「つみたてNISA」始動、金融庁の思惑は奏功するか
30―40代を主なターゲット層!?
1月から積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」が始まる。個人投資家の裾野を広げようと金融庁が肝いりで導入する制度。16年末の家計が保有する金融資産における現預金の比率は米国が14%、英国が24%に対し日本は50%超。株式や投資信託などリスク資産にも配分されている米英に対し日本は現預金が過半の状態が続く。「資産が付加価値を生み出せておらず非常にもったいない。個人の生活設計の上でもマイナスだ」と金融庁幹部は話す。
こうした問題意識から金融庁は14年に少額投資非課税制度「NISA」を導入。制度開始から3年で1000万超の口座が開設されたが、積み立てによる利用はその1割以下にとどまる。
金融庁としては家計の安定的な資産形成を実現するには、長期・積み立て・分散型の投資を促進するのが有効だと考えており、NISAだけでは「少額からの積み立て投資が十分に浸透していない」と見ていた。
そこで1月からは、長期の積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」を始める。つみたてNISAは購入した投資信託の分配金や運用益が非課税になる制度。
既存NISAの年間非課税枠が120万円(最長5年)なのに対し、つみたてNISAは同40万円と少額だが、非課税期間は最長で20年間にも及ぶ。
金融庁のアンケートによれば、投資は資産形成に必要だと思うが投資を行わない理由として「まとまった資金がないから」と答える投資未経験者が多数を占める。
投資には相当の初期資金が必要になるとのイメージを持つ人が多い実態を表している。つみたてNISAの導入で金融庁は「ためてから投資ではなく投資しながらためるという発想を広げたい」(幹部)といい、30―40代を主なターゲット層と見る。
金融庁は既に対象商品として約130本を選定。運用にかかる信託報酬(運用管理費用)の平均値は告知要件より大幅に下がっており、例えばインデックス投信でみると国内型の投信は0・28%(12月18日時点)に、国内外型の投信も0・35%(同)だった。
つみたてNISAは、特に証券業界にとって長期の資産形成を促し「貯蓄から資産形成」を推進する役割が期待されている。証券業界にとって資産形成層の取り込みは長年の課題。
現状、株式投資を手がける大半が中高年齢層で、将来の投資の担い手となる若年層に投資をしてもらい、新たな顧客層として取り込めなければ、業界の持続的な発展は厳しくなる。
業界団体の日本証券業協会では、つみたてNISAを重点施策の一つと位置付け、業界をあげた普及促進を進める。鈴木茂晴会長は「成功すれば、業界の発展に向けた将来の新しいステップになる」と強調する。
個社でも野村証券や大和証券など大手証券に加え、SBI証券、楽天証券などインターネット証券もつみたてNISAに向けた取り組みを進めている。
また証券会社以外でも、つみたてNISAは大手行から地銀、信金まで多くの金融機関が取り扱う。対象となる商品は、金融庁が認めた低コストの投信やETFに限られる。
このため差別化がしにくいが、りそな銀行などでは個人型確定拠出年金(iDeCo)と組み合わせた提案するなどのアプローチをとっている。
「もうけが少ないから販売する金融機関の販売動機が高まらない」(金融関係者)との声があるのも事実だ。だが三菱UFJ国際投信の田中裕之副社長は「投資未経験者の一つの成功体験がさらに別の投資行動に広がる可能性がある」と指摘する。
「貯蓄から投資へ」が叫ばれて既に約20年。依然として、約1800兆円の家計の金融資産の半分以上は現金・預金で眠ったままだ。20年突破できなかった壁を越える起爆剤になれるのか。NISAの真価がいよいよ問われる。
こうした問題意識から金融庁は14年に少額投資非課税制度「NISA」を導入。制度開始から3年で1000万超の口座が開設されたが、積み立てによる利用はその1割以下にとどまる。
金融庁としては家計の安定的な資産形成を実現するには、長期・積み立て・分散型の投資を促進するのが有効だと考えており、NISAだけでは「少額からの積み立て投資が十分に浸透していない」と見ていた。
そこで1月からは、長期の積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」を始める。つみたてNISAは購入した投資信託の分配金や運用益が非課税になる制度。
既存NISAの年間非課税枠が120万円(最長5年)なのに対し、つみたてNISAは同40万円と少額だが、非課税期間は最長で20年間にも及ぶ。
金融庁のアンケートによれば、投資は資産形成に必要だと思うが投資を行わない理由として「まとまった資金がないから」と答える投資未経験者が多数を占める。
投資には相当の初期資金が必要になるとのイメージを持つ人が多い実態を表している。つみたてNISAの導入で金融庁は「ためてから投資ではなく投資しながらためるという発想を広げたい」(幹部)といい、30―40代を主なターゲット層と見る。
金融庁は既に対象商品として約130本を選定。運用にかかる信託報酬(運用管理費用)の平均値は告知要件より大幅に下がっており、例えばインデックス投信でみると国内型の投信は0・28%(12月18日時点)に、国内外型の投信も0・35%(同)だった。
つみたてNISAは、特に証券業界にとって長期の資産形成を促し「貯蓄から資産形成」を推進する役割が期待されている。証券業界にとって資産形成層の取り込みは長年の課題。
現状、株式投資を手がける大半が中高年齢層で、将来の投資の担い手となる若年層に投資をしてもらい、新たな顧客層として取り込めなければ、業界の持続的な発展は厳しくなる。
業界団体の日本証券業協会では、つみたてNISAを重点施策の一つと位置付け、業界をあげた普及促進を進める。鈴木茂晴会長は「成功すれば、業界の発展に向けた将来の新しいステップになる」と強調する。
個社でも野村証券や大和証券など大手証券に加え、SBI証券、楽天証券などインターネット証券もつみたてNISAに向けた取り組みを進めている。
また証券会社以外でも、つみたてNISAは大手行から地銀、信金まで多くの金融機関が取り扱う。対象となる商品は、金融庁が認めた低コストの投信やETFに限られる。
このため差別化がしにくいが、りそな銀行などでは個人型確定拠出年金(iDeCo)と組み合わせた提案するなどのアプローチをとっている。
「もうけが少ないから販売する金融機関の販売動機が高まらない」(金融関係者)との声があるのも事実だ。だが三菱UFJ国際投信の田中裕之副社長は「投資未経験者の一つの成功体験がさらに別の投資行動に広がる可能性がある」と指摘する。
「貯蓄から投資へ」が叫ばれて既に約20年。依然として、約1800兆円の家計の金融資産の半分以上は現金・預金で眠ったままだ。20年突破できなかった壁を越える起爆剤になれるのか。NISAの真価がいよいよ問われる。
日刊工業新聞2018年1月1日の記事から抜粋