う際に驚きの声が上がったが、チームの村上奬さんは「吸引音を出さないよう、練習では一度も試さなかった」とのこと。個性を出したいといういたずら心からの努力が実った形だ。

 二つのロボットの開発費は約10万円。普及しやすさを意識した費用だが、上からロボットの位置を見るカメラの画像認識にはAIを使っている。効率的にゴミ箱へゴミを運ぶ手順を考え実行する。
トイレの床を清掃するヒューマン・ロボット・アナリシスのロボット

接客タスク/音声認識技術がカギ


 東京大学稲葉研究室の「Cチーム」は、THKの双腕ロボットを使った。チームリーダーの矢口裕明さんは「人型ロボットを使うことで、来店客と心を通じ合わせやすくなるのでは」と話す。

 双腕ロボットが棚の陳列作業をしているとき、来店客が近づくと、来客対応を優先するかどうか判断する。来客が「このお菓子を下さい」と言うと、「お客さまはロボットに難しい注文をしますね」など文句を言いつつ棚から商品を取り出し、ロボットに付いたカメラで商品を認識、決済まで行う。複雑な作業のため再試行を繰り返したが、ロボットが店内作業をするとこんなことができるという絵姿は見せた。

 一方、中部大学の「CU―HUB」は、トヨタ自動車の「HSR」にマイクを搭載して2人が同時に発話した注文内容を聞き取り、一つずつこなす予定だったが、音声認識がうまくいかなかった。人が多い場所での音声認識技術はまだ向上の余地があるようだ。

 各競技を観戦していた佐藤知正東京大学名誉教授は「店全体をロボットシステムと捉えており、この着眼点は良い。ロボットの調整は相変わらず難しいが、未来のコンビニを感じさせるアイデアがあった」と評価する。

<フューチャーコンビニエンスストアチャレンジとは>
ロボット技術により従業員の負担を軽減し、顧客に新たなサービスを提供する未来のコンビニを実現することを目指した世界初の競技会。トライアル大会の位置付けだが2020年までの毎年開催を予定している。17年は10企業・大学が参加。(1)陳列・廃棄タスク=日常商品(おにぎり、お弁当、サンドイッチ、カップ飲料)の自動補充と消費期限切れ商品の廃棄(2)接客タスク=ロボット技術を利用した近未来の洗練された顧客サービスの提案と実演(3)トイレ清掃タスク=個室トイレの便器、床、壁の清掃―の3タスクを実施。各チームのロボットシステムが持つ提案性、有用性、実現可能性を競った。



(文=石橋弘彰)

日刊工業新聞2018年1月5日

江上 佑美子

江上 佑美子
01月06日
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個人的には、接客タスクに出場した東京大学稲葉研究室「Cチーム」のロボットが面白いと感じました。陳列作業中に来店者を認識すると会計などの対応をすべきか判断し、「少々お待ち下さい」などと呼びかけ、文句も言う。省人化に役立つだけではなく、会いたくなるロボットを作ってほしいです。

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